LINE STEP終了から見る旅行系新規サービス分析
こんにちは、Renです。
現在私は旅行系スタートアップの代表をしています。先日、LINEが2019年にリリースした旅マエ旅行サービスLINE STEPの終了の通知が飛び込んで来て、やっぱり旅行業界への参入はかなり難しいなと再確認しています。今回私が長い間調べ続けた旅行業界の動向とそこに続々と新規参入してはすぐ撤退して行く旅行系スタートアップ、または新規事業について私なりの考えをまとめてみましたので、ご興味のある方は是非読んでみて下さい。
*下記の考察は筆者独自の観点からの分析なため、人によっては違う考察になる可能性もあることをご了承ください。
旅行業界について
まず、現在の旅行業界についてですが、全然前に進んでる感じがしない。という一言にまとまるでしょうか。店舗型総合旅行代理店が海外OTAの台頭によって業績が伸び悩み始めてから随分と時間が経ちましたが、現在Airbnbを最後に旅行業界に大きな革命的出来事は起きていません。超大手総合旅行代理店の新規事業企画室の室長様も旅行者のニーズの変化に業界・企業が対応できておらず、新しいサービスを考えるがほとんど失敗してしまうとおっしゃっていました。
旅行業界はディスラプトする余地があるが、なかなかできない業界です。
スタートアップ・新規事業
インバウンド、アウトバウンド、国内と切り口によって話は変わりますが、そんな旅行業界で2018年という年はスタートアップや新規事業で「旅行」がトレンドの一つになりました。業界に詳しい人ならご存知でしょう。上半期にどんどんサービスが誕生し、そのほとんどが下半期で撤退、たくさんの企業が挑戦しては砕け散って行きました(私はこれを「第1波」と呼んでいます)。
2019年になってもどんどん新しい旅行系サービスが誕生していますが、特に爆発的な影響を及ぼすような雰囲気のあるサービスは今のところ見当たりませんし、このままだと第1波と同じ結末になりそうな予感がしています。
私の予想はどうでもよくて、早速ここ最近の新規サービスがうまくいっていない点をまとめていきたいと思います。
インバウンド事業
ではまずインバウンド市場から分析していきます。
今回この市場でお話しするのは現地の観光ガイドと訪日外国人観光客をマッチングするサービスについてです。2018年に法改正とともにリリースされたHISのTraveeというサービスが代表格でしょうか。既にサービスは終了してしまっていますが…
HISはガイドという分野に着目してサービスを構築していました。HISが運営しているということで仕事が回ってくるのではと考えた観光ガイドさんは多くいたのではないでしょうか。超大手だし。私の友人の観光ガイドの方はそのような感じでした。
ですが何かしらの理由でサービス終了。彼らにとっては残念な知らせだったと思います。
海外旅行者と現地の人をマッチングさせるサービスは他にAirbnb experienceというサービスもあります。(Airbnbで働いている方のお話によると少しはうまくいっているみたいですが、それより本業の民泊事業が日本ではなかなかうまくいかないと嘆いていました笑)
この訪日外国人とのマッチングサービスで一番大事だと私が思うのは旅マエへのマーケティング戦略です。最近のスタートアップのサービスはサービスの質に力を入れていてマーケティング戦略にはあまり力を入れていない印象です。
いくらすごいサービスを作っても利用者に届かなければ意味がありません。ですがこの旅マエへのアプローチ、かなり難しいです。
*旅ナカ(外国人旅行者が旅行中の間)でお客さんを見つけてサービスを提供するという方法もありますが、その場合はお客さんが友達やSNSで共有しやすいような自然な流れを構築できるかが勝負になってくるかと思います。
なぜなら、少し考えればわかることなのですが、そもそも外国発の旅行情報を自国で見つけることができますでしょうか?その国の旅行会社などもいるインターネット世界でGoogleの検索エンジンで上位に表示されたり、外国メディアがあなたのサービスリリースを取り上げたりすることがあるでしょうか?
なかなか難しいでしょう。なので新規サービスのことをそもそも外国人は知ることができないんです。以前私が日本に旅行に来ることが決まっている外国人の友達や日本にいる外国人旅行者にいくつかのマッチングサービスを提案してみましたが、ほとんど知らないという状態でした。しかも最悪なことに、「別に使わなくても観光できるし」とまで言われてしまいました。
サービスの質の話はここではしませんが、いまのエピソードからも外国人旅行者へサービスを届けることが難しいとわかります。さらに外国人旅行者の旅マエでの行動フローからもみてみると、彼らは現地の観光サイトなどはほとんど見ず、個人のブログやSNSを情報収拾媒体として利用しているため、スタートアップが初期にできるサービス告知はSNSくらいでしょう。
ですがSNSは効力を発揮するまでのアカウント構築作業が必要で、「そんな時間はない」などといってほとんどの新規事業者は手をつけていません。またインフルエンサーに広告を打つという選択をする企業もいると思いますが、インフルエンサーをフォローしている人がインフルエンサー個人に抱く世界観とサービスの世界観をうまくマッチさせるの努力が必要になってくるでしょう。
このSNSマーケティングを攻略することが新規事業者は大事なのではないかと思います。
しかし、SNSマーケティングを成功させたからといって持続的な収益をあげることができるかは別の話です。
そう、市場規模が重要です。マッチングサービスについていろいろな考察をされている方々がいて、それぞれで市場規模が違うのですが、私が調べた規模でいうと、外国人旅行者と観光ガイドをマッチングするHISのようなサービスの市場規模はとても小さく、Max数十億程度です。これは観光庁のデータからの結果と、国土交通省の調査結果、ガイドの平均相場と活動人数の3方向から考えてもほぼ一致する数字です。数千億と書いている記事もありましたが、どういう計算なのか知りたいです。それが本当なら現在のサービスをピボットさせるかもしれないですね笑笑
SNSマーケティングの難問をクリアした先に来るのが数十億というマーケット。スモールビジネスでやって行くのであれば良いですが、少しでもサービスを大きくしたいという考えをお持ちである事業者の方は良く考えた方がいいかもしれません。
ですがマーケット規模が小さいからといって失敗するとは限りません。現在のBMではほぼスケールは難しいという話です。そこに少し変化を加えることができれば超巨大のマーケットを取り込めるBMへと変化するでしょう。
ちなみに、ガイドの料金を安くして外国人にアプローチしようと考える方に時々会いますが、それは観光庁の政策に反する行為なのでやめた方が良いです。
現地調査ではガイドはそもそも高いから使わない、料金が安くなったら使うかもしれないが、拙い外国語能力なら別に使わないというのがわかりました。かといってそもそも収入の低いガイドにさらに安くガイドしてくれといっても反応が良くないのは分かり切ってますよね?
国内旅行事業
では次に本題のLINE STEPが参入し、早期撤退した国内市場について考えていきます。
*ここから話す内容に登場するユーザーは高齢層の旅行者ではなく40代以下の旅行者になります)
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