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「今から何をすべきかわからない」状態を生み出す作業環境と改善方法について

久保田です。ホワイトカラーの仕事では、様々なプロジェクトに関わる形(社内外問わず)は一般的かと思います。マルチタスクは非効率になるという説[*1]もありますが、なかなか避けられないものです。

様々なプロジェクトをスイッチする日々の中で、「今から何をすればいいのかわからない」という状態になったことはないでしょうか。

この記事では、組織として「今から何をすればいいのかわからない」という状態を回避するための工夫を考えます。

今から何をすればいいのかわからないは、なぜ問題か?

これはプロジェクトの速度に悪影響を及ぼすという観点で問題で、リーン開発の本質で記されているソフトウェア開発における7つのムダでも「タスク切り替えのムダ=コンテクストスイッチ」として示されています。

参考:ソフトウェア開発における7つのムダ
未完成な作業のムダ:99%完成していたとしても、それは意味を成さないし、放置することでさらなるムダを生み出す
余分な機能のムダ:今必要とされていない機能を作っても、何の価値も生み出さないし、システムは複雑になる
再学習のムダ:経験を伝えなければ、誰かがすでに踏んでいる地雷を、同じ人が二度踏む
引き継ぎのムダ:情報が100%欠落しない引き継ぎは存在しない。せっかくの知識は暗黙知となって消え去る。
タスク切り替えのムダ:未完成な作業のムダと再学習のムダを生み出す。
遅れのムダ:待ち時間が長いほど、タスク切り替えのムダを生み出すなどして、生産性が低下する。
欠陥のムダ:後になればなるほど、欠陥を取り除くコストは増える
リーン開発の本質より

その作業場に問題あり

自動車製造工場での仕事であれば、作業場にいけば、次に何をやれば良いのかが明確にわかるものですが、実は、プロジェクトの作業場に課題があるかもしれません。

トヨタ自動車では、見える化という概念があり、「全ての必要な情報を必要なときに目に見えるようにし、作業の進め方を理解できれば、効果的なコラボレーションと改善ができるようになる」という考えで実践され続けています。

作業場に、ジャストインタイムで情報を見える化するにはどうすべきでしょうか。

情報冷蔵庫でなくて、情報ラジエーターを使う

作業場にはJIRAやtrelloなどの電子ツールがあると思いますが、いちいちなかを開けて探さないといけない。と思った経験はないでしょうか?(補足:JIRAやtrelloが悪いわけではなく、運用者の問題です)

それは情報冷蔵庫とも言えます。つまり、「いちいちなかを開けて探さないといけない」状態です。

しかし、情報の冷蔵庫では不足で、見える化された仕事は、それをみている人たちに情報を放射(ラジエート)する必要があります。

情報が放射されて目に飛び込んでくる意味で、アジャイル界隈で情報ラジエーターと呼ばれています。(音響工学を研究していた私には超指向性スピーカーの方が嬉しいのですが、それを実現するAIはまだ登場していないので、ここでは情報ラジエーターについて記載します)

情報の冷蔵庫では、「誰が何をやっていて、チームが実際に何をやっているかわからない」から、情報ラジエーターを使う必要があります。

情報ラジエーター(Information Radiators)とは

あまり一般的な用語ではないので、私なりに定義を置いてみます。

「情報ラジエーター」とは、チームが目立つ場所に配置する手書き、描画、印刷、または電子ディスプレイの総称であり、すべてのチームメンバーと通行人が最新の情報を一目で確認できます。
実施中のタスク一覧、自動テストの数、速度、インシデントレポート、継続的インテグレーションのステータスなど、必要な情報を探索することなく手に入れることができます。
参考:https://www.agilealliance.org/glossary/information-radiators 

デジタルでの情報ラジエーター利用の難所

デジタルツールは、情報ラジエーターではなく情報冷蔵庫になる可能性があります。つまり、情報を隠してしまいます。情報の存在を知った上で、ドアを開けて探し回らないと見つけられない(場合によっては鍵も探すことになる)という問題が起きたら、デジタルツールの運用は失敗するでしょう。

工夫としては、リモートワーク環境では、ワンボタンで立ち上げられるようにディスプレイに待機させて置くなどがありそうです。(アナログ環境であれば、壁にプロジェクターで投影するなど、常に表示するなどがありますが、リモートワーク前提の時代ですと難しいですね)

情報ラジエーターを上手く運用する

何よりも必要な情報を必要なだけ整理して、表示する整理整頓が大切です。

タスク管理であれば、誰も興味がないようなタスクや何ヶ月も前のタスクは、メイン画面からは除外することが望ましいです。

必要でない情報が表示されるのは、脳エネルギーを消耗するだけのムダといえます。

すぐできることは、スプリント開発やスクラム開発のように、仕掛かり中&直近でしかかる予定のタスクのみを表示し、それ以外は、隠してしまうことです(現在仕掛かり中の情報を冷蔵庫にしまわないこと、仕掛かり中ではない情報と混ぜないことが大切です)。

指標表示であれば、引き継ぎのムダ、遅れのムダの状況や数値を表示して、ムダの対応漏れを減らすことが大事でしょう(指標表示は邪悪にもなれるので、何を表示するかは注意が必要です)。

*1. クラークとウィールライトのマルチタスク化の研究によると個人が3つ以上の作業を並行して進めると、価値を生み出す作業に使える時間が大幅に減少する
アジャイルな見積もりと計画づくりより

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