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暮らしをぐっと楽しむため。2拠点居住の基地にどうぞ | ゲストハウス/guest house MARUYA 静岡県熱海市(2016年掲載事例記事)

※本記事は、弊社旧ウェブサイト(rerererenovation!)からの移行記事です。2016年に制作/更新されたもので、登場する人や場所の情報は、インタビュー当時のものです。



guest house MARUYAってどんなところ?

「ゲストハウス マルヤ」は熱海で過ごす時間を自分の暮らしに取り入れたい方のための場所。熱海初のゲストハウスです。単なるお手頃価格の宿泊施設ではなく、都会の暮らしから離れて、いつもと違う日常を過ごせる「基地」のような場所。”お客様”としてうわべを観光するだけではなく、昭和レトロな路地裏をめぐるまち歩き、温泉めぐりや夜のまちで飲み歩いたり、シーカヤックや農業体験をしたり、自分にあった熱海の「つかいかた」を見つけられます。

ただ、体験するだけではありません。こういう取組みを「自分でつくってしまえる」のが大きな特徴。ゲストハウス マルヤはまちづくりNPOの拠点にもなっているので、農地再生や中心エリアのシャッター街のリノベーション、アート・イベント、ビーチの活性化など様々なまちづくりの活動や事業に、ボランティアや仕事として関われるんです。さらに、街が気に入ったらマルシェに出店もOK。「つかいかた」を見つけて広げて、自分でつくってしまえる。都心から新幹線で40分の場所にできた、あたらしい暮らし方がつまった場所が「ゲストハウス マルヤ」です。

ゲストハウス マルヤの外観。熱海を自分の居場所として使ってもらう「拠点」になるべく、2015年8月下旬にオープン。熱海でお待ちしています(撮影:戸井田雄)
熱海全景。こんなところで暮らす毎日が気軽に手に入るように(撮影:関根義人)

guest house MARUYAができるまでのストーリー

STEP 01 こんな場所から始まった

「とりあえず」使われていた倉庫をなんとかしたい

戦後すぐの昭和25年に建てられ築65年になるこの建物。熱海が新婚旅行のメッカだったころは喫茶店、その後はパチンコ店や近くの干物屋さんの倉庫として使われていました。シャッターはずっと降りたまま。入口には熱海銀座通りのお店を紹介した、ものすごく大きな看板が掲げられていました。

実はこの物件のオーナー・小倉一郎さんは、熱海のまちづくりNPO活動をいっしょに行う仲間です。システムエンジニアとして働きながら、熱海の温泉に関する「NPOエイミック」の理事長でもある小倉さんの熱海愛は、まるで燃えさかる火のよう。「廃れてきてしまった熱海を立て直したい」という気持ちが非常に強い方でした。

しかし、1階部分だけでも約300平米と非常に大きな建物がゆえに、なかなか改装して使おうとする方は現れません。シャッターを開けて中に入ると、大量のダンボールと梱包材プチプチがうずたかく積まれ、かび臭さが充満しています。日光もほとんど入らない薄暗い空間からは、なにかが始まるだなんて予想もできない状況でした。

シャッターを開けると、そこは奥は見通せないほど大量のダンボールが積まれた空間でした。なんと倉庫の奥には岩でできた滝?のようなものがありました
(撮影:リノベーションスクール2013 ユニットAのメンバー)


STEP 02 動き出すきっかけ

オーナーと一緒に「どう使うか」に頭を捻ったリノベーションスクール。でも……

誰も手を付けられない大きな倉庫をゲストハウスにするきっかけが、2013年の秋に開催された「リノベーションスクール」です。このスクールの課題物件になったのが始まりでした。リノベーションスクールを呼んだ一人、熱海のまちづくりNPO代表 市来さんは、スクールが開催される2年前の2011年、熱海の空室状況を調査していた頃から「この倉庫に目をつけていた」そうです。

廃業が相次ぎ、シャッター街にどんどん変わる銀座通り。その中心にどんと構えるこの倉庫が復活したら「商店街そのものの復活の象徴になる」と、市来さんはまちづくり活動の仲間でもあるオーナーの小倉さんに声をかけ、リノベーションスクールの課題物件としての参加を勧めました。小倉さん自身もまちづくり活動をするなかで「自分の物件もなんとかしなくては」と思い始めていた矢先でもあり、トントン拍子に話は進みました。

スクールのメンバーが立てたリノベーションプランは、早いうちから大空間を活かした「ゲストハウス」と一致。サブリーダーを努めた市来さんの経験が決定打になりました。学生の頃、バックパッカーとして世界を回りながら「まちを一番楽しむため」ゲストハウスに泊まっていた市来さん。泊まった宿での出会いがまた、そのまちを知るきっかけもつくってくれました。市来さんの経験を糧に、旅人はもちろん地方と都会を行き来する人や、地元の人も、みんなが何気なく集まる”たまり場”を作りたい。そうして、熱海の “訪問者” と “地元の人” をつなぐ窓口「ゲストハウス マルヤ」の原型がつくられました。

設計から施工までをお願いしたハンディハウスプロジェクトの中田さん(中田製作所)と、図面の打合せ。無駄がないように、でもゲストハウスとしての特徴をハッキリ打ち出すにはどうしたらよいのか、何度も話し合った
クラウドファンディング(ready for)では目標額の約2倍のお金が集まりました!(いずれも撮影:株式会社machimori メンバー)


STEP 03 開店準備

「できるだけ自分たちで」を合言葉にワークショップを重ねる

施工は、新しい仲間づくりをしたいという意味も込めDIY(Do It Yourself)ならぬDIT(Do It Together)方式で。10回以上ものワークショップを開催し、70人を超える人が参加しました。ペンキ塗り、床張りから内装の壁紙貼り、外観を整える作業まで、できるところはすべて仲間達で奮闘しましとっても愛着が持てる空間に。作業後、(やっぱりここは熱海ですから!)温泉で汗を流して、夜のまちに繰り出す日もあったとか。

「ワークショップをきっかけに、熱海っておもしろい!って思ったし友達ができた!」と話す参加者もたくさん。ワイワイ言ってワークショップしていると、まちの人や観光客が通りがかりに「何やってるの?」と覗き込んで世間話から「まちを変えたい」という話に発展したり、偶然立ち寄った人が「ゲストハウス マルヤ」のスタッフになったり。きっかけがドンドン生まれていきました。

仲間の結束を強め、他の人とのきっかけを生み、そして何より楽しいワークショップ。さらにお金の面でも想定外に良いことが。約300平米もある広い面積の工事を外注してリノベーションすると何千万円ものお金がかかります。しかし、プロの指導をあおぎながら、自分たちで工事することで、思った以上に低予算でリノベーションできDIT方式の力をここでも実感しました。

お部屋の部分を作るのも、集まった仲間でワークショップ方式でケンケンガクガク議論しながら作ります
ワークショップ参加の記念に。参加者全員が壁に名前を書き込みます。サインすることで愛着もひとしお
ペンキ塗りワークショップの様子。みな、真剣な表情で天井を塗りました(撮影全て:戸井田雄)


STEP 04 お披露目

メンバーも増え、開業絶賛準備中です!

2015年8月下旬のオープンを目指して最終準備中のゲストハウス マルヤ。6月末には内覧会とお試し宿泊会が行われ、リノベーションスクールで熱く語り合った仲間が全国から集結。「あの時の企画が形になった……!」と喜びつつ、使い勝手チェックを行いました。

さらに、ゲストハウス運営を担当する新メンバー3名が加わり、戦力も増強!自分たちで運営するゲストハウスを自分たちで作りながら最後の準備をしています。今は、ただ泊まるだけではなく、熱海らしい過ごし方の提案のために「熱海のつかいかた TRIP」という現地で予約申込ができる体験ツアーも準備中。海を楽しむシーカヤックや熱海を拠点に活動する吹きガラス作家さんとオリジナルガラスを作る体験などが登場予定。

「熱海にこのゲストハウスができたことで、熱海の楽しみ方が変わった」と言われるようなゲストハウスにしたい。リピーターになって「熱海っておもしろい」とファンになってくれる方をどんどん増やしたい。スタッフの思いは高まっています。

ゲストハウスの宿泊部分。顔がぴょこっと出ているところで寝られるようになっている。内装もできる限り自分たち仕上げ、部屋ごと違う壁紙でゲストをお迎えします
マルヤの顔ともいえる店舗部分 "KOYA(小屋)"横には、かき氷屋さんが出没することも。"KOYA" は通りに面した場所にあり、ゆくゆくは飲食店などに貸す予定。KOYAの壁張もカウンターもプロの手を借りながらも自分たちで造作した
思いおもいに寛ぐことのできるラウンジ。旅人同士、仲良くなることも(撮影:戸井田雄ほか)


女将の安藤さんは「熱海を旅行先としてではなく、日常の一部として使いたい人に来てほしい」といいます。都会の暮らしに疲れたなと思ったときにふらっと来れる場所。「ゲストハウス マルヤ」にはもうひとつの日常があり、「あぁよく来たね!」じゃなく「今日はこっちなの?おかえりなさい」という会話のあるゲストハウスに。ほしい暮らしは自分の手でつくりたいというあなたのお越しを待っています。

(Writer 植田 翔子)

ゲストハウス guest house MARUYA
静岡県熱海市銀座町7-8-1F
URL http://guesthouse-maruya.jp/
運営 株式会社machimori