自己肯定感
突然、「私など存在しなくてもいいのでは」などと思い立ち帰省することにした。
山手線の様にぐるぐると同じ毎日を繰り返し、変わらぬ賃金と出社時間、残業、その後に自分の世話。
飽きたな、と思った。つまらないな、とも。
飛行機を降り立ち、住んでいる場所なんかより涼しくて清々しい地元は流行りの感染症のおかげで閑散としていた。
行き慣れたバーで頼み慣れたお酒に口をつける。
「あぁ、帰ってきたな…」
今日の相手は長年連れ添っていたセフレ。
地元を出てから数年ぶりに夜を共にする緊張感は、いつまでも私に高揚感を与えてくれる。
「おいで」
嗚呼、この一言のために耐えてきた。
上司からの嫌がらせも、お局からの嫌味も、ストレスで買った使わない鞄の明細も、全部忘れられる
「久しぶりに楽しいセックスができた」
「やっぱりお前との相性が一番いい」
そうでしょう?と得意げに笑う。
お前が一番という言葉は私にとって活力剤なのだ。
そうでしょうそうでしょう、だって私なのだから。
実際はそんな自信何処にも無いけれど、今この瞬間だけは私が一番だから。
いろんな液に塗れてびしょびしょのベッドを後にして、私はまた街に出て違うベッドに移る。
今日はどんな言葉で生きてていい証明をくれる?
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