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6月じゃん

マジで言ってる?早すぎる。

(五七五)


今の家に引っ越してから1ヶ月とすこし経った。

環境を変えようと張り切って捨てたり買ったりしたおかげで、歴代の部屋では一番の仕上がりだし、今のところは散らかすことなくまずまずの状態を保っている。

そんなこんなで我が家に愛着が湧いてきたこの頃、宅配で荷物が届いた。

先日オモコロストアで匿名ラジオCD〜炎の章〜を購入したのでそれかなと思っていたら、受け取った箱がやけにでかい。なんなら某ファッション通販サイトのロゴがでかでかと箱にプリントされている。

洋服は好きでよく購入するが、ここ最近でネットショッピングをした覚えはない。

宛名を確認したところ、どうやらこの部屋の前住人が購入したものらしかった。通販サイト上で住所変更を忘れていたのだろう。

うっかりさんめ。


そもそも覚えがないなら受け取るなよという話だが、その時はたまたま友人が家に来ており、間の悪いことに着替え中だった自分の代わりに出てもらったのだ。

ひとまず問い合わせ番号に電話をかけ、事情を説明して当日のうちに荷物を引き取ってもらえた。


ちなみに前住人だとすぐわかったのは、引っ越し当初ポストにその人宛ての郵便物が残っていたからだ。

管理会社の人が取りに来ると言っていたが一向に来る気配がなく預かったままになっていることを思い出して、それも出かけたついでに店舗へ行って渡してきた。


あとから知ったのですが、郵便物の場合は宛名の人物が転居済みであることを明記してポストに入れておけば郵便局側で対処してもらえるらしい。



翌日、インターホンの音で目が覚めた。


「アマゾンでーす」

はーいと返事をしてオートロックを解除する。だいたいの運送スタッフは部屋の前まで来るともう一度インターホンを押してくれるので、いつも対面はせずドア前に置いてもらうよう伝えている。

しかし、数分経っても呼び鈴は鳴らないし、廊下に人の気配もしない。

そういえば彼はアマゾンを名乗っていたが、よく考えたらここ数日Amazonで購入したものはないはずだ。(またか)

オートロックの呼び出し時に部屋番号を押し間違えたのだろうか。そのまま別の部屋へ荷物を届けに行ったのかもしれない。寝起きの朦朧とした意識の中でそんなことを思いながら、布団に戻って二度寝を決めこんだ。


一度起きて眠りが浅くなったせいか、そのあとはめちゃくちゃな悪夢を見た。(ワンルームの部屋で8匹ほどの子猫を保護する、古舘伊知郎似の記者だかアナウンサーだかが取材と称してドアを開けようとする、たいして接点もないクラスの明るい集団が家に押しかけてくるなど)

夢うつつでうとうとしていると、またインターホンが鳴った。

今度はクロネコだ。ゆうべ発送通知メールが来ていたから、今度こそ自分の荷物が届いたようだ。

オートロックを解除し、寝起きまるだしの声で「置いといてください」と伝える。足音が離れたのを確認してドアを開けるとそこには、

小さい箱 and 小さいクッション封筒 on でっかい箱。


?????


小さい箱の伝票にはバーグハンバーグバーグとある。これは間違いなく自分宛ての匿名ラジオCDだ。やったぜ。

小さい封筒(クロネコ)とでっかい箱(Amazon)は、またしても前住人宛てだった。


お前……全ての通販サイトで住所変更してへんかったんか………。


ここまで来るとうっかりミスとかのレベルじゃない。ていうかこの1ヶ月近く何もなかったじゃん。急にそんな買い物する?忙しかったのかな?

自分も自分だ。対面で受け取っていればその場で気付けたし、なんならAmazonに関してはオートロックの対応時に正常な判断ができていれば未然に防げたはずだ。

なんなんだ「他の部屋と間違えたのかな?」って。登場人物全員ポンコツか?クロネコの方は同じ住所に別の宛名でそれぞれ届いてて片方は正しいというのもなんかややこしい。

三度寝したいところをぐっとこらえてまずはクロネコに電話し、引き取りに来てもらう。でかい箱の方はAmazonのカスタマーサービスに連絡。もう喋るのがめんどうなのでチャットを使ってみた。

伝票の番号を伝え、確認してもらうと「そちらの商品は破棄してください」「住所変更するようお伝えします」との返答が来て驚いた。いいの?

詳しくは聞いてないが、置き配で盗難などがあった場合同じ商品を送り直してくれるらしいので、今回もそのような対応なのだろう。すげ〜。


さて、破棄しろと言われたものの、他人が買ったものを勝手に開封するのはすこし気が引ける。

大きさの割に軽い箱には「食玩」と書いたシールがついていた。かさかさと緩衝材のような音もするし、グッズ付きのお菓子などをダースで買ったのだろうか。そうすると前住人はオタクか?

一連の騒動を見守っていたフォロワーからも「開けようぜ」と促され始める。まあ開封しないことには破棄することもできないか…。

梱包を解いて段ボールを開くと、中に入っていたのは、隙間なくびっちりと並べられた20袋もの「おにぎりせんべい」だった。


おにぎりせんべい。

関西人なら誰もが知っている、おにぎりを模した三角形の醤油せんべいだ。甘じょっぱい醤油味に、刻み海苔の風味。一枚一枚は小ぶりだが、ぱりぱりザクザクした食感も楽しく、気軽に1袋空けてしまうタイプのやつ。

そんな西日本定番のおやつ(通称おにせん)が見事に整列した状態で箱詰めされている。

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マジ?

よく見ると段ボールにも堂々と「マスヤ おにぎりせんべい」と書いてある。いや、「せんべい」ぐらいは見えていたが、本当にせんべいが入ってると思わなかったのだ。


前住人はいったいどんな気持ちでおにぎりせんべい20袋を購入したのだろう。1日1袋ずつ食べるのだろうか。毎日食べても飽きないくらい大好きなのか。それが入れ替わりで同じ部屋に移り住んだ赤の他人の手に渡ったと知ったら。

自分だったらどう思うだろう。恥ずかしいと感じるのか、それともおにせんを布教したつもりで潔く受け入れるのか…。

一方的に名前を知っているだけの前住人が、急に愛おしく思えてきた。

二日間に渡って関係ない荷物が届いたことも、それに関する問い合わせや引き取りにかかった手間も、今はまったく気にならない。

前住人の元へおにぎりせんべいが無事届けられるよう願うばかりだ。


これを読んでいるよい子のみんなは、引っ越しをしたらあらゆる通販サイトの住所変更を確認・郵便局には転送届を出すんだぞ。

だんごママとの約束だ。


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おいしく食べました。


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