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フレディヴィンテージインタビュー (Disc誌 74年10月5日号)


Queen Are Back! 


(※写真キャプション)「僕たちは並で普通のロックバンドじゃない。相当変わってる」「特にこの国のマスコミには、あっという間に成功したバンドを強く意識し、反発しがちな人たちがいる」「僕らは今の時代の平均的なグループよりいろいろなことをうまくやれる」

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クイーンのフレディ・マーキュリーが話をしようと決めると、彼は大変多弁で、こちらが思わず信じてしまうような話し方をする。上の三つの発言(※写真キャプション)はどれも自慢げだったりやうぬぼれた調子ではなかった。マーキュリーからだとなぜだか普通に聞こえるのである。

私たちが会った目的は11月に発売予定だが今もレコーディング中のクイーンの新アルバム "Sheer Heart Attack"  についてのディスカッションだった。しかし、マーキュリーをひとつの話題に縛りつけておこうとするのは不可能に近い。

まずはアルバムだ。この2,3週間、クイーンはトライデントスタジオにほぼ閉じこもって新アルバムに最後の仕上げを(?)している。自信をもって予想できるがこのアルバムは大当たりするだろう。確信の根拠は私が聞いた完成済みの5曲だ。

「新アルバムはバラエティがずっと豊かという意味で過去の2枚とはずいぶん違ったものになる。全14曲ぐらいで、ヘビーロックからそれ以外のあらゆるものまでの両極をカバーしている。より多くの楽器とハーモニーテクニックを使った。まだ作業中で毎日何か新たな進化がある」とフレディは言った。

違ったもの、確かにそのとおり。非常にバラエティに富み、テクニックはとても新しい。私が最初に聞いた曲は “Flick of the Wrist” で、いい感じにロックするがこれまでのクイーンがやってきたどんなものとも違う。ニューシングル候補か? 次は「リロイ・ブラウン」。実に実に粋で、30年代のサウンドに70年代の(80年代かも)感覚が一体となったプラスされたプロデュースが見事。この曲のハーモニーもほかに聞いた曲すべてと同じく素晴らしかった。 “Stone Cold Crazy”  はクイーン名義で書かれた初の曲で、このアルバムに使うとよいのではとバンドは考えた。完全なハードロックで、私は危うく足をすくわれるところだった。ドラマーのロジャー・テイラーは “Tin (※おそらくTeen の誤り)Dreams” と仮題のついている曲を提供した。ややスローで素敵なビートルズのホワイトアルバム収録曲タイプ、それはつまり絶対良いということだ。最後に聞いたのが「キラー・クイーン」、強力なボーカルと見事なアレンジでずば抜けて素晴らしかった。

14曲

シングルの曲を選ぶとなるとクイーンは苦労するだろう。私が最初に思ったのは「キラー・クイーン」でおそらく “Flick of the Wrist” とカップリング、飛び抜けていい2曲だからだ。何しろ私は帰り道ずっと 「キラー・クイーン」 をハミングしていたのだ。しかし、翌朝まだ心に鮮やかに残っていたのは、シングル向きではないと却下していた「リロイ・ブラウン」だった。やれやれ、自分の問題ではなくてよかった。

あなたが先ほど読んだことを信じなかったかもしれないので念のため。そう、 “Sheer Heart Atttack” は14曲入りで、1枚組のアルバムである。私が聞いたものでは最も長い曲でもせいぜい3分ほど。

「アルバムで一番長い曲は4分ぐらいになるだろう。でも僕の曲はほとんど2分か2分半」とマーキュリーは私に言った。「単にそれが僕たちの曲の書き方だった。僕は曲の中で前作のような大がかりで派手なことはやりたくなかった。”The  March of the Black Queen" はとにかく長かった。今回は全体的に変化に富んだ感じにしつつ、きびきびしたハッピーな作品にしたかっんだ」

「金額に見合う価値を提供したい。全8曲にもできたけど今回はそうしたくなかった。楽しく面白いアルバムでもあるよ。一曲一曲全然違う ― いわば僕たちの才能をお見せするやり方だね。僕たちにはわかってもらいたいことがある。クイーンはただハードでベーシックなロックバンドとは思われたくないので。だってそれ以上のことができるのだから。ハードロックは僕らができることのうちのせいぜい10%。すごいうぬぼれみたいに聞こえるよね?」

「『輝ける七つの海』で僕たちは成功の方式を見つけ出した。グループにとって最良なのはその流れで作品を量産すること。そうすればうまくいくだろうから。でもそれをやるのは好きじゃない。結局は自分たちが満足できるかどうかだ」

「いろいろ違ったことをやりたい。もちろん時にはうまくいかず挫折するが、挑戦はする。僕たちは今の時代の平均的なグループよりいろいろなことをうまくやれる。単にそれが僕たちのあり方というだけ。僕たちは個性的な4人で、それぞれが提供する異なるものが融合する」

このアルバムは “Queen”  “Queen Ⅱ”と全く違ったものではあるが、バンドのトレードマークはみんなに分かるだろうとフレディは自信を持っている。「僕たちが通る次の段階になるね。僕たちは並で普通のロックバンドじゃない。相当変わっている。人が一番予想しないことをやる。予想されていないからやるのではなく、単にそういう段階だからだ」

ファンはバンドの変化についていくだろうか?「世間が求めるものより、自分たちが正しいと考えるものを出すほうが大事だと僕たちは思っている。現在の音楽界には聴き手に何か違うものを提供できる余地がものすごくある。そしてオリジナルで違った何かを待ち望んでいる人たちがいる」

