20190417ラトケ4

10万人に1人の難病と闘う男の話⑤コンバース靴ひも卒業式編

年末から続く頭痛の原因が10万人に1人の脳腫瘍(ラトケ嚢胞)によるものだということがわかり、血液検査をしたらアウトな値で即入院。1週間検査入院をし、難病申請し、手術をしたところまでが前回のお話でした。今回はその続きです。

2月1日(金)

かなり量は減りましたが、手術の箇所付近からの血混じりの液体は相変わらずタラタラ喉に流れてきます。 随分もう口呼吸にもなれ、鼻が塞がっていてもご飯や飲み物も摂取できるようになってきました。

そして、手術明けの晩に、さっそくMRIを撮ってもらいましたが、見事に脳腫瘍(ラトケ嚢胞)は摘出されておりました。

【before】

【after】

やはり鼻から内視鏡を入れて、副鼻腔を削りながら下垂体に到着し、下垂体の後葉に切り口を入れてラトケ嚢胞の中に溜まった液体を抜くという、経鼻的腫瘍摘出術なだけあって、副鼻腔(写真の〇がついている左の方)のエグられ方は半端ないですけどね(笑)!こういうのも、時間をかけて少しずつ元に戻っていくものなのかしらね?

ということで、現在、1998年以降1300例しか見つかっていない脳腫瘍(ラトケ嚢胞)によって、男性ホルモンと成長ホルモンと副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、抗利尿ホルモンの5つのホルモンが自分では作れなかったRですが、ここからまた10日ほど検査入院をしてホルモンを調べていきます。 明日も朝から血を採りますので、その結果が楽しみです。 まだ早いとは思いつつ、期待してしまいます(笑) まぁ、あれだけ大変な手術しをしましたが、ホルモンが戻らなかった場合には、毎日薬を飲んで注射を打つ生活になります。 今は1つでも多くのホルモンが戻ってくるように、そして少しでも元通りの生活に戻れるように、祈るばかりです。

そうそう、僕自身もそうですが、僕の家族が毎日僕の身体が良くなるように祈ってくれているみたいです。 落ち込んだ時はその話を思い出して頑張るようにしています。 また、その話を聞いて、足を引っ張ることや、妬むことではなく、「祈る」というのは美しい行為だなと、改めてそう思いました。 僕も自分のためだけではなく、僕の知り合いの方々の人生がより幸せになるように心から祈っております。

2月2日(土)

(落語風)

病院にはね、パソコンがないんだよぉ。

午前中に検査して先生に診てもらうんだけどさ、午後から面会時間で友達とずっと話してるもんだから、パソコンにメールが来てるかどうかも、午前中の診断の結果もわかりゃしねぇ!

受信(受診)ばかりで、困ったもんだよ!

ガッハッハッハッ!

どうも、林家R平です。

はい、こんなことを考えるくらい正直暇なんですよ。 テレビを付けてもワイドショーはどれも同じようなことばかり言ってるし、バラエティーもあまり面白くないし、音楽は聴いているとなんだか悲しくなるからもう一切聴いてない(笑)人と話すのだけが楽しくて、午後の面会の時間を楽しみに過ごしています。 まぁ人と話すのが好きなんですよね。

入院のことをバンドのブログに公開しましたから、ありがたい事に毎日必ず誰かしら来てくれて1~2時間相手してくれます。 今日も午後0時から20時まで5組の見舞い客が来てくれました。 自分でも声かけておきながら、もう最後の方なんかヘットヘトでした。でも、やはり人と話していると気が紛れますね。 すっかり気持ちの落ち込みは無くなったと思っていたのですが、口呼吸で苦しくなるとふと現実に戻され、落ち込んでしまう自分がいるんで、誰かしらがいてくれると助かります。家族や友人、同僚、教え子に支えてもらってます、本当にありがたいです。

一人で夜になるとやっぱり「なんでこんなことになったのかなぁ~」とか考えちゃうんですよね。 だって、普通なりますか、10万人に1人の難病とか(笑)?ドッキリだったら良いのになぁ…。 すごい手術した後に「テッテレ~~」みたいな。 

早く退院して、自分の家の布団で寝たいですわ。とか言いつつ、入院生活もそこそこ楽しんでるんですけどね。 術後初(4日ぶり)の風呂にも入りました! 気持ち良い~~!

