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お店の”入りにくさ”をデザインする事で経営が上手くいく。

今日は先日訪れたお店での経験からの気づきを皆さんと共有したいと思います。

足を運んだのはとあるカレー店。
局所的にカレー好きな建築家として知られている藤田雄介さんに「おいしいですよ!」と紹介されて訪問しました。

インターネットが大好きな私は、お店の場所と評判等を事前に勿論チェックしていました。

そこに書かれていたのは「客席は5席でしかも2席は立食形式」「並ぶ場所も店の外の指定の場所にて」「3人以上の来店はお断り」「時間によっては、かなり並ぶ」等々というような中々に、こちらをビビらせるような内容。

恐らく信頼している藤田さんの紹介がなければ訪れる勇気が出なかったかもしれません。しかし、藤田さんが短期間に数回訪問しているインスタストーリーを見て、訪問を決意し行ってきました。

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訪問当日は、並びを避けるために開店数十分前に到着。

お店の入り口には、明確にお店とわかるような看板は出ていなかったと思います。そして入り口にはオレンジのビニールシートが垂れ下がっています。

ネットで調べた通り、お店から数メートル離れた位置に看板が出ていて、そこに並ぶシステムでした。そしてその看板に3人以上での入店禁止の記載。ぼくは早めに到着したつもりでしたが、それでも前には2人並んでいる人がいました。(ちなみに開店までの数十分で10人くらいの行列になっていました)

ネットで調べた通り、実際に訪問してみても、その敷居の高さを実感する入店システムが構築されているように感じました。(一見お店とわからないような外観、たくさん並ぶ、三人以上禁止というルール。)

そして、そのシステムを目の当たりにしたぼくは、勝手にめちゃ怖い店主さんのお店なのでは?怒られるのでは?という想像を働かせてしまっていました。入店に若干の緊張をしてしまっていたのです。

そして数十分後に入店。
お店は1坪(2帖)ほどの広さで、そこにカウンターが配置されていて、小さなベンチ3席、立ち席2席の計五席で、カウンター内に店主さんが一人カレーの鍋の様子を見ていました。

注文したのは2種盛りのカレー。これが、めちゃ美味しかった。これだけの入店のハードルを上げても、お客さんが行列を作る理由も理解できるカレーでした。

店主さんも、私が勝手に想像していた人物像とは異なり、非常に丁寧な方で、パクチーの量の調整も可能でしたし、お水がなくなると注いでくれました。

食べている途中、僕より前に入った方が先に食べ終わって帰ったのですが、お会計の時に、1万円しか財布の中になかったようで、申し訳なさそうにそのお札を出してお釣りを貰っている様子が目に入りました。

その時に、ぼくは「?」と思ったのでした。一般的にお店で「お札を出すときにそのようにすまなそうに出すものだったかな?」と

この瞬間に、ぼくは、このお店の入りにくさ・敷居の高さが、お客さんとお店の関係を決定する要素になっていたのだという事に気が付きました。

つまり、ぼくたちは、知らず知らずのうちに「カレーを食べにきている」というより「カレーを食べさせてもらっている」というマインドになっていたのだという事に気が付きました。つまり「お客さんは神様」というような関係ではなく、このお店にカレーを食べさせてもらっているという、"お客さんがお店をリスペクト"する関係というか。

ぼくは単にお客さんであるだけではなく、自分でビジネスをしていますのでお店側の立場も想像ができます。個人でお店を運営するという事において、お客さんとの関係をこのように構築できるという事は、めちゃくちゃメリットがあると思いました。

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端的に言えば、まず運営コストをめちゃ下げることができると言えます。運営コストというのは、具体的に言えば、その店主さんの絶対的な仕事量を減らすことで自分自身の時間を節約することができるということです。自分が働けば働くほど、自分に対する時給が発生するわけですから、働く内容が減ることで運営コストは下がると言えます。

