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映画ゆるキャン△感想 山梨県が生んだモンスター大垣千秋

概ねいい映画だった・・・と思う。本編の小ネタをいくつも拾っていてファンとしては満足だし、大人になった面々もさほど違和感は無く、成長したチビイヌ子の破壊力は凄まじい。なでしこの姉(桜)はただ一人老けたなあ・・・という印象だけれど、なでしこが自立したことで物語としての役割を引退したんだろうと思わせたりとキャラクター個々の描き方が本当に上手い。

上映時間が120分とこの手のアニメ映画としては長く、BGMオンリーでカットを繋げるシーン(実写だとモンタージュと呼ばれるやつ?)が多くて話としては間延び感があるけれど、その辺ダラダラやるのもまた魅力なのかもしれない。こんな時間がなんぼあってもいいと思わせる雰囲気です。


気になったところ

すごい気になってしまったのは物語の本筋であるキャンプ場建設が無償のボランティアであると示唆されているところ(そもそも犬山は副業禁止だろうし)。観た人はみんな多かれ少なかれ気になったんじゃないだろうか。

出版社で働く志摩リンは冒頭で「久々の土日休み」と嘆き(むろん、平日に定休日があるような職種でもないだろう)、終電帰りだったり大晦日に職場で年を越したりといった労働環境が描かれていて、そこに加えて休日は片道4時間バイクを走らせて無償労働。かなり異常な描写なのにそれについての結果やアンサー的なものは無く、「やりたいことをやっている人の日常」みたいに消化されるだけで・・・令和のアニメとしてちょっとどうなんだ、みたいな。

それに対して真逆なのが大垣千秋の存在である。彼女は山梨県の環境推進機構(モデルが実在する公益法人)の職員としてキャンプ場の建設を指導する。非正規なのかもしれないがいずれにせよ給与が発生しているし、地元住まいなので負担も少ない。加えてこの案件の成功で栄達も見込まれる。怪しいくらい都合がいい。

そう考えると色々と邪推してしまう。チーム内の役職決めで他を上げて自分は裏方担当と引っ込むのも報酬の有無をごまかす算段臭いし、見つかった土器の破片をいちいち上に報告して点数アップを狙ってたり、しまいには土器の調査にすらボランティアで送り込んで自分の案の承認の確度を上げたり・・・

もちろん邪推。ぜんぶ邪推なのだが、そう勘繰ってしまうような話になってしまってるのは事実だ。これが例えば土地も費用も自前でなんとかして野クルが事業の主体となる話ならどうか。それこそが大人になった面々にしかできないストーリーだし、キャンプにまつわるディティールを細かく描いてきたゆるキャン△らしくもある。しかし残念ながら映画ゆるキャン△で描かれるのは大垣千秋を擁する山梨県による搾取と単純労働である。

その辺りはリアリティラインを超えているので描いていないとか、千秋は物語を動かしただけに過ぎないと言われたらそうなんだろうけど、クリエイターの報酬がどうこう煩い昨今のインターネットを鑑みた現代らしい作品であってもゆるキャン△の緩さは揺るがないだろうと思う。なんか全体的に狐につままれたような映画でした。


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