コストは大事だよ

アクティブファンドの手数料は、本当に「話にならないくらい高過ぎるのか」?


現在は、特に個人向けでアクティブ運用商品の手数料が「話にならないくらい高過ぎる」のでインデックス運用が圧倒的に有利だが、
(2019年4月23日 週刊エコノミスト 27頁)

経済評論家 山崎元さんが(談)で断じられていました。

日本株式のアクティブファンドについては、強い違和感があります。

私のブログで30か月続けているシリーズです。

このシリーズでは運用歴10年を超えるファンドのパフォーマンスを評価しています。評価方法はかなり単純です。

1年、3年、5年、10年の年率リターンの順位でパーセンタイルを計算し、その4つのパーセンタイル値の平均値を小さい順から並べるというものです。4つの数値は全て平等に扱うことで、短期(1年)、中期(3年、5年)、長期(10年)で良い順位を取ると順位が上になるわけです。

30ヶ月目にして、連続でトップ20を維持し続けたファンドが1本になりました。

このファンドのモーニングスターでのカテゴリーは『国内小型グロース』で、次のように紹介されています。

わが国の上場株式のうち、高成長が期待できる「新興企業」(取得時において創業25年以下または上場後10年以下の企業を目安)の株式を中心に投資。新規公開時における上場予定企業の株式の買付を積極的に行う。銘柄選定基準は、企業訪問や産業調査など徹底したファンダメンタルズ分析に基づくボトムアップ・アプローチ。

このファンドの信託報酬はモーニングスターによると、1.84%。山崎元さんの基準からすれば「目ん玉飛び出るくらい高い!」ってことになるかもしれません。確かに高いのかもしれませんが、パフォーマンスは立派ではないでしょうか。ファンドを提供している投信会社、販売会社、信託銀行は取り過ぎなのでしょうか。

このファンドの10年リターン(年率換算)の推移です。10年保有していたらどうなっていたか、ということが分かります。直近、2019年3月末の数値は21.8%です。年率ですよ。ですから、2009年3月末にこのファンドを保有していたら、7倍以上になっているのです。これだけの結果を残しているのであれば、取り過ぎとは言いづらいのではないか、と個人的に思います。

こうした説明をすると、これは上手く行ってる例じゃないか!という指摘もあるでしょう。その通りですね。運用が上手く行っても行かなくてもコストは掛かります。それが気に入らない!というのであれば、そもそも投資信託を保有するのに「適合」していないということだと思いますので、さっさとご自身で運用すべきでしょう。自分の出来ないことを誰かに任せる以上、その結果が上手く行こうが行くまいが、報酬を渡すことは当然のことでしょう。

高過ぎる!と感じるのであれば買わなければ良いのです。2009年3月末に1.84%だけど、この投資信託と10年付き合ってみようか、と判断して、実際に10年お付き合いした人だけが上記のパフォーマンスを享受できるのです。

機関投資家にはもっと安い報酬だ、という指摘もあります。が、投資家側に毎日お金が買い付けたり、解約したりすることができる自由を与えている追加型公募投信と、機関投資家に提供されているファンドを比較することは、そもそも適切でしょうか。また、運用戦略によっては規模の制約もあったりするわけで(小型株に投資するファンドは特に)、そこを味噌くそにするのはどうかな?と思います。

よく出て来るグラフです。コストが1%違うと長期でこんなに違いが出ますよ、というアレです。ですが、これはポートフォリオが同じものであれば当てはまるだけで、そもそものポートフォリオが異なる場合には全く意味をなさないグラフだと思います。インデックスファンドのような、ある1日に目指すべきポートフォリオがただ1つ、というケースのみにあてはまるお話です。アクティブファンドについても、上のグラフでコストの重要性を強調するのは大きな、とてもとても大きな間違いだと私は思います。

さて、30回続けているランキング。そのうち20回以上トップ20にランクインしたファンドが16本あります。

16本の信託報酬の平均は1.70%となっています。

注目したいのはカテゴリーです。すべて「国内小型」。つまり、時価総額の小さい小型株でポートフォリオをつくっているファンドです。

先ほどのグラフに2つのETFのグラフを加えました。一つはTOPIX、そして、もう一つはコア30です。コア30とは、東証一部の時価総額上位30社、超大型株で構成される株価指数です。コア30がすさまじくアンダーパフォームしていることが分かります。

ここ数年、株価パフォーマンスが小型株優位であったことは確かです。しかし、ある意味、そこに大事なことが存在しているのではないでしょうか。

つまり、大事なのは「何に投資するか」「何を持つか、何を持たないか」。「コスト」はその次の次の次くらいではないか、ということです。

長期的に見て、株価が企業業績に収斂していくのであれば、小型株優位になるのは一時的なことではないと思います。特に日本の場合、コア30に含まれる大企業が利益を2倍にするのにかかる年数と、時価総額は小さいけれど着実に成長を遂げている会社が利益を2倍にするのにかかる年数、どちらが短いでしょうか。もちろん、小さければ何でも良いわけではありません。だからこそ選別が必要になってくるわけです。利益の絶対値が小さい方が2倍、3倍と成長する可能性が大きいと私は考えます。トヨタ自動車の利益が2倍になるのに何年かかるでしょうか?

最後に。

ここで一番考えたいのは10年前に MHAM新興成長株オープン なるファンドを見出せたか、またずっと信頼を寄せ続けることができたか、ということです。

10年前にはこんなページも無かったでしょうし、この水準の月次レポートでは10年保有し続けることは非常に難しいことだったと思われます。

アクティブファンドで何よりも大事なことは「コスト」を訴求することでなくて、どんな価値観、哲学でポートフォリオをつくるのか、どうやって投資対象を選び出すのか、その結果、どんなポートフォリオになっているのか、そのパフォーマンスはどうなっているのかを丁寧に、真摯に説明し続けることだと私は思います。

「顔を出せばいいんでしょ!」ではダメなんです。

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