「才能あって羨ましい」「実家太くていいね」他人の努力、バカにしてない?

前書き

誰かに対していいなという感情を抱いたとき

「実家太くて羨ましい」「お金あっていいよね」
「何でもできていいな」「才能あってずるい」
みたいな言葉をかける人がいる

褒めているつもりなんだろうけど、それが相手の富や生まれ持った才能だと安易に決めることは、やっぱり相手に失礼だと思ってしまう

背景を知らなければ安直な思考になりやすいことは勿論仕方ないけれど、そこに『相手の苦労や努力があったかもしれない』ことを常に前提に、決めつけない姿勢を持っていたいよねという話をつらつら書きます。

(結論はこれなので以下読まなくても大丈夫!)

私の見え方と仮説

私はどうやら比較的なんでも器用に出来たり、
精神的に強く見えやすく、
金銭的に余裕があるようにも見えるらしい

自分ではそう思わないけど、大学以降、特に言われるようになった気がする

余裕があるようにみえる、それ自体はずっと目指してきたことで、中高まで精神的に不安定で泣き喚いたりやや悪目立ちをすることもあった分、この点の成長は素直に嬉しく思います

タイトルにあげたもやっと発言を大学や会社に入って以降よく聞くようになったのは、
金銭的苦労・家庭環境・身体的理由などで理不尽に困った経験が比較的少なく、その分穏やかでまっすぐに育った人達が多い環境だったからではないか
というのが私の仮説。


簡単に言えば、公立の小中高に通っていた時に比べ、環境に恵まれて愛されて育ち、卑屈になる経験をこれまであまりしていないと自他ともに認める友人が、大学以降多くできました

ただ、そんな仮説は置いといて、
たとえ自分に苦労した経験がそこまで無くても、相手に過去何があったか知らなくても、

聞き手のマインド次第で
「相手を不快にさせない」「勝手に知った気にならずに相手を受け止めること」はできると
福祉学部の心優しい友人達が幾度と教えてくれたので。

自分も誰かにとってずっと心に刺さってしまうような発言をこれまで無意識にしたことがあるんだろうという自戒と、
今後もあるかもしれないという自覚を持って、

未来の自分も、
これを読んでくれているみんなも、
これから先、相手にやさしい聞き方・話し方を意識して選んでいけることを願って

これまでかけられて嫌だった誤解されてる発言と自分の過去を、少し話させて欲しいと思います。
そして最後に、私とみんなの「特権性」についても触れたいな。


読んで、意見・反論、私の気づいていない特権性、過去の無神経な発言など、あったら、ぜひとも、ぜひとも教えてください……!

これまでの、もやっとした発言

以下、大学以降よく言われるようになった言葉を紹介します。
私がずっとひっかかり続けてる言葉達です。

覚えてる限りは言われた言い回しそのまんまで、「相手は褒めている文脈だった」(悪意を感じるものは除いた)発言のみ書きます

【家族・お金系】
・実家太くていいね(→ダントツ1番多い)
・私大に行かせてくれる家でよかったね、塾代や学費だって高いのに
・世界一周できる余裕あるのすごいね笑 海外志向なのとか諸々、お金持ちって感じ
・ほんわかしてて、家族仲良くて愛されて苦労無く過ごしてきたお嬢様って感じ〜

【センス・能力・見た目系】
・何でもできて羨ましい/ずるい
・肌も髪も何もしなくてそれでいいな〜
・お菓子作りとか器用でいいな
・男ウケって感じの低身長に高い声で胸が大きくて顔がカワイイ系で羨ましい笑


あまりに鮮明に覚えている自分に引きつつ、
以下、上記の発言者にはきっと届かないであろう私の反論。

・(やや重いです!)

【家族・お金系】
大学の学費、4年分全て奨学金で全額自分一人で返しています。
私の家は中学の時離婚してからシングルマザーで家計に余裕は無くて、高二の冬、塾には行かせられないと母親に申し訳なさそうに言われました。
大学受験は最後まで独学で勉強して、どうしてもかかる入学金や受験費、参考書代は兄弟が働いて捻出してくれたお金です
小中高は公立に通い、大学から私立にしたのは行きたい学部を単独で置いてる大学がそもそも限られていて、受けた大学が最高峰だったから。
あと、私立云々は特に地方の人に言われることが多いのだけれど、関東の国公立はレベルが極端で、いわゆる地方国立の丁度いい偏差値帯の大学が存在しないことを是非調べて知って欲しい

大学時代、世界一周に行く4年の秋までは、年250万円くらいアルバイトをしていました。
東大生が中心の集団授業の塾講師で、お金を貯めるべく評価給があがるよう沢山勉強しました
大学時代に沢山受けた資格試験代や参考書も、そこから出したお金で勿論自費です(というかこれは当たり前だと思っているんだけど、なぜ家のお金だと思われることがあるんだろう?)