恐らくですが、このお店のような「お客さんがお店をリスペクトする関係」が構築されている場合、無用なクレームが起こりにくいと言えます。チェーン店等で時々見かけるような意味不明のクレームも恐らくここでは起こっていないでしょう。

何故そう言えるかというと、自分自身の実感もあるからです。
例えば、ぼくがビジネスの一部として行っている「アーキテクチャーフォトジョブボード」では、多くの方が既にメディアサイト「アーキテクチャーフォト」を知ってくださっている方が出稿してくれるため、お互いを尊重できる関係性が構築できているので、今までにトラブルはほぼ起きていません。
しかし、極稀に「アーキテクチャーフォト」の存在を知らない方が連絡をくれたこともあるのですが、その場合はやはり、完全に下請けのような行為を要求されるなど要望が過度になったり、無理難題を押し付けられることはありました。
この違いを経験しているからこそ、このカレー店がお客さんとの関係性を構築していることに関して学びがあるなと思ったのです。

特に、個人で仕事をする、小さい規模の集団で仕事をするというケースでは、如何に不要な仕事を減らすことができるのかが、サービスのコアな部分に注力することにとって重要だと思うのです。

このカレー店も店主さんがおひとりで運営されているので、そのような不要なクレームを避け、カレー作りとカレーの提供に以下に自身の時間とメンタルをかけらるかが、継続的な運営の為には非常に重要だと言えると思います。

その為に、冒頭で長々と書いた、入店のハードルを敢えて上げること、敢えて細かいルールを作ることが上手く作用しているのだなと感じたのです。

入店の敷居を高めるようなデザインをすることで、どうしてもそのお店で食べたいという意識の高まったお客さんのみがふるいにかけられます。そのようなお客さんは、たまたまそこにあったからそのお店に入るという人と比べ、お店に対するリスペクトがあるのは間違いないでしょう。

そして、厳格な入店のルールがある事で、ぼくも含めお客さんはある程度の緊張感を持ってお店に入ることになります。それは、店主さんが他のお店と同じ振る舞いをしているだけでも「あれサービスが思ったより良いな」と感じる効果もあるように感じました。

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ここで、話をぼくが専門としている建築設計の分野に移しますが、設計事務所でもある程度の、問い合わせの敷居の高さをデザインする事は重要だと思います。

自分自身が今までにどのような思想を持って、どのようなデザインをしてきたのか、それを知ったうえで問い合わせをしてきてもらうようにデザインする事で、不要な説明時間をさけることができますし、マッチングミスという事も起こりにくくなると言えます。

例えば、いくら問い合わせの件数が増えたとしても、建築をデザインする事に対して価値を感じていない人ばかりが問い合わせてきても、その価値を啓蒙するところからスタートしなければなりません(もちろん啓蒙は大事なのですがそれはまた別の話として書きたいと思います)。実務をこなしつつそのような活動を並行して多大な時間を割くというのは現実的ではないと言えると思います。

そして、特に建築の場合、相互にリスペクト出来る関係が構築できていないと、全てがクレームの対象になりかねない、という事も言えます。大量生産品のように取り換えが出来ない、一品生産の建築現場では、全くの、ほんのちょっとのトラブルなしに終わるという事があり得ないのは実務者の皆さんなら想像できるでしょう(それをその場の判断で解決していく手腕も設計監理者の実力と言えると思います)。そのようなリスペクト出来る関係性も、問い合わせのプロセスや敷居の高さをデザインする事で、プロジェクトがうまく進む・円滑になるのではないかとも思うのです。

このエッセイで取り上げたカレー店の事例を応用してみるのも一つだと思います。ある程度の敷居を設定することで、よりマッチング度の高いクライアント候補からの連絡がくる、リスペクトのある関係性を構築できる、という事はあり得ると思います(ただ、その敷居の高さをどの程度にするかはかなり繊細な問題だと思います)。

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さて、今日の有料部分では、そのお店の名前と場所を紹介したいと思います。タイミングがあれば行ってみてください!


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