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コーチングの効果って?投資対効果は?

前回の「市場規模やトレンド、マクロ的観点から見るコーチング」に続いて第2部では、コーチングの効果やコーチングの定量的研究がどこまで進んでいるかを確認していきたいと思います。僕が起業するにあたってのバックデータやコーチングをするにあたって大事にしたい観点なので、ちょっと長いかもしれませんが丁寧に記載したのでお付き合いください🙇

👇前回の記事

📝この記事でわかること
 ・コーチングの効果について
 ・コーチングの投資対効果について
👫想定読者
 ・コーチング事業の成長可能性に興味がある人
 ・コーチングを知らないけど興味ある人
 ・コーチングを受けてみたいけど、踏み切れない人

コーチングと聞くとどのような印象を持ちますか?
「怪しい」「スピリチュアル」「うさんくさい」のようなネガティブな印象を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、以前はコーチングの効果が目に見えないことも一因でネットワークビジネス化していたのも事実なようです。僕も個人的には同じような印象を持っていた側の人でした。(厳密にいうと、怪しい等の印象ではなく、よく分からないので近づかないようにしていたという方が正しいかもしれません)

そこで、コーチングはどのような効果があるのか、主観的な評価ではなく、エビデンスベイストに説明している記事や論文を参照していきたいと思います。


コーチングの投資対効果①(論文)

まずは、このようなエビデンスベイストな研究を確認するには海外の論文を確認するのが一番です。2001年と少し古いのですが、こちら「Maximizing the Impact of Executive Coaching:Behavioral Change, Organizational Outcomes, and Return on Investment」を引用し、内容について解説していきます。

はじめに

エグゼクティブ・コーチングというのはリーダーシップ開発の手法として最も広く使われていますが、エグゼクティブ・コーチングの効果に関する実証的な研究が少なく、この分野が推測や主観的な意見に開かれているから定着していないということで、行動変容、組織の成果、投資対効果の観点から明らかにしていくことを目的としています。

調査設計

 <参加者>
  ・1996年から2000年の間にコーチングを修了したエグゼクティブ100人
  ・男性66名、女性34名
  ・年齢層は30歳から59歳
  ・役職は50%が副社長以上

 <ステークホルダー>
  ・可能な限り、エグゼクティブの直属の上司や、コーチングの体験を
   観察し、その効果についてコメントできる人事担当者にも調査を実施

 <コーチングプロセス>
  ・プログラムは各自のニーズに合わせてカスタマイズした
  ・ コーチは通常、博士号またはMBAを取得し、組織開発の実務家または
   ラインマネージャーとして少なくとも20年の経験を持つ者
  ・全員がエグゼクティブ・コーチングの実践における評価と介入の原則
   に焦点を当てた標準的な内部研修プログラムを修了していた
  ・コーチングプログラムの期間は、通常6ヶ月から12ヶ月間
  ・コーチングセッションの具体的な内容を保護するため、守秘義務を
   規定し、関係者に目標と進捗状況を報告した

<インタビュー>
  ・インタビューは2名の独立した契約社員が採用され、研修を受けた
  ・25分から45分の電話インタビューで、エグゼクティブは、
   コーチングプロセス全体に対する満足度を評価した
  ・コーチングの目標、目標の達成度、新たに取り入れた行動、
   現在のコーチングの頻度、コーチングを受けた理由を活用し、
   コーチングプログラムの効果や非効果の要因を特定した
  ・コーチングの文脈を理解するために、コーチング以外の要因について
   も言及し、コーチングによってもたらされたビジネス上の成果の
   年間推定金額についても言及した
  ・コーチング・プログラムから得られた無形の利益を特定した

✏️単純に利益額だけではなく、無形の利益やコーチング以外の要因についてもインタビューで確認するあたりが、この論文として面白いポイントかなと思います。

投資収益率

 <前提>
  ・参加者はコーチングによるビジネスインパクトを定量化し見積った
  ・参加者は見積り後に、その見積りに対する信頼度(率)を算出した
  ・コーチングの効果を分離するために、ROIの推定値にエグゼクティブ
   がコーチングに起因するとした改善度の割合を算出した

  ▶︎
推計の潜在的な誤差を調整するため、参加者が算出した
    ビジネスインパクトに信頼度と改善度を乗じた

  ・当初の ROI の見積もりは 4 回調整され、この「保守的な ROI」が
   指標として用いられた。この保守的なアプローチにより、
   データの信頼性が最大化された(Phillips, 1997)。

具体例

あるシニアマネジャーは、対人関係スキルとプロジェクト管理スキルの向上に取り組んでいますが、自分の行動の改善の50%はコーチングプログラムによるものだと考えています。残りの50%は、このプロセスに対する自分のコミットメントに起因するものだと考えています。彼女はこの見積もりに100%の自信を持ちました。したがって、215,000ドルに50%(コーチングへの帰属)、100%(帰属への確信)、90%(ROI推定への確信)を掛けると、96,750ドルという保守的ROIになります。コーチングプログラムの費用が$15,000であったため、ROIの計算式に当てはめました。
したがって、この経営者の会社は、コーチングによって投資額の5.45倍の利益を得たことになる。