世界一周は、私にとって初めての海外です。それまで、近場含め行ったことありません。

【センス・能力系】
何故かよく器用だとか要領がいいと言われるようになったけど、家族や親友が笑い転げるくらい違います。

器用だと言われるのはきっとお菓子作りのイメージが先行してると思うんだけど、もう17年くらいはお菓子・パン作りをずっと練習してるので、人よりは上手くなってなかったら困ります
パンは6年習ってもいたし、大学時代は好きなパティスリーの社長に自分から連絡して一緒に働かせてもらったり、自分で作ったお菓子を販売してみてフィードバックをもらったり、独学なりにずっと向き合ってきたことなので、「才能」みたいにくくられるのは少し違和感があります

たまに言われる勉強はまるで出来ないなりに必死にしただけで、それでも大学沢山落ちたし、簿記2級に5回くらい落ちてるし、世界一周中もTOEICや簿記の参考書持ち歩いて2冊まるまる解きました(朝早起きしてカフェで勉強するとか)


見た目に関しては、それなりにお金かかってるけどなあと思いつつ、基本的には「ありがとね〜」って流せるけど、

「男ウケ」とか「おじさんに好かれそう」とか言われるのは、男性恐怖症で中学時代苦労して、カウンセリングにも通ってなんとかここまで治した歴史的に辛い時が多いです
人には人の地獄があるし、知らなくて当然何だけど…だからと言って許せる発言でも無いので…


このnoteを書こうと思った経緯 (私の家族の話)


こんなnoteを書こうと思ったのは、言われすぎてもやもやしたのも勿論そうだし、私の大切な家族について許せない発言をされることが多かったからです

少し苦手な人もいそうなブラックな話になるけど、男性恐怖症のきっかけにもなった元父親から逃げて今の仲良し家族に至るまでの話をここに少しだけ書かせてください。


中学生の時、計画して父親以外の家族5人で夜逃げをしました。
そこから5人で新居に住み、1年の離婚調停大揉め期間を経て、離婚し、今に至ります。

元父親から殺害予告も届くし、母は疲弊していくし、自分は父親からの性加害のトラウマや、引っ越して電車通学になってから痴漢やストーカーで男性恐怖症悪化したり、共通の知り合い経由で住所がバレもう一度引っ越したり、それなりに大変なことが多くありました

ただ、自分は当時中学生で、4人兄弟の上3人(姉・兄・兄)は皆働ける年齢。
母と兄弟に守られ、皆が働いて家にお金を入れてくれながら、変わらず地元の同じ中学に行かせてくれて、父親の苗字付きだった体育のジャージ類は全て新しい名前で買い直してくれて、基本的に困らず学生生活を過ごせました

お姉ちゃん・お兄ちゃん達はこのとき団結して家計を守ってきた絆みたいなものを今でも感じるらしく、羨ましいなと思うと同時に、ずっとかっこいいなと思って見ています
この時の恩があるから、私はずっと家族みんなが大好きだし、これからは自分がずっと恩返しをしていこうと決めました

本当に、本当にありがたい…。

手続きも調停も家計も夜逃げの準備も大変だったけど変えようと皆で決めたからこそ、皆でつらい日々を乗り越えてきたからこそ、うちの家族はかなり仲が良いです。

そんな家族が大好きだし、大変なところも沢山見てきたからこそ、あの耐えてきた日々を、これまでの努力を全て無駄にするみたいに、「実家が太くていいね」とか、「家族ガチャ成功でいいね」とか、そんな薄っぺらい言葉でこれまでの私や家族の人生を括るな馬鹿!!……と思い、耐えられず、こんなnoteを書きました。


同じように、読んでくれているみんなにも周りは知らない乗り越えてきたものがあって、知らずに勝手なこと言われたり、それに傷ついたりすることがきっとあると思います
もし読んでくれている人の中で、私が過去にそういった発言をしていたら、本当にごめんなさい。

そして、人には人の地獄があることを私達は忘れてはいけないというのと同時に、

強く見えたり、何事もないようにいま見られてるのは、乗り越えてきた努力や、弱さを見せない強さがあったからで、それ自体はとてもいい事なんだと思います。
(弱く、可哀想に思われる方がむしろ失礼かなとも思えるので)

