101特別編:台湾

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真のジェントルマン』国家。日本との絆
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2022年3月19日夜9時~
このクラブハウス

  九州とほぼ同じ国土面積の台湾。その歴史はマンゴやパイナップルと同じくらいカラフルです。最初の現生人類の到来は旧石器時代晩期(約5万年前)。日本の歴史とほぼ一致しています。アミ族など台湾に16ある原住民の祖先です。
  15世紀から17世紀の大航海時代、台湾は「フォルモサ (麗しの島)」という愛称で世界に知れ渡っていました。台湾を発見したポルトガル人が、緑あふれる島の姿を見て「Ilha Formosa!」と叫んだという言い伝えから来ています。そんな台湾の最初の外来統治者は17世紀前半のオランダでした。オランダは台湾南部を占領し、そして北部を占領していたスペイン人を追い出し、台湾全島を手に入れました。しかし、この統治は長く続きませんでした。
  17世紀後半、長崎県平戸市で生まれた日中ハーフの鄭成功(てい・せいこう)が率いる政権はオランダ人を追い出し、漢民族による台湾統治が始まりました。この頃から台湾に移住する漢民族が増え、当時の首都台南市を中心に漢文化が全島に浸透し始めました。
  そして19世紀末期の1895年、日清戦争の勝利国となった日本は台湾の統治者となりました。日本は日台共学制度などの「同化政策」を進めました。いまも台湾の年配者の多くが日本語を話せるのは、この時期に日本語教育を受けたからです。麗しの島を手に入れた日本は、積極的に鉄道建設、ダム建設大学の建設農業の改善など多大な投資を行いました。さらに「皇民化政策」がとられ、台湾で日本文化が急速に広まりました。第17回全国中等学校優勝野球大会では、台湾代表の嘉義農林学校が甲子園初出場ながら準優勝しました(映画「KANO」。また、台湾の原住民の若者が日本のラジオ実況放送で日本の曲を堂々と歌い、日本全土に感動を巻き起こしました。
  しかし、1945年の太平洋戦争の終結に伴い、日本の50年間の台湾統治時代も終幕を迎え、台湾在留日本人の引き揚げが行われました。敗戦国の日本は台湾に対する全ての権利を放棄したが、放棄後の台湾の主権がどこに帰属するのかは明確ではありませんでした。
  ちょうどその頃、太平洋戦争の戦勝国となった中国で内戦が起きていました。その結果、勝ち組となった毛沢東が率いる『中国共産党』は『中華人民共和国』という新しい国家を樹立しました。一方で内戦の負け組となった蒋介石が率いる『中国国民党』政権は台湾に逃亡し、台湾を統治し始めました。中国国民党の政治・行政における腐敗の酷さに、日本の教育を受けてきた台湾住民は愕然とし抵抗しました。しかし中国国民党政権は台湾住民を武力で鎮圧し、今日まで台湾に居座り続けています。台湾に付きまとう『中華民国』という不自然な国名は、中国国民党政権が掲げてきた国名に由来しています。
  一方で中国を手に入れた共産党政権も台湾がほしくてしょうがない。1949年、中国は台湾に大規模な人民解放軍を送り、武力で台湾を吸収しようとしました。しかし福島県出身の元陸軍中将 根本博 の大活躍により、中国人民解放軍は撃破され、今日に至る台湾の存立を決定的なものにしました。
  1972年の日中国交正常化の際に、国交を結ぶ条件の一つとして、台湾との縁を切れと迫ってきた中国に日本は、罪のない台湾に対して一方的に断交しました。これは日本外交の歴史に残る汚点として今日まで語り継がれています。今年2022年は、中国との国交樹立50周年と同時に、日本が台湾に断交を突き付けた50周年でもあることを我々は忘れていけない、と唱える歴史家も多くいます。このとき中国は日本に対して、もう一つ厳しい要求をしています。「台湾は中華人民共和国の一部である」ことを日本は認めなさい、という要求です。幸いにして、日本はこれを承認しなかった。日本は「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する」という、ギリギリの線のところで止めています。
  それ以降、中国は「大陸と台湾は不可分」という『一つの中国』プロパガンダを国際社会で強烈に推し進め、これに同調しない国や企業に対して、嫌がらせを行っています。日本に対しても、この『一つの中国』を厳守するよう激しく要求しています。何故ならば、日本が『一つの中国』を認めれば、「台湾は中華人民共和国の一部である」ことを日本が承認しなかった歴史的事実を覆すことができるからです。
  1988年、台湾に居座るその中国国民党のなかから、台湾生まれの党員が台湾の総統に就任しました。日本統治時代に生まれ、23歳まで日本人として生きてきた京都帝国大学卒の 李登輝 です。『台湾民主化の父』と呼ばれた李登輝は、史上初の漢民族の政権による普通選挙を実現させました。そしてハイテク産業の成長を中心に「台湾奇跡」と呼ばれる著しい経済発展を成功させました。中国の台湾侵略の脅威と常に背中合わせのなか、自由民主と経済発展を同時に成し遂げた台湾は、いまや共産主義・独裁主義国家との対立の最前線に立っているリーダーとして、自由民主側の国々から尊敬されています。そのリーダーシップは、台湾で初の女性総統に就任した現在の 蔡英文 に受け継がれています。
  国際舞台で輝かしく活躍中のフレンドリーな優等生。東洋の民主主義の象徴。中国とは完全に排他的であり、独自の政府・憲法・経済・通貨・領土・軍隊を持つ台湾という国。にもかかわらず世界の殆どの国々は、表向きには台湾を国として認めることができない事情があります。それは上述の中国による「嫌がらせ」を恐れているからです。このため、台湾は国連にでさえ参加を許されていません。国連の憲章に「地球上のすべての人々のために」というくだりがあります。しかし、現実は違います。2300万人の台湾の国民が除外されています。この地球上で唯一、国連に除外されている人々です。
  国際社会でどんなに中国のイジメにあっても、台湾の人は現状維持、つまりジッと我慢しているのです。その理由は二つあります。①ここで「台湾は独立国家だ」と宣言すると、中国が台湾を侵攻する口実を作ることになる。②中台戦争になればアジア太平洋地区が不安定になり、友人であるアメリカや日本にも迷惑をかけることになる。
  このように台湾は自分の感情を抑え、周りの国々にも気遣っている、真のジェントルマンの国なのです。しかし内心はずっと傷ついています。
  去年の東京オリンピックの開会式で台湾代表チームが入場した際、会場の場内アナウンスは台湾を「チャイニーズ・タイペイ」と呼びました。中国がIOCに許可を与えた台湾の呼び名です。台湾の人たちは「しょうがない」と、いつものように自分達に言い聞かせていました。ところが、その時!テレビで実況生中継していたNHKのアナウンサーが「タイワンです!」と叫んだのです。これを聞いた多くの台湾の人たちは驚き、涙を流しました。そして台湾のネット上で日本への感謝のメッセージが多く発信されました。ちなみに一方の中国の放送局は、NHKの「タイワンです!」を聞いた瞬間、急きょトークショー番組の放送に切り替えました。そして数分後にオリンピック中継に戻ったのですが、そのとき既に中国代表団の行進が終わっていました。自国の行進を観るのを楽しみにしていた中国の視聴者は、トークショーのホストの話が長過ぎたせいで観れなかったと思い込みました。その後、このホストへの誹謗中傷は相当なものだったようです。
  このような日本と台湾の民間人の心を結ぶ話をもう一つだけ紹介します。東日本大震災の台湾からの義援金は200億円。台湾は小さな国ですが、この金額はどの国よりも多額で世界最大のものでした。日本政府は中国を含む世界の六か国の主要新聞に「Thank you for the Kizuna(絆)」と題した感謝広告を載せましたが、台湾はその六か国に入っていませんでした。これに疑問をもった日本の民間人がツイッターで広告掲載を呼びかけたところ日本各地から数日で1900万円以上にのぼる寄付金が寄せられ、この寄付金により『日本国民有志』という形で台湾での広告掲載が実現しました。そして、1700万円以上の余剰金は日本赤十字社に寄付されました。本物の絆が表舞台に現れた瞬間です。

