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木下慎之輔という爆撃機。進化するセレッソ大阪U-18の攻撃サッカー。

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世の中における大型連休はエンタメ業界にとっては繁忙期を意味し、その業界に紐づく仕事をしている人間も同様に仕事に追われる。2日と6日を休めば最大10連休が完成する今回のGWでも、サッカーの試合を取材に行かないのはわずか1日だけで、その他は毎日現場を回ることになっている。これを書いている日はちょう終盤に入ったあたりだ。

その取材行脚のスタートが関西取材で、中学〜高校〜大学と視察をしたのだが、最大の目玉が中日のプレミアWEST、セレッソ大阪U-18の試合だった。

風間八宏技術委員長のもと、アカデミーの全カテゴリにメスを入れて“技術向上”に徹底的に力を入れている。U-18には風間が名古屋グランパスを率いていた際にコーチを務めた島岡健太氏が監督に就任し、その“イズム”を高校生達に浸透させる役割を担った。

体制が切り替わった昨年はそのサッカーに慣れるまでに時間を要し、マッチしない選手の退団もあった。しかし、じょじょにサッカースタイルが浸透して終盤にかけて大量得点で勝利する試合が増えていき、いわゆる"風間サッカー"らしさが体現されていたのである。

しかも、昨年は1,2年生主体のチームでプレミアを戦っていた。

「来年は強いぞ」と確信をもった上で迎えた今シーズンは、初戦こそ名古屋U-18に1-2で負けるも、その後は大量得点を重ね連勝を伸ばしていった。そして、自分が取材へ向かった5月1日には3連勝と好調の磐田が相手だったのが、この相手にどれだけらしさを出せるのかを楽しみにしていたものである。

異なる“プレッシャーの概念”

「相手がうまくつないでくるのはわかっていたので前から行こうと決めていた」

磐田・前田遼一監督が振り返るように、もうセレッソ大阪U-18が"ボールを大事に動かしてくる"のは周知の事実となっている。同時に、高い技術が備わっていることも。だから多くのチームは相手ボールの時間が長い前提で試合に臨むことが多い。この日の磐田もそうだった。

結果的に2トップのをはじめ前線の選手がかなりハードワークをしてパスコースの制限をする中、ビルドアップをひっかけてショートカウンターに転じる場面はいくつか見られた。しかし、セレッソ大阪U-18の島岡健太監督に言わせると「相手は全然来ていない」と。

ここの感覚の差は話していて興味深かったが、風間八宏氏もこういう話はよくしていた。相手が前線からプレスをかけているように見えても「あんなのは全くプレッシャーではない」と一刀両断されたことがかつてあった。

この試合を振り返ると、確かに磐田U-18の選手が凄まじい気迫で前にプレッシングをかけていったわけではなく、CBは持てる余裕も運ぶスキもあった。少なくともほぼボールを最終ラインで持っている中で、相手を怖がってゴールへ向かう意欲がやや薄れていたのは事実だったと思う。

そんな状況でやや攻めあぐねていたC大阪U-18だが、ワンチャンスをモノにする。敵陣左サイドで相手ボールを奪うと、ゴール前でパスを受けた木下慎之輔がニアに強烈な右足を突き刺した。2試合連続でハットトリックを決めている好調のストライカーらしく、技術と感覚の鋭さを示すゴールだった。

しかし、そこから間もなく自陣で詰まったところを相手に渡してしまい、磐田のストライカー伊藤猛志に沈められる。そこから徐々にC大阪U-18がチャンスを生み出すが、ゴールを割れずに前半を終えた。

磐田U-18のストライカー・伊藤猛志の得点感覚は魅力的


前半の序盤からC大阪U-18は相手守備陣の隙間に人が入ってボールを受け、ゴールへ向かう場面が増えてき決定機も散見された。後半に試合が動くことを確信させる流れだったが、そのとおりとなる。後半開始間もない48分に更良立輝が不意を突くロングシュートを放ち、磐田U-18のGK森脇真一がこれを弾いてCKへ。そのCKを更良が風を味方につけ直接決めて勝ち越しに成功した。

が、これで終わらないのが今のC大阪U-18である。

自陣のパスミスを奪われて招いたCKの崩れから再び伊藤にヘ頭で決められ追いつかれるも、その2分後に和田健士朗のフィードに抜け出した木下がDFを見事な切り返しで交わしてGK頭上を抜くシュートを決めC大阪U-18が再び勝ち越す。これが決勝点となり、3-2でC大阪U-18が3連勝を収めた。

木下の切り返し→フィニッシュは見事


木下慎之輔という存在の大きさ

ボールを大事にするチームにおいて最大のネックはゴール前で“仕留められる
”選手の有無である。ゴール前まで運べる技術があっても、決められる選手がいなければ良さも半減する。川崎フロンターレが黄金期を築いている中で年間20点近くを見込めるストライカーがいなかった時代があっただろうか? と問えばわかりやすいだろうか。

強いチームには点を取れるFWがいる、というのが鉄則でもある。今のC大阪U-18にはこの日2ゴールを挙げた木下がいるが、彼がまさにチームを勝たせるストライカーだ。前への推進力とパワー、そしてシュートの振りの速さと枠を射抜く力は世代でも突出しているように思う。

自分は彼を中学時代に発見しその力強さに衝撃を受けたのだが、高校ラストイヤーとなった今でもその良さを崩さずチームに存分に還元している姿を見ると、素直に嬉しい。

そして、ダイナミックさだけでここまで来たわけではないことが試合後に彼と話していてわかったのも収穫だった。C大阪のアカデミーとして大事にしている“止める・蹴る“の技術を徹底したことによって「あんまりプレッシャーとかを怖がらずに見れるようになって、余裕が生まれた」という。

