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履歴書

特技の欄を睨みつけて頭を抱える。

履歴書に記入できる特技など昔から持ち合わせがない。

運動もそこそこ、勉強は国語だけできた。数学は先生も驚くほど壊滅的。


「特技、ねぇ…」

男を悦ばせる手段やヤれそうな男を見抜くスキルランクはトップクラスだと思うが、当然履歴書に書けるわけもない。


履歴書の記入を一旦諦めて婚活アプリに目を落とす。取り繕った偽物の私に興味がある男からのメッセージだらけだが、対応がまともなら返すように心掛けている。

予定が合ったそれなりに顔のいい人に目星をつけてご飯に行くことにした。

永久就職もいいだろう。


「休みの日は何してるんですか?」

共通点をなんとか見出そうと頑張った。

「ずっとYahoo!ニュースみてるかな。」


まごう事無きハズレだ。私にそんな趣味はない。

会話はトレーニングボールほども弾むことなく解散…したかった。

「私こっちなので…」

無言で着いてくる。家まで着いてきた。どうして。


車で来たようなのでお酒が抜けるまではいいかと思って入れてあげたが、顔はいい方なのに何故こうも気持ち悪いアプローチをするのだろうか。

間違いない、こいつは下手くそだ。

こたつの中でちょっかいをかけられ、私としては気分ではないが早めにお帰り願いたいので相手をした。

類を見ない新種のマグロとなることにした。

天皇陛下もびっくりのマグロ。


普段なら気持ちのいいコトも面倒くさいとここまでどうでもよく感じるのかと染み染み感じた。

「よかったよ」

「また来てもいいかな」

やめていただきたい。


「機会があれば」

口から出るのは都合のいい言葉だが、心はこもっていない。


裏アカに『今日は30点』と書いて投稿する。

30点分の加点は飲み屋の支払いと顔に免じて。

30点のいなくなった後の部屋には書きかけの履歴書とボールペンと私が転がっている。


婚活アプリを削除して履歴書に向き直る。

「永久就職になど頼るな、ということね」


当たり障りなく記入して封筒に入れる。

特技の欄は特になし。


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