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「りんご」は「りんご」とくらべようよ

'apple(s) to apple(s)' 

何かを比較する時、同一の条件じゃないとアカンやん、という言葉。りんごのことを比べたいなら、バナナやみかんではなく、りんごと比べようよ、という、ごくごく当然のことですよね。

でも、これがなかなか難しいこともあるようです。たとえば、 #投資信託  のコスト。最近、設定された某ファンドに対して、ネットでは「コストが高い」という評価が多数見つかります。確かに、投資信託を検討するうえで、コストは非常に大事な要素です。しかし、何と比べるか、というのがキモです。りんごを、バナナやみかんと比べてるんじゃないですか、と感じるわけです。インデックスファンドと比べるのは全然違うでしょ、ってね。

日経225等の株価指数に連動するのを目指すインデックスファンドって、同じ材料、同じ分量で料理をつくるようなものです。ですから、その味(運用成績)はほとんど変わりません(実際には運用の巧拙があるようですが)。だから、その料理にいくら払うのか、一番安くこしらえてくれる人がいいよねー、ってことになるわけです。コスト競争に業者の皆さんが鎬を削るのも理解できます。

一方、アクティブファンド。こちらはどんな材料をつかうか、どんな分量にするか、全てはファンドマネジャーや運用チームに委ねられているので、当然、その味(運用成績)は料理ごとにバラバラになるわけです。その料理にいくら払うのか、をインデックスファンドのモノサシを当てて、高いの、安いの、っていうのはナンセンスだと思います。結局、その料理を、お店が決めた値段で食べてみたいかどうか、というお話でしょう。もちろん、値段が高いからといって美味しいかどうか、は分かりません。それはレストランと同じです。ファンドマネジャーが手間暇かけてつくったポートフォリオに対して「コストが高い」それだけをもって一刀両断に評価してしまうことは、まるで、「高いレストランはきっと不味いので絶対行かない」と言っているように、もっと極端な表現をすれば、一度も食べたこともないのに、お店に入ったこともないのに、「あのお店は高いのに美味いかどうかわからないぞ(往々にして「不味いぞ!」というニュアンスを持たせて)」と言っているように、私には見えます。
一度食べてみて、不味いって感じたらそこでお店から出ればいいだけのことなんですけどねー。

アクティブファンドを評価する際に「コスト」は、少なくとも、最初に見るべき要素ではありません。投資するか否か決断する最後の最後に、このレストランに入るのに、この料理を食べるために、この値段を払う価値があるだろうか、と自分に問いかける質問だと思います。

コストよりもずっと大事だと考えるのは、次の点です。

誰が料理をつくるのか。

そもそもどんな料理を目指すのか。材料選びの基準は。

基準に沿って具体的にどうやって材料を選ぶのか。

選んだ材料はどんなもので、どんな分量になっているか。

そして、もう一つ大事なことがあります。

どんな人たちと一緒にその料理を味わうのか、楽しむのか。

投資信託という料理の真髄を味わうには、時間が掛かります。その際に、一緒に料理を楽しむ人たちのかかわり方次第で、料理の味が変わってくるのです。投資信託という料理の極めてユニークなところは、その料理をお金を払って食べている人の姿勢や振る舞いが料理の味に大きな影響を及ぼす点です。株価が低迷している時期、それは料理の味が「ん?不味い?」って感じてしまう時期です。ここで料理の味に大きな違いが出るのです。

これからもっと不味くなるんじゃない?と思ってレストランから立ち去るお客さんが多いか、それとも、シェフの腕は確かだし材料選びも信頼できるしってことでさらにおかわりを追加注文するお客さんが多いか。シェフが後者のようなお客さんの胃袋をわしづかみに出来ていれば、そんなレストランが名店になっていくのが、投資信託の世界だと私は思うのです。

これらの要素を見て、お店に入るか、料理を味わって「おかわり」を頼もうか、って考えるのは楽しいものです。その料理を味わいたい!って思ったら、一度食べてみます。高いか安いかは、少し料理を味わってからでも決められると思うんですよね。全くの個人的な意見ですが「高いけど美味しい」料理は、投資信託の世界にも存在します。

投資信託の業界を見ていて大変残念なのは、「食べてみたい」と思わせてくれるだけの説明をしっかりしてくれるシェフが圧倒的に少数だということです。そういうシェフ、もっともっと増えてほしいですね。

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