強さと速さを備えていた選手が技術をつけることによって、更に怖さが生まれてくる。木下の躍動を見て、そう強く感じたものだ。

それでは、採点・寸評を。

採点・寸評


GK 21 春名竜聖(3年・セレッソ大阪西U-15)6.0
2失点も最後尾からのポゼッションや声掛け、セービングと総合力の高さを見せた。

DF 5 川合陽 (3年・セレッソ大阪西U-15)6.0
カバーリングと対人の強さを見せ、落ち着いたボール扱いを示すも、もっと攻撃の起点になれた。

DF 29 木村誠之輔(3年・セレッソ大阪西U-15)6.0
プレスにはまり同点弾献上の起点になるも、186cmの高さは攻撃時のセットプレーで驚異となった。

DF 39 白濱聡二郎(2年・セレッソ大阪西U-15)6.0
展開先に迷う場面はあれど、恐れず繋ぐ。後半には持ち出しも見せた。まだまだ伸びる。

MF 6 清水大翔 (2年・セレッソ大阪U-15)6.5
少ないタッチかつ正確なパスで前に渡し、敵陣で攻撃のスピードを出す。

MF 7 和田健士朗(2年・セレッソ大阪西U-15)6.5
正確なフィードで木下の3点目をアシスト。攻撃参加も際立った。

MF 12 皿良立輝(2年・セレッソ大阪U-15)6.5
密集地帯でも受けて、出して、中に潜る。勝ち越し弾のCKは風を味方にした。

MF 16 伊藤翼 (3年・セレッソ大阪西U-15)6.5
大きくは目立たないが、受ける・外す・渡すなど攻撃に求められる質の高さを示し続けた。

FW 9 金本毅騎 (3年・インテルナシオナルジャパン)6.0
木下との2トップは怖さがあり、ボックス内での迫力を魅せるも結実せず。40分の場面は決めたかった。

FW 11 木下慎之輔(3年・セレッソ大阪西U-15)7.5☆MO
ゴール前の力強さと射抜く力は突出している。3試合連続ハットトリックはならずも、チームを勝利に導く2ゴール。

FW 19 末谷誓梧(3年・セレッソ大阪西U-15)7.0
左サイドでの仕掛け、前方へ鋭く潜っていくドリブルは驚異だった。木下との阿吽の呼吸で見せるスペースの明け渡しも見ていて気持ち良い。


■SUB
MF 8 エレハク 有夢路(1年・東急SレイエスFC U-15)5.5
ボールの収まりが悪く、持ち味の球出しの場面がほぼなし。試合に入れなかったか。

MF 13 木實 快斗(1年・ソレッソ熊本)6.5
緊張感ある展開で中盤の底に入るも、自信ある技術を前には関係ない。長短のパスの出し入れで攻撃にリズムを作った。

FW 20 山田 光太郎(1年・F.C. DIVINE)-
時間短く、評価なし

GK 21 森脇真一(3年・セレッソ大阪 和歌山U-15)5.0
“古巣”相手に気持ちが入り好セーブを連発するも3失点。2失点目のCKは防ぎたかった。

DF 3 塚田夏輝(3年・FCV可児)5.0
強烈な2トップと中央に入ってくる中盤の選手を前にスペースを埋めて対応しきれず。裏を複数回取られた。

DF 22 竹村俊(2年・ジュビロ磐田U-15)6.0
184cmとサイズがありながら推進力も備える。効果的な攻め上がりでチャンスを作った。

DF 23 沼田大輝(2年・TSV1973四日市 U-15)5.0
ゴールへ向かう鋭さがある木下に苦戦。3失点目はポジショニングと処理で後手を取り、最後もかわされた。

DF 25 伊藤稜介(2年・ジュビロ磐田U-15)5.5
積極的に前に出て攻撃参加をし配球力とゴールへの意欲を見せるが、決定打は出せず。守備では内側に入る皿良に苦戦。

MF 8 亀谷暁哉(3年・東海スポーツ)6.0
パスミスで先制点献上に絡むも、精度の高い両足のフィードと配給力が光った。伊藤の同点ゴールを呼んだ左足のクロスは見事。

MF 12 竹田優星(2年・ジュビロ磐田U-15)6.0
前への推進力とスピードある突破で積極果敢に縦へパワーを出し、怖さを出した。

MF 14 野口来夢(3年・長岡ジュニアユース)5.5
ボールを持たれる展開で積極的に中盤の蓋を締めに動くも、オンザボールで良さを出せる時間はなかった。

MF 18 細石真之介(3年・ディアブロッサ高田U-15)5.5
受け手に回る状況でもエンジンが切れず、攻撃時には内側へ入って果敢にゴールを狙った。

FW 9 伊藤猛志(3年・ジュビロ磐田U-15)6.5
ショートカウンターの終点と、クロスからの豪快なヘディングで2得点。ボックス内での嗅覚を見せつけた。

FW 11 原田輝(3年・ジュビロ磐田U-15)5.5
8分に迎えた決定機を決めていれば戦況は変わったかもしれない。脳震盪で前半途中に交代。

DF 2 李京樹(2年・FC多摩)-
時間短く、評価なし

MF 15 中村駿太(2年・ジュビロ磐田U-15)-
時間短く、評価なし

MF 17 後藤啓介(2年・ジュビロ磐田U-15)6.0
アクシデントによる前半途中での出場。シュートこそなかったが機動力を生かしたプレスやボール扱いの技術を随所で見せた。

MF 19 鈴木泰都(2年・ジュビロ磐田U-15)-
時間短く、評価なし


MOM 木下慎之輔(セレッソ大阪U-18)


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