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#ESG投資 がアクティブファンドでは当たり前になるべきだ ― 『社会を変える投資 ESG入門』を読んで

先日参加した、#コムジェスト・アセットマネジメント さんのイベント。一緒にご参加されていたShimoyamaさんが推薦されていた一冊です。

https://www.amazon.co.jp/dp/B07J1GJDFD/

読んでみました。

目次です。

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第1章 ESGで何が変わるのか
(1)企業の活動と存在意義─存在意義がわかって変わる企業の活動
(2)今なぜ持続的成長か─ESGを考えなければ持続的成長はできない
(3)「利益最大化」から「先義後利」─「義」とは取り組むべき社会的課題

第2章 ESGとは何か
(1)それぞれ何を指すものか─異なる3つの言葉をひとつに
(2)ESGの歴史─SRIからESG投資へ
(3)今求められているものは何か─大局的な視点で課題を把握する
(4)経営戦略の一貫として─価値創造の源泉としても注目

第3章 これからの「良い会社」
(1)付加価値創造メカニズム─ESGの目標値を持ち始めた「良い会社」
(2)経営トップのコミットメントの必要性─ESGにはトップの意識と実行力が大事
(3)資本市場への発信「統合報告書」─ESGへの目標を表明する場
(4)会社がESGで格付けされる?─取り組みや達成度を評価
(5)投資への影響─現状の分析と今後の展望は

第4章 投資で社会を良くする
(1)ポートフォリオでいかに表現するか─責任投資への取り組み方はさまざま
(2)日本でのESG投資の在り方─投資家と会社の間に築かれる「建設的な関係」

第5章 ESGの未来
スロー・インベストメントへの転換
これから必要な変革とは
参加者の姿勢が成否を決める

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非常に分かり易い表現で書かれていて、ストレスなくスイスイと読み進めることができました。

これまで市場の拡大を背景に「資金」の増大だけ=利益の最大化を目指してきた企業にとっては、自分たちの活動を取り巻くより多くの人、社会への影響を考えなければ、ビジネスを長きにわたり続けることがかなわない世の中になったのです。
(第1章 ESGで何が変わるのか)

持続可能性とは、将来の世代のニーズを損なうことなく、現代の世代のニーズを満たすことを意味します。
金融は将来の発展のために、必要とされる企業や事業に資金を効果的に配分する役割を担っています。その責任を果たす上では、近視眼的にならず、長期的な展望に立って、投資先企業の財務に関する分析に加え、従業員や取引先、顧客、地域コミュニティーなど、企業が社会に与える影響や環境に及ぼす影響などをさまざまな角度から把握し、さらに、企業の持続可能性についても十分に考慮して投資の意思決定を行うことが、持続的な運用においては重要であるとの考えです。
(第2章 ESGとは何か)

問題なのは、投資家は企業を外から分析する外部者としての立場にあるため、往々にして企業の状況を分析するのに必要十分なESG情報が得にくいということです。財務情報は、適切な情報開示に向けた法制度が整備されているのですが、ことESG情報となると、法整備がないため、企業の情報開示はまちまちで、外部から公平に比較することができないことが多く、投資判断に活用することが難しくなります。
(第2章 ESGとは何か)

企業が持つ資本は財務資本や製造資本にとどまりません。人的資本、知的資本、自然資本、社会関係資本のようにさまざまな資本が含まれます。財務やESGにわたる企業全体の、そして企業固有のビジネスモデルとして統合戦略が示される必要があります。
統合報告書は、会社のビジョンや、価値創造の全体像を、経営トップが説明しており、投資家が長期的な企業価値を分析する上で多くの有効な情報を与えるものです。
(第2章 ESGとは何か)

統合報告書の大事なポイントは、「価値創造能力」と「統合思考」です。(略)
統合報告書ではまず、会社がどのようにして(どのような戦略で)価値創造を行っている(いく)のか説明することが大事です。その際に重要なのが、「統合思考」です。
統合思考とは、会社のさまざまな活動や機能と、会社が使用もしくは影響を与える6つの資本との関係をより積極的に考えていくことです。ESGの観点もこの統合思考の中で培われます。
(第3章 これからの「良い会社」)

会社が活動を通じて、社会的課題を解決するときに大事な視点がインベストメント・チェーンです。
インベストメント・チェーンとは、株主などの資金を提供する投資家と、資金を調達する会社が、中長期的な価値向上を目的として協働することで、企業価値の向上を目指すことです。そしてこの価値創造には、社会全体の価値が含まれます。
(中略)
インベストメント。チェーンの視点がESGにとって重要なのは、会社の長い目で見た価値創造を、投資家・経営陣双方が「同じ船に乗って」協働する素地を作るためです。
(第4章 投資で社会を良くする)

印象に残った個所を抜き出してみたのですが、本を読み終わって感じた一番の感想は、「ESG」というラベルを付ける必要なんてもう無いでしょう、ということでした。つまり、株式投資において、特にどの会社に投資するか、しないかを判断するアクティブ投資のプロセスにおいては、常に求めるべき、採用されるべき枠組が、この本で示されていました。この本で示されている枠組はアクティブファンドでは、普通に、当たり前に、実装されているべきです。

この本を通じて、また、先日のコムジェストさんでのミーティングを経て、あらためて感じたのが「エンゲージメント」の重要性です。ESG要因をより強く意識した投資を行うのであれば、この機能の充実は不可欠だと感じました。「エンゲージメント」の効果を高めるためには、投資先と投資家と関係が重要です。それを考えると、短期の保有であったり、幅広く分散したポートフォリオでは、実のあるエンゲージメントを遂行することは極めて困難だと考えます。

ESGを前面に押し出すファンドは、次のような特徴を備えるべきではないか、と感じます。

1.長期での株式保有を志向していること
2.ポートフォリオは30-50社程度であること(しっかりと投資先の内容を理解してエンゲージメントが可能なリソースを持っているなら、100社でも良いのかもしれませんが)

アタマの整理ができる良い読書になりました。推薦してくださったShimoyamaさんに感謝です。

https://www.shimoshun.com/entry/esg-nyumon-amundi

本を編著した #アムンディ・ジャパン さんのESG投資関連のWebページです。

https://www.amundi.co.jp/esg.html

先日のコムジェストさんのイベントにご参加されたブロガーの皆さんの記事です。

https://www.shimoshun.com/entry/comgest-bloggers-mtg


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