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7. ステージ5(42.2km)後編/サハラマラソン2019

(前編からの続き)

CP2を出て、しばらくするとラクダの大群が1列に並んで、私たちの目の前をゆっくりと歩いている光景に出くわした。ラクダの大群は今までも見たことはあるが、こんなに至近距離で見るのは初めてだ。

とっさに、ザックのポケットからiPhoneを取り出し、しばしラクダがゆっくりと歩いている様子を撮影した。

広大なサハラ砂漠を何故にわざわざ一列になって歩いているのだろうか。

ここからは当面5kmほど退屈な一直線。
がれた石ころが苦痛で、車が通った後の轍を歩くのだが、ここも地味に痛いんですよ、石が埋まっているだけだから。

「レナサーン!」
と後ろから女性の声が聞こえる。誰だ?と思って振り返ると、去年の秋にヨルダンのレースで一緒だったイギリス人選手、ジョセフィーヌだった。
えーっ、彼女は速いランナーだとは知っていたけど、上位150位に入るほどとは!実は彼女とはテクニカルチェックの日に、カフェテリアで涙の再会を果たしていて、何と自分の後ろのテントにいるという(笑)

「オゲンキデスカー?」って、颯爽と抜き去って行った。一昔前のCMの井上陽水かよ!と思わず、心の中で突っ込まずにはいられない。

石ゴロの一直線の後は、山越え3連弾ってところで私の記憶が蘇った。
これ、第31回大会(2016年)のオーバーナイトステージのコースじゃね?
あー!なんで最終日にこのコースなのよ!とパトリックへの恨み節が止まらない。ということは、CP3の場所も引っ掛け問題のようなところにあるんだよね、だんだんと思い出してきたぞ。

本当に最後のチェックポイント、CP3を抜けると、そうそうこのまま一直線で、確か3年前はその後の山に差し掛かった時に日が暮れたんだよなあと完全に記憶が蘇った。

ということで、やっぱり最後の山登りからの尾根縦走があった。
山登りに差し掛かる手前で韓国人選手のセウンの姿を捉えた。最終日だというのに、彼のザックは相変わらずパンパンだ。第3ステージに会った時に何をそんなに入れているのかと聞いたら、「食料だよ。たくさん食べないと身体もたないでしょ。」と言っていたけど、さすがに減っているはずだが。

この疑問をセウンにぶつけてみたところ、テントメイトの荷物を持っているという。そのテントメイトは上位の成績を狙っているから、荷物を軽くしたかったので協力したと。あー、オーバーナイトでイムを迎えにきた彼か!つか、そりゃズルだよな。チームじゃないんだから。

私たちの前にはイムが疲れた様子で歩いてた。
「レナはこれに7回も出てるなんて、リスペクト、リスペクトだわ。」
「私はもう2度とやらない。」
とブツブツとハングル語と英語混じりで言う。
一方、セウンは「次こそは彼女と一緒に出たいな。」と言っていた。
そんな2人はフィニッシュも近いということでペースを上げてそれぞれ先に行ってしまった。

尾根縦走がもうすぐ終わりそうというところ、最後の砂場の下りというところで、あれ?誰かモロッコ人選手みたいな人がいる、と思ったら、テントメイトのOさんだった。

時間がないから走ると言っていたOさんだがフィニッシュまで後5kmもないというところだったので、十分に間に合うと思ってペースを落としたのだろうか、と思ったら、眼前にはこのようなすごい景色が広がっていた。

その美しい景色をOさんは1人でゆっくりと堪能していたのだ。
私は3年前にもここを通ったが、その時は日が暮れて真っ暗だった。こんなに美しい場所だったとは…(*1)

サハラマラソンの最後の最後の瞬間を心に刻み付けるように写真を撮ったりしているOさんをこれ以上、邪魔してはいけないかなと思い、そのまま先にフィニッシュラインに向かう。

ここから残り4km弱となり、そろそろ車間距離を気にし始める私。
はい、フィニッシュした時にパトリックを独り占めしたいので、前後のランナーとの距離を取り始めるんです。特に、後ろからやってくるランナーとは十分な距離をとっておきたい。

後方ランナーとは十分な車間距離を取り、フィニッシュゲートへ。
「レナー!!!!!!」
ナタリーが私の名前を叫び、駆け寄ってきた。ひとしきり、2人で抱き合って喜んだ後、そのままパトリックの胸に飛び込むという、とても幸せな瞬間を迎えた。

あ、そういえば、フィニッシュの2-3km前で体裁を整えるため(?)にわらじを履くのを忘れていたw



(*1)実はそれ以前にもここを通っているはずなのだが、こんなに美しかったかなあとあまり覚えていない。

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●第5ステージ(マラソンステージ)
[開催]4月12日(金)
[距離]42.2km
[スタート]
1ST GROUP/7:08(日本時間 16:08)
2ND GROUP/10:01(日本時間 19:01)
※2ND GROUPは総合上位200名
●制限時間
[1ST GROUP]
CP1/4時間00分
CP2/7時間00分
CP3/9時間30分
FINISH/12時間00分
[2ND GROUP]
CP1/1時間30分
CP2/4時間45分
CP3/8時間15分
FINISH/12時間00分
[到達人数]
Start/756名+1匹(JP 26名)
CP1(12.4km)/756名+1匹(JP 26名)
CP2(23.3km)/754名+1匹(JP 26名)
CP3(32.tkm)/752名+1匹(JP 25名)
FINISH(42.2km)/752名+1匹(JP 25名)
当ステージリタイア/4名(JP 1名)
リタイア合計/40名(JP 1名)
完走率/94.9%

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