つまり、この場合は投資対効果としては、5.45倍なのを理解できます。
なお、ROI をドル建てで推定することができた経営者は43 名とのことで、43名は平均で10万ドル、つまりコーチングへの投資の5.7倍の効果を実感していました。
別の論文では財務的な投資対効果だけで議論するのは危険でっせ、という内容もあり本当はこちらも解説したかったのですが分量が多くなってきたのでまた次回。)

有形/無形のビジネスインパクト

一方で、コーチングをしたことによる効果をアンケートやインタビューによって評価したものでいうと以下がコーチング前後で高まったと回答がありました。
1位:生産性(53%)
2位:品質(48%)
2位:組織の強さ(48%)
3位:顧客サービス(39%)

また、無形なビジネスインパクトで言うと以下が挙げられました。
1位:関係性の改善(報告先)(77%)
2位:関係性の改善(ステークホルダー)(71%)
3位:チームワークの向上(67%)

ここまでの内容から、コーチングの投資対効果の「効果」を一般化した上で定量化するかというところが難しいのかもしれませんが(今回で言うとエグゼクティブがビジネスインパクトを定量化し見積ったというところです)、コーチングを導入することでどのような要素にインパクトをもたらすのかというところは見えてきたのではないでしょうか。

コーチングの投資対効果②(大手デジタルコーチング会社のブログ)

BetterUPとは?

次に米国大手のデジタルコーチング提供会社のブログになりますが、皆さんはBetterUPというデジタルコーチングの会社はご存知でしょうか?2021年の10月時点で47億ドル(約6,000億円)の時価総額のユニコーン スタートアップ企業です。同社のScience Boardは、Martin Seligman、Adam Grant等のポジティブ心理学とヒューマンパフォーマンスの分野における主要な研究者で構成されているため商業的側面だけでなく、学術側面からも事業を評価していることが伺えます。

コーチング前後でのKPI変化

BetterUPを導入したお客様からは以下のような報告がありました。

  • 営業チームのノルマ達成率が60%向上

  • 戦略的プランニング能力が 16% 向上し、チームの成功をサポートする能力が高まった

  • 他人を動かす能力が40%、自己効力感が29%向上し、チームメンバーがよりレジリエンスとエンゲージメントを高める。

  • ストレスマネジメントが39%向上し、生産性の向上と 燃え尽き症候群の減少につながりました。

BetterUPのコーチングROIの考え方

BetterUpでは行動科学の最良の指標を活用し、最も重要な個人的・職業的変化を追跡する「ホールパーソンモデル」という評価ツールを開発しました。
これらの指標は、ハーバード大学、ペンシルバニア大学、スタンフォード大学、クレアモント大学など、行動変容の定量化に投資してきた多くの機関の数十年にわたる研究によって生み出されてきたものです。この指標を活用することにより、行動変容のさまざまな指標、タイプ、単位を測定するだけでなく、それらの変化を項目ごとに、以下3つのビジネス成果にマッピングすることができるようになりました。

  1. パフォーマンス

  2. 定着

  3. ウェルビーイング

事業会社によるブログのため、どのような評価方法でこれらを実現しているかの詳細は不明ですが、少なくとも論文に記載されているような財務的な投資対効果だけでなく、有形/無形のビジネスインパクトをコーチング前後で比較できるようにトラッキングすることで成果を見える化しているように思えます。

従来はこれらの指標を取ることが困難だった(ないしは非常にコストが高かった)と思いますが、現在はテクノロジーが発展し、低コストで各企業DX化が進んできているので、様々な指標とコーチングの相関を見出すことができるようになるかもしれません。

最後に

前回の記事「市場規模やトレンド、マクロ的観点から見るコーチング」の中でも、なぜ20数年前に導入されていたコーチングがそこまで普及していないのか。ということを言及していましたが、前回のコーチング自体の構造的な問題に加えて、今回取り上げた定量的な効果を謳うことを避けてきたからではないかと考えられます。
もちろん一部の企業においてはこれらに積極的に取り組まれてきたと思いますが、上記BetterUPのような学術的な観点からも評価できるレベルが求められるいるのかもしれません。

次回は3部作の最後、「そもそもコーチングって?具体的に何をするのか」ということをまとめていきたいと思います。

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またもや宣伝ですが、僕個人としてはコーチとしても活動を開始しています。第3部でお話しするようなコーチングってどんなものとかを含めて説明しますので、ご興味ある方は以下からお申し込みください。

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あ、当たり前ですが、サービスを売り込むことはしません(苦手です)
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