ホルモンに勝てないおとなたち

我が家にBaby No.2がやってきて1カ月経った。
去年書いたnoteを何度も読み返し、出産~産後のスマートな乗り切り方を繰り返しシミュレーションして臨んだ第二子出産。3プッシュでつるんと産まれてきた我が家の長男は自分の立ち位置を良く理解していたと見えて、長女を中心に回る我が家の端っこにひっそりと生息し、時折控えめに空腹のリマインダーをくれる以外は口を真一文字に結んで宙を睨んでいる(か、寝ている)。
親の方もやはり経験の有無というのは馬鹿にならないもので、今回は右往左往することなく、ミルクはきっちり飲ませ、溢乳や唸りは淡々とやり過ごし、哺乳瓶の煮沸消毒回数は半減、飲み残しミルクの再利用回数は倍増。沐浴は一回目から頭からぬるま湯をぶっかけて、おチビはもう母の暴挙にすっかり慣れた。
とまあ非常にスムーズに事が進んで、これは余裕かもしれない・・と思った私は甘かった。一度目だろうが二度目だろうが、ホルモンお化けはやって来る。手を変え品を変え、カタチを変えてやって来る・・・。


手のかからないおチビと、経験という武器を手にしたママ、それに加えて自己主張の塊みたいな1歳児と、経験という油断(!)を手にしたパパ、そして孫を目の中に入れてもいたくないばあばと、また子供増えたよ勘弁してくれと言わんばかりのぺぱおが一堂に会したわけだが、去年は慣れない育児に焦ってミスしたり、自己肯定感が崩壊ししくしく泣いたりでしょぼくれていたわたくし、今年は強かった。なまじ経験が身についちゃったもんだから、しょぼくれるのではなく凶暴化。おチビの面倒を淡々と見る私に「今年は大丈夫そうだ~」と余裕をかましている夫にイライラ、長女の泣き声には黒板を引っかく音並みの不快感を刺激され、環境の変化からか突如癇癪を起こし始めた長女の言いなりになるばあばにも苦言、そして外の物音に無駄吠えするぺぱおにも何度「うるさい!」と叫んだことか。

去年は内向きだったホルモンお化けが今年は見事に外に向かって、家庭内のオペレーションを思い通りに回したいのに一人では回せない、かと言って思い通りには動いてくれないプレーヤーたちと、たまにピキッとくる骨盤痛やガチガチに張る胸の痛み、そういうありとあらゆるものに気が立って気が立ってもう!

とは言え私も大人、子供や犬にむやみに当たり散らしはしない。少し言葉も出始めた長女はなんてったって可愛い。ぐずったって可愛い。泣き声は耳障りだけど、その苛立ちは泣いている長女ではなく、周りの大人に向かう。そしてもちろん、はるばるNYまでやってきて毎日美味しいご飯を作りお世話をしてくれるばあばには、産後のヒグマも全力で牙も爪も隠す。つまり、必然的に夫がサンドバッグになる状態ができあがったのである。

1歳児の強烈な泣き声もスルーできる我が夫、新生児の弱々しいふぎゃふぎゃなど屁でもない。夜中1時の回、早朝4時の回と、眠気と戦いながら授乳する私のバックグラウンドでは、天然ホワイトノイズと言うべきか、夫の規則的なイビキが流れている。たまに「フガッ」と言って止まったかと思うとベッドの端で授乳する私に寝返りを打ってタックルしてくる。そしてふと眠りが浅くなるのか、「僕がやるよ!任せて!」、、、と、寝言を言って、大概また寝入る。

比較的朝に強い夫は、早朝の回は寝言のあとえいやと起き上がって授乳を代わってくれることも多い。そんなときは私も有難く横になってうつらうつらするのだけど、「ぐへっ」「けぽっ」「バンバンバンバンバン!」という音にギョッとして目を開けると、ミルクを一気に突っ込まれたおチビが左肩に担ぎ上げられ、洗濯物のように背中を叩かれている。そして1分と待たずして、新生児用ベッドにポイっと放り出され、「いっちょあがり~」と夫がベッドにダイブしてくるのである。

おチビは一瞬キョトンと静かになったあと、ふげぇぇぇぇぇ~と悲鳴。そらそうだ。まだゲップ出てないもんな。そして隣からはごおおおおという重低音。ここから、私の早朝の回が始まる。

おチビは最近軽く便秘気味で、朝方苦しそうに唸っていたりする。眠い目をこすりながら「の」の字体操やら肛門刺激やらしていると、「ボフッ」と。おチビの小さなお尻からではなく、背後から。なんであんたやねん。新生児が泣こうが1歳児が走り回ろうが、自分のペースで生きられる夫が羨ましい、羨ましくて恨めしい。普段なら笑えることも、腹立って悔しくて苛立って噛みついてしまう。オナラごときに。そう、オナラごときに腹が立つのだ!
一方いくら私が噛みつこうが夫は泰然自若。ごめんごめんと言いながら7割くらいは右から左で、「お、苛立ってるねえ~」と言わんばかりの余裕の笑みにまた神経が逆なでされたりするのである。

近年、産前産後のママの大変さは声高に語られるようになってきたのでだいぶ認知度も上がってきた一方、産後はパパも仕事に家事に育児に力仕事にママのサンドバッグにと、現代の「男はつらいよ」状態に陥るのだ。しかしそんなことぼやいたところで「何寝ぼけたこと言ってんだ」と一蹴されて終わりなのがまた不憫。やっとホルモンが落ち着いて通常モードに戻ってきたここ一週間だけど、この1カ月、愛すべき我が夫は持ち前の明るさと鈍感力で母熊の攻撃を耐え抜いた!おめでとう!


それはそうと、うちのおチビはすごく頭がくさい。沐浴させた直後からおっさん臭が放たれている。新生児の男の子にはあるあるだと聞くが、長女はふわりと甘い赤ちゃんの香りを漂わせていたのに、君の頭皮では一体何が起きているんだと聞きたくなる。
先日、なぜ去年に比べて今年はあんなに苛立ったのだろう、と気になって調べてみたら、なんとこのおっさん臭が、母親の周囲への攻撃性を高めているという研究結果があるのだそうだ。

ちなみに、夫の新生児寝かしつけのセンスのなさについても、男性ホルモン、テストステロンの特性からして仕方のないことなのだそうだ。つくづく、ホルモンにはかなわない。

と、今回のnoteを書き終えるか終えないか・・といったところで、昨夜は夫がささっと起きて夜中の授乳を全てばっちり対応してくれた。テストステロンに打ち勝った夫はレベルがあがった。
私もおチビに帽子を買おうと思う。




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