私の場合、先述した困ってきたことは、私にとって苦労や努力ができた成長機会でもあり、そこから得たものが沢山あるから、自分の中では比較的良い思い出でもあります

余談)家の話をたまにすると驚かれたり可哀想に見られることがあるけれど、私にとって人生最高の瞬間は今でも夜逃げをして新居に帰ってきたあの日で、ただの空気が驚くほど澄んでいて美味しくて、自然と涙が出たことをずっと幸せな記憶として覚えています。

私の知らない地獄がある、それは一見幸せそうに見える場合にもきっとそうで。

表参道生まれ、小中高と私立エスカレーターのお金持ちの知人は、努力する機会がこれまでなく、自立できなくて恥ずかしかった。持ってるお金でやりくりを考えたりする経験がかっこよく見えて貧乏がうらやましかった
と話していました。

どんな立場にも苦労があって、良さがある
ということなのかもしれません。

特権性と、特権者の当事者意識の薄さについて

さいごにおまけとして、「特権性」について。

私は福祉学、中でも貧困領域が1番の専攻分野だったので、この話をさせてください。

人に優しい自分であるために、誰かの努力や苦労を踏みにじる発言をしないために、
意識すべきこととして「特権性」があると思っています。

「特権性」とは、簡単に言えば集団の中でマジョリティである、もしくは優遇される立場にある各個人が自動的に持った属性のようなものです。

特権性がある分野に関して、誰しも優先・優遇されている感覚が弱まりやすく、そうじゃない集団に対し無責任な発言をしやすくなると考えているので、このような話を結びに入れておきます。


例えば、私の場合の「特権性」は
・東京生まれ東京育ち(家系が東京)
・日本国籍
・異性愛者で、恋愛感情が特に違和感なくある
・努力を認め褒めてくれる家庭環境で育った
(元父親は存在しないものとする)
・五体満足に生まれた
(なんなら視力裸眼2.0、親知らず生まれつき1つもなし、兄弟も皆そう)
・小中高大と進学し就職できる環境がこれまで揃っていた

とかになると思います。
ここら辺に関しては自分の努力じゃないし、ずるいと思う人がいるなら、それは仕方ないと思う。

実際私は福祉学を専攻してた学部生時代、支援者として福祉の道に行きたいと考えたこともあったけれど、自分の特権性を理由に被支援者に仲間だと思って貰えないと考えて目指さなかったのも理由の一つしてあります。

みんなもぜひ、特権性について考えて欲しいなと思います。
努力した過去を誇るように、自分にあった特権も考えて理解していた方が、視野がグッと広がると思うのです。

例えば、男性。
性被害リスクが極端に少なくて当事者意識がない人が多い(勿論被害に遭う方もいるけど)って本当に本当にすごくて羨ましいです。
そしてその分、性被害や痴漢、セクハラといった分野に対し鈍い人、無神経な発言をしてしまう人も多いなとも正直思います。
あとは、生理のような、理不尽に定期的に体調不良になるタイミングがないことも、すごくすごく羨ましいです。

※(追記)この意見に対し、「男の性被害の方が表に出てこないだけじゃないか」という意見をもらいました。母数が多いからこそ女性は声を挙げられている面もあるし、私もそう思う。男女共に無くなればいいと勿論思っています。
ただ、ここであえてこう書いたのは、「痴漢ってそんなされた人多いものなの?」と言われることがこれまでよくあったからです。都市部で電車通学をしていた人ならかなりよく聞く話だけど、同じように電車通学をしていた男友達は知らなくて。実際に被害にあったとき、周りの男性は気づいていなくて、助けてくれるのはいつも女性だったなと思ったからです。

他に思い浮かぶ特権性としては、
・奨学金無しでこれまで通えた
・お金に困ったことがない
・見た目で貶されたことがなく、生まれつき美形の部類に入る
・太りにくい/スタイルが褒められやすく、また変動しにくい
・体調を壊しにくい

とかかな?

これまであげてきたような特権も、残された努力余地(色んなタイプの苦労)も、皆それぞれ色々あって、個人差が大きいし隣の芝は青く見えるけど、それでも腐らず自分と向き合って、人に優しくありたいなと思います。

隣の芝が青く見えるのは地道な手入れのおかげかもしれない、
そう思える人であれるように、誓いを込めて。



長々と読んでくださりありがとうございました…!

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