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虐げられた青春…BTSとGOT7の邂逅

H.O.Tを起源とするか、あるいはソテジワアイドゥルを起源とするかは別としても、EXOなどとも通底するナムジャアイドルの「型」として、「虐げられた少年たち」という表象が、若い女性ファンの支持根拠のひとつになっています。

EXOには、とくに萩尾望都の描く少年たちさながらの「出口のない苦しみ…それゆえの輝き」のようなものを感じて、息苦しくも、恍惚をすら感じるような美しさがありました。

BTSもまた、初期から虐げられた少年性を表現するグループであったものの、「バンタンスタイル」と自称し、爽快に世間を蹴っ飛ばす、的な屈折のなさが売りでした。しかし、昨年のI NEED Uから「耽美」的な、あるいは「沼」的な要素を前面に出して、さらなる飛躍を遂げています。

他方で、ちょっと間抜けだけど、優しいおにいちゃんたち、と、これも屈折、挫折とは無縁なピースフルな世界観を確立していたGOT7も、昨年のダークなイメージのIF YOU DOで初の音楽番組1位を獲得します。

直近のそれぞれの活動曲であるSAVE ME(BTS)と、FLY(GOT7)は、それぞれまったくファン層の違う(ように感じられる)2グループが、結果として非常に近いところに来ていることを、楽曲的にも感じられる点で、とても面白いです。

キーは違いますが、両者は、和声と旋律を相互に入れ替えられる関係にあるのです。

どちらもほぼ同じ和声を採用しているのですが、BTSの方がより胸を締め付けられるような苦しみ成分が強いのに対して、GOT7の方ややや爽やかさというか穏やかな中に悲しみや切なさが浮かび上がってくる、という感じ。近寄りながらも、両グループの違いが表れていて、なるほどな~と納得してしまいます。

ちょっとお遊びで、メロディーと和声を入れ替えてしまいましょう。

深い悲しみの溝に落ち込んでしまったGOT7という感じですね(涙)。GOT7はBTSのような「反発」「抵抗」のイメージが弱いだけに、なんともつらいです(泣)。

破滅的な感覚が弱まり、やや聴きやすくなる一方で、「お上品さ」を忌避するBTSにしてはパンチが弱いように感じられますね。個人的にはこのくらいの方が聴きやすいのですが、アーミー的にはちと物足りない、といったところでしょうか。

ちょっとしたお遊びですが、ここからそれぞれの戦略の違いが浮かび上がってきてとても面白いです。

ちなみに、FLYは少女時代のGEE、SAVE MEはOMGのCLOSERとも同じという不思議な関係性が成り立っているのも面白いところです。最後に、おまごる×BTSというお遊びを。

和声の分析については、それぞれの音源の中のメモをご覧頂ければと思いますが、いずれもある種の幻想性とか割り切れない思いのようなものを表現する構造になっていて、このあたりは今のK-POPのもつ雰囲気を表しているのかなあ、とも思います。その意味ではGEEは本当に先見の明のある曲だったのだなあ、とも思ったり…

…と、少し脱線してしまいましたが、こうした「耽美性」とか「虐げられたもの」「受苦者」といった表象が、男性アイドルのヒットの要件になっているのは間違いないようです(これは、もしかすると女性アイドルにおける「セクシーさ」などと近いものなのかもしれません)。註1


註1:だとすれば、一方で、屈託のない明るさを全面展開しているSEVENTEENの人気の秘訣はなんなのか、という問いもまた浮かんできますね。個人的にせぶちはSJなんじゃないか、と思ったりもするのですが、この点はいまのところ楽曲的には追えない感じがあるので、アイデアとして温めておくことにします。


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