2月3日(日)

手術が遠い昔のことのように思える。 あんなに地獄のような手術だったのに…(厳密には地獄だったのは術後)。 1月29日(火)に手術して、今日は2月2日(日)、もう手術から5日経ったことになる。

昨日から、シャワーも解禁され、今日はこの後、鼻に刺さってた長いスポンジを引き抜いてもらう。 ずっとガーゼで鼻を蓋していたので見舞いに来てくださった方にも気付かれなかったと思うのだが、ずっと両鼻の奥にカンピョウみたいな「コンバースの靴ヒモ」みたいな長いスポンジが詰まっていて、お医者さんに聞いたところベスキチンという止血用のスポンジだそうだ。

この鼻の奥に詰められた「コンバースの靴ヒモ」を引き抜く行為を僕は「下垂体手術からの卒業(決して下垂体ばかりの手術ではないし、下垂体手術から卒業もしていない)」と呼んでいて、卒業すると経鼻的腫瘍摘出術の証でもある鼻のガーゼも取ることができる。 

そして、噂によると、これを抜いてもらった後に「かむ鼻」がメチャクチャに気持ちいいらしいのだ! 

それはそれは遠くの洗面所いるおばちゃん(卒業生)達から

「ブビビビビブビビブビブブビビビ~~…」

と豪快に鼻をかむ音の後に

「…あぁ…きっ、気ん持ちいぃ~~~~…っ!」

「…こ、こんなにも出ちゃって良いの?」

という喘ぎ声にも近いような声から伝わってきて、下垂体手術生としては卒業後のあのイベントだけが楽しみなのである。

ちなみに、我々、下垂体手術生のベッドの横のロッカーには「鼻かみ・鼻すすり禁止」と書かれたマグネットが貼られている。 

ところが、卒業式を前日に控えたRは失態を犯してしまう。

それは突然のことだった…

朝食中、食べ物が鼻のガーゼに付かないようにガーゼを外していたのだが…

「ブヘェ~クシュン!ブヘェ~クシュン!…」

クシャミが止まらない…

5回ほどしたところで、我に返り、ふと鏡を見ると、そこには芸人の「ほっしゃん。」が立っていた。

うわあぁぁ…!

…えらいこっちゃ…!

急いで、ナースコールをし、看護士を呼び、現状を伝えたところ、看護士さんは笑いを堪えつつ、人差し指で「コンバースの靴ヒモ」を鼻の中にギュッと押し戻してくれた。

本日の午後に行われる卒業式が楽しみだ。

2月4日(月)

無事、昨日「下垂体手術からの卒業」の儀式を終え、鼻からの「コンバースの靴ヒモ」みたいなものを引き抜いたRです。

担当医の先生がピンセットでスルスルスルスル~…と30cmくらいの「コンバースの靴ヒモ(正式名称はベスキチン)」を私の両鼻から一本ずつ引き抜いてくれたですが、これまた妙な気持ち良さがありました。 引き抜いた「コンバースの靴ヒモ」は血と鼻水でまみれており、一応写真も撮ったのですが少し刺激が強いので自重しておきます。 担当医の先生も写真を撮る僕に「重ならないように伸ばしますね」と優しく二本並べて置いてくれたのですが、お見せできなくて残念です。

いやぁ、鼻が通るだけで全然違いますね。 

①食べ物、飲み物が断然に美味しくなります(味覚が戻ります)。
②深く呼吸ができます(頭までスッキリしました)。
③苦しくないから夜眠れます。

おかげで昨日は術後初めて、睡眠薬無しで眠れました…と言いたかったが頭痛で眠れませんでした、ちくしょー!

でも、節分ということで恵方巻きも食べられたので良かったです。

福豆も食べられたしね!

もし、鼻が詰まったままだと、恵方巻きを食べている最中に、窒息して死に至る可能性もありましたからね。 いやぁ、鼻で呼吸ができるって幸せだなぁ。 そして、鼻で呼吸ができるだけでこんなに世界が変わるなんて。 改めて鼻の大切さに気づきました。

実は今回の脳腫瘍の件で、手術自体はうまくいきましたが、ホルモンの分泌自体がもどるかどうかはわからない為、落ち込んでいたRに父(元国語教師)がこんな言葉をかけてくれました。

「Rよ、【人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)】やぞ。」

この格言(故事成語)を聞いてすぐに分からないという方も、この話を聞けば思い出すのではないのでしょうか。

「老人の馬が逃げたところ、その馬が優れた別の馬を連れて帰ってきた。今度は老人の子供がその馬から落馬して足を折ったが、そのおかげで兵役を逃れて命が助かった。」という話です。

漢文の授業でこの話をやったと言う人も多いはず。

「世の中に起きる悪いことも良いことも予期できず、それに振り回されてはならない」という意味ですね。

目の前の悪いことばかりに振り回されてはいけないと、父は私に言ってくれたわけですね。

鼻、ありがたやぁ~…

もう君を二度と「手放(てばな)」さないぜ。

おあとが宜しいようで。

ではでは、市川R蔵でした。

…えっ、ダメ? 全然、うまくないって?

そういうときもありますよ、ではでは。

ここまで読んでいただきありがとうございました。無料ですが、良いと思っていただければ、「スキ」、コメント、投げ銭をお願いいたします。

最後はいつもの私が歌っている(元気だった頃の)動画をどうぞ!


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