「新アルバムはとてもバラエティに富んでいるのでより幅広い人たちが聞いてくれると思うけど、今いる聞き手も失いたくはない。このアルバムはこれまでとは違っていても、初期からの自分たちの特徴は保つよう気を付けてきた。僕はただ、クイーンはハードロックでは終わらないとみんなにわかってほしいんだ」

プレス声明

そこから話はマスコミの紳士たちのことになり、Mr.マーキュリーから多くの批判的な意見を引き出した。「クイーンがやっているのはロックのコピーだけで、できるのは1種類のスタイルだけと思っている人が中にはいる。それはクソ。そういう考え方のすごく偏狭な特定のジャーナリストたちを気の毒に思う。アルバムを一回聞くとかギグに一度行くとかより、少し深く掘り下げてこのバンドがどんなものかちょっと調べればいいだけなのに」

「この国でのセカンドアルバムのレビューは、悪いものの方が良いものより多かった。でもアルバムチャートで3位に入って、世間は必ずしもマスコミが言うことをあてにしていないと証明している。僕が思うに、結局音楽自体がすべてを語るんだ」

「なぜあのアルバムの評価が低かったのかわからない。もしかすると、特にこの国のマスコミには、あっという間に成功したバンドを強く意識し反発しがちな人たちがいるのかもしれない。彼らは、新人バンドは自分たちの手の届く範囲内で、自分たちの条件でのみ成功でき、その基準は超えないと考えたがる。クイーンは自らのゴールを超えたと僕は思う。僕たちは彼らが対応できないような先へと進んだ。それが起きている時彼らはついてこなかったんだ」

「君は “Queen Ⅱ” のレビューのいくつかを見ただろう。『このグループは全く好みではない。とかなんとか』みたいな。あんなのはアルバムを評価するやり方じゃない。フェアな批判なら我慢できる、でも僕は誰かがアルバムをきちんと聴き、すべきことをしてくれたと感じたいんだ。ただ『グラムロック、クズ』と言ってすべてひとまとめにし、状況に乗って儲けているだけだと言うなら、僕はそんなの忘れろと言う」

感情が爆発した後、話題は再び新アルバムと、病気のトリプルダメージから回復したばかりのリードギタリスト、ブライアン・メイのことに戻った。すべての始まりは昨年のクイーンのオーストラリアツアー出発前、必要な天然痘の予防接種を腕に打った時だった。注射はブライアンには逆効果で手足にひどい痛みが出た。それが癒えた頃バンドはアメリカへと発ったがまた新たな挫折を味わう ー ブライアンが肝炎で倒れたのだ。再び回復したところで今度は潰瘍だった。

マーキュリーは同情して言った。「かわいそうに、あいつはたくさんつらい目に遭った。でも彼が病気だった時もレコーディングは彼抜きで続けなきゃならなかった。今はまたよくなっている。すっかり別人だ。健康を取り戻し、ちゃんと食べている。僕たちも今後はもっと気を付けないといけないな」

大量の仕事

「ブライアンが体調を崩していた時に残りの僕たちはそれぞれの分をレコーディングしていたので彼の分が残っていて、彼は今猛烈に頑張っている。いや、実際は僕たち全員だ。間に合わせるべき期限があるしやることは山積み。全ての曲にものすごく集中しなければならないんだ」

クイーンはレコーディング時に制約は感じていない。「アルバムを作る時、スタジオでは本当やりたいことをやるのが僕たちの流儀。ステージの観点からの制約はかけないようにする。ライブで再現しなきゃならないのであれもこれも無理と言うことになるから。ステージアクトのための曲は十分にある。ステージで再現できない曲はいくつかあるし、そうしたいとも思わない。自分たちの別サイドみたいなものだよ、アルバムでいえば」

“Sheer Heart Attack” はまた、クイーンのステージアクトを変えるだろう ― しかしそれについてフレディは多くを語らなかった。ステージでの動きが多くなり、曲がピアノ重視になったのでピアノの出番も増えるだろうとは言った。

「僕はステージでピアノを弾くが、四六時中弾いていたくはない。フロントマンだからね。でもピアノはいろいろ使えるしレパートリーが広がる。僕たちにステージアクトのアイデアは少々あるけど、ほとんどはその場で自然に出てくるもの。ステージアクトは純粋に楽しめるものであるべきという考えだ」

クイーンは11月に大規模なイギリスツアーをスタートする。メイの病気があったためツアーに出るのはずいぶん久しぶりだ。「ブライアンの病気は最悪のタイミングだったけど、すべては運命の一部で、長い目で見ればすべてうまく行くようになるとみんな言っている。僕もそう願う」とフレディはつぶやいた。

そして決意の表情で言った。「ツアーから離れて久しいので全員戻りたくてたまらなくなっている。今はすべてのエネルギーをアルバムに注いでいるが、別の部門でもはじけたい。つまりステージだ。ものすごく強力になって戻るよ。それは確実に言える。きっと大したものになるよ。ステージに立つのが待ちきれないね!」

「バンドがまあまあうまくやると、ギグが終わった時に観客が熱狂するという場所がこちらには少しあって、なぜギグの間にそうしてくれなかったと思うんだよね。アメリカだとバンドにそれをすぐ示してくれる。気に入ってもらえたら観客はそこら中で即参加してくれるんだ」

「イギリスの観客も進歩するだろう。学んでくれるよ」

ハリー・ドハティ Harry Doherty

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