  この『真のジェントルマン』国家、台湾は東京から3時間のフライトに在ります。その地形は、スイスとハワイを足して二で割ったようなもの、と考えると分かりやすい。
  島の東西は140キロ。これは、紀伊半島の幅(和歌山‐伊勢)よりも狭い。この狭い空間に富士山よりも高い、標高3,952mの『玉山』が聳え立っています。日本統治時代『新高山』と呼ばれていた、この東北アジアの最高峰は、南北に走る中央山脈にあります。
  標高が高くなく気軽に台湾の美しい山々を経験してみたい人におススメなのが 六十石山。8月~9月にかけて、ワスレナグサの一種である金針花が覆う黄金に輝く幻想的な景色が目の前に広がります。夜明け前、未だ暗いうちに車で山頂につけ、日の出を待つ。日が昇って来るにつれて山全体そして谷の向こうの山々の色も変わっていきます。世界の写真家のお気に入りスポットです。この金針花、実は食べれます。山頂でオーガニック栽培し販売している農家で試食し、購入することもおススメします。最近注目されている台湾の高山コーヒー豆もここで栽培、販売されています。
  六十石山から下りて車を少し走らせると 池上伯朗大道 に到着します。この田園地帯は、金城武が登場するエバー航空のCMのロケ地として有名です。自転車レンタル屋さんもあるので、金城のようにサイクリングを楽しんでみて下さい。ちなみにここから西側方面の山脈を見渡す夕陽は格別です。
  このあたりは台湾の太平洋側。さらに南に行くと、台湾最南端に位置する、ハワイに引けを取らない美しいビーチを構える 墾丁国立公園 に着きます。そして公園内の 関山 。ここは「世界で最も美しい夕日が見られる12ヶ所」の一つに選ばれています(CNN)。

他にも色々と紹介したい台湾の魅力。箇条で書けるところまで書いてみます。

トロピカル・フルーツの天国。台南のこの店で「ヨーグルト付きマンゴー山盛り」。
・スコットランドなど各地で金賞をとったウィスキー『KAVALAN
B級グルメの宝庫:台南で魯麺日本統治時代・昔の味のままのプリン基隆呉記螃蟹羹(カニとろみスープ)を。
・首都 台北 には数えきれないほどの手軽にハイキングできるコースが。
レトロな路線が台北の近郊に。
台湾高山茶を外したら台湾に行ってきたとはいえないかも :-)
・台湾出身のテレサテン。彼女が眠っているところは観光名所になっています。世界で最も美しい霊園の一つとの呼び名の高い『金寶山』は台北市内から車で1時間半。金寶山台北事務所から快適な観光バスが出ています。毎日朝9時発。要予約。帰りのバスは正午か午後1時に現地を出発。昼食の場所は現地の『寶山堂』レストランをおススメします。台湾北部の海岸を一望できます。バス料金:往復300台湾ドル(1000円くらい)。

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