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社員旅行で学んだ「仕事」

先週の土曜日から昨日まで、二泊三日で沖縄に行ってきた。社員旅行である。私自身は初めての沖縄だったので、あらゆることが新鮮だった。

殊にひめゆり平和記念資料館は、思っていた以上に衝撃的だった。これについてはまだ気持ちの整理ができていないので、いずれ綴ることにする。


そこで今回は、私に新たな示唆を与えたもう一つのエピソードを書いてみたい。


――宴会が終わり、夜のとばりがすっかり下りた頃。

「飲みに行こうか」

先輩に誘われて、街へと繰り出した。国際通りが近いと聞いて、ホテルで案内された方向に二人で歩いていく。厚い雲に覆われて少し湿っぽい空気の那覇の夜は、鈍い風をぼんやりと漂わせていた。

しかし、どこまで歩いても繁華街に行き着かない。それどころか、深い裏通りへと入っていってしまった。飛び交う声は、どの店からも「遊ぶところをお探しですか?」ばかり。ソープランド街にたどり着いてしまったことに気づいたのは、あまりに遅かった。

先輩は気を変えたらしく、笑顔で話を聞いている。先輩に任せていたら、店内に入ってしまった。

しばらくして店員に導かれ、女性と引き合わされた。小さな部屋に入る。


すると、話は思わぬ方へ転がった。

「お兄さん、一緒だった人に連れてこられたの?」
「まあ、そうです」
「乗り気じゃないんでしょ。そういう顔してる」
「……そうですか?」
「毎日のようにいろんな人の相手してれば分かるよ、そのくらい。あっ、身体洗ってあげるね。こっちに座って。……でもさあ、私、こういう仕事ってどうなのかなって思うんだよね」
「……」

「確かに『これ』で喜んでくれる人は多いけど、そういうのって違うかなって」
「……」
「よく言うじゃない、『人に喜ばれる仕事をしたい』って。もちろん、もっと立派で人を喜ばせる仕事ってたくさんあるけどさ、いずれにしたって空しいと思うんだ」
「……そうですか?」
「うん、やっぱり自分がやってて楽しい仕事をしないと。だって、自分のために仕事してるんだもん。他人の喜びイコール自分の喜び、なんて絶対にないと思う。自分が仕事自体を楽しんだ先に、人が喜んでくれたら一番ってだけでさ」


店を出て、先輩と合流した。

「どうだった?」
「よかったですよ」
「そうか、俺はハズレだったなあ」

雨が降り始めた南国の空を仰ぐ。ポケットの中で、「身体を洗って話を聞いてもらっただけだから」という理由で密かに返された1万5000円を握りしめながら。

(文字数:1000字)

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