育休ってなんなんだろうね

2カ月に渡る日本滞在を終えてNYに帰還。完全に昼夜ひっくり返ってしまった息子が母が勝手に寝ないよう目ん玉をかっぴらいて暗闇の中から見つめてくる午前3時、睡眠は諦めたので熱い珈琲淹れて(なんてオシャレな漢字使ってみたけどインスタントですけどね)、静かにnoteをしたためる時間にすることにした。ちなみに息子は私の足元のバウンサーで小さく唸り続けている。娘の方は今のところ三度ほど強烈な夜泣きをかましてきたが、割とその後寝付くのも早い。

さて、私の有難い育休も残すところあと2週間を切った。最近私はすこぶる機嫌が悪い。自分でもかなりキてるなーと思う。この感覚は、去年の年初のそれに似ていて、さらに爆発的に増大させた感じ。職場復帰が目前に迫るにも関わらず、体制が整わない、やることが減らない、私が育児その他諸々のコーディネートに体力、気力、時間を使いすぎている、そういう状態に、強烈な焦りを感じるのである。そしてきっと、その焦り、不安、苛立ち、そういったものは育休最終日にピークに達し、職場復帰した瞬間に「あ、あれ、意外といける」と思うのだと思う。少なくとも去年はそうだった。これが所謂、primary caregiver の重圧からの解放だ。

仕事に戻った暁には、私は自分をprimary caregiverとは認識しないと決めていて、仕事があるとそこに罪悪感がない。去年のnoteで書いたが、垂涎の「だって仕事だもん、仕方ないじゃん。」印籠を奪還するのだ。

「職場復帰した私は昭和のポンコツ旦那だと思ってください」

これは私が夫に口酸っぱく言い続けていることで、確かに一部誇張はあるものの7割くらい本気だが、どうやら全く本気で受け取ってもらえていない。「いつも頼りになるなァ」と恵比須顔の夫は、きっと強烈な洗礼を受けるのだ。受けさせるのだ!

育休については、「休暇じゃない!仕事よりしんどい。」という意見もあれば、一部の頭おかしいくらい働いていた女子たちと話すと「繁忙期よりはよっぽど楽」なんて意見もあったりする。個人的には、どっちの意見にも首がちぎれるほど頷きたい。(笑)激務と育児って、体力を要する点、睡眠不足な点、理不尽に耐えなければいけない点、諸々共通点はあるのだけど、そのストレスの性質は不思議なくらい異質だ。6カ月という十分すぎる期間の育休を二度もいただいて、「ああ、最高」と思う瞬間と「もう死ぬ、早く戻らせて」と思う瞬間が最後まで混在し続けた。この経験自体が貴重で幸せなことなのだけど、これが長引くと、「通常の生活」とは全く異なる飴を与えられ、全く異なる鞭で打たれる生活が常態化していく。

片方の親が働いていて、もう片方が育休中だと、ほとんどの場合育休中の親がprimary caregiverを拝命する。出産と母乳というプロセスを経るのは女性のみだから、どうしたって長い育休をとるのは女性に偏り、primary caregiverは女性が多くなる。産前のその人の仕事や性格、向き不向き、そんなものは一瞬で度外視されてしまう、それくらい、出産のインパクトって大きい。
そうやってめでたくprimary caregiverとなった元「バリキャリ」女子は、育休中、育児に関わる諸々のボールを全て最初に、そして最終的に拾う最強リベロに転職することになる。

そしてこれが想像以上にしんどい。
その後、拾った仕事のきっかり半分を夫に投げたとしても、だ。タスクを担う人は簡単に変えられても、ボールを拾う人は、なかなか変わらない。これが、育休にどっぷり浸かった人間を苦しめ続ける。



羽田空港ラウンジで、息子のオムツを変えに私が席をたったあと娘が泣き止まなくて、その泣き声はトイレにいる私にまで聞こえてくるほどで。戻ったら娘もオムツぱんぱんで、今度は娘連れてトイレ行って、そしたら今度は息子が泣いちゃって。夫は急ぎの仕事でちゃんとあやせてなかったみたいで。

戻ってから息子を抱いて娘の手を引いて、ラウンジ内を歩いてやっと2人がニコニコ笑顔になったとき、30代くらいの男性に声をかけられた。

「お節介かもですが、僕も三児の父なので...海外に行くと子供泣かせてると警察来ちゃうんですよ。気をつけてくださいね^_^」



ああ、この人はprimary caregiverになったことがない。

三児の父、おめでとう。でもあなたは圧倒的に、secondaryだ。


そして、海外のことなんて知らなそうな、頑張ってる「お母さん」に、海外を良く知る成功者のイクメンパパからのアドバイス、ありがとう。



そういう偏見や、高慢や、無知、そういった無下にぶつけられるもの全てを抱き抱えて、私は前線に復帰しよう。そう思った。


我が家は今日も笑顔だ。それで十分。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?