レオがハナを連れ大沢集落に来てから、セイばあちゃんはとっても明るくなったような気がするわ。世間知らずな孫を慈しむように、一緒に料理をしたり畑仕事をしている姿は、生き生きとして見ていてもホッとする。やっぱり、話相手がいるって凄い。最初にあった時こそ、どうなることかと思っていたけど流石、レオが見込んで連れてきた人間だわ。思った以上に日々、成長しているのが分かり何とかなりそうだな気がして来た。二人で梅の話をしていたようだけど「実のなる木は花から知れる」ってことわざもあるくらいだから。えっ、そんな言葉は知らないって。いい言葉は、しっかり覚えて欲しいものだわ。
　ハナが話し相手になってくれるから、私もレオと今後の相談がし易くて本当、ハナには感謝してるわ。大沢集落を人も猫も暮らしやすい場所にする、そのための次の一手はもう打っているの。猫は一人が好きだなんて人間は勝手に思っているけど、猫だってたった一人では生きていけない。誰かと寄り添い温もりがなかったら、淋しくて死んでしまうわ。仮想世界は嫌いな現実から目を背けられるけど、温かいご飯も冷たい水もくれないから餓死してしまうわ。さあ、ハナを美味しい実にするには、どうしたらいいかしら。そうね先ずは、この大沢集落のことをもっと知ってもらわなくちゃ。みっちゃん家を借りてはいるけど、玄関横の四畳半以外、自分の住んでいる家の中すらまだ、見ていないのだから。ハナはまだ、本当の意味で生きてはいないのかも知れない。まぁ、最近はそんな人間の方が多いのかも、だから見えない物より”お金”を追い求めてしまうのかしら、淋しい世の中になったわね・・・