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初めてのnote.自分だけの嬉しい時間

何だか嬉しい。
土曜日の午後、夫に子供たち二人を見てもらっている間、数時間のフリータイムをもらった。
何が嬉しいのかというと、自由時間を貰えたことは勿論なのだが、それ以上に心躍らされる状況を手に入れたのだった。

カフェで、アイスコーヒーを片手に、ノートパソコンを開いている。

お洒落だ。
とてつもなくお洒落だ。
よくネットで「意識高いアピール」だの、「数時間も居座られて邪魔」だの、「カフェは飲食する場所だ」だの、数えきれない批判は
飽きるほど見てきた。
なので、

「混んでいない」
「長居しない」
「ちゃんとそれなりに注文する」

という自分なりの条件を整え、今日、挑戦するに至ったのだった。


「なんか、私もノートパソコン欲しいなぁ」

何の気なしに、リビングで私がつぶやいたこの言葉がことの発端だった。
自宅にパソコンが無いわけではない。
夫はオンラインゲームが趣味なので、自作のハイスペックPCが一台、同じくハイスペックのノートPCが一台、
さらには10年以上前に私が初めてのボーナスで買ったMacがあった。
確実に平均以上の台数のパソコンが我が家に存在していた。

それでも私がそう呟いてしまったのは、気軽に使えて、自分だけが所有するパソコンが欲しかったからだ。
デスクトップは、リビングの隅にある1畳分の夫の城に鎮座していて、マウスまでゲームに特化して訳わからないボタンが複数ついており、
もはやスクロール以外使用方法がわからない。
ノートPCは、3歳の息子のYouTube専用機兼家族の写真データバックアップ機と化していて、個人所有物として扱うには無理があった。
頼みの綱のMacは、さすがにもう調子が悪く、動作が虫の息である。

「夏のボーナスで買ってあげようか?」

私のつぶやきに、夫から意外な言葉が返ってきた。

「えっなんで?」
「だってれり、今回ボーナスないやろ?小遣いあげる代わりに、格安でよければ買ってあげるよ」

神か。
夫は神だったのだろうか。
確かに、私は4月に育児休暇から復帰したばかりで、査定期間を満たさなかったのでボーナス0。
なんという優しさ。
ナチュラルに徳を積んでる。
来世ではきっと大企業の社長…そう確信しながら私は夫の提案をありがたく受け入れたのだった。


そして二日前、その念願のパソコンが我が家に到着したのだ。
ボーナスがきちんと支給されたことを確認して、夫は即注文、次の日には爽やかな佐川のお兄さんが自宅に届けてくれた。
「パソコンもう届いたんだ!早いね!」
そんな私の言葉を普通にスルーし、夫は荷ほどきをし、あらゆる角度から観察し、ノートパソコンを吟味している。
そして、
「解体できないね、これ」
とつぶやいた。

え?私のノートパソコン解体されるの?

と、若干うろたえていると、そうではなかった。
夫はメーカーの設計の仕事をしており、機械にめっぽう強かった。
中の部品をいじって、部品の交換やら何やらで容量を拡張する等の改造が可能かどうか確かめていたのだ。
最終的に分解することもなく、自宅のWi-Fiに繋げた状態で引き渡してくれた。
疑ってごめん、夫よ。
来世は石油王だよ…。

そんなこんなで、満を持してノートパソコンを携えて、今日、カフェに乗り込んだのだ。
お気に入りのカフェが二駅隣にあったので、そこでノートパソコンデビューをすることにした。
ネットで情報を見ると、「Wi-Fiあり」とのこと。
完璧じゃないか。
口コミも確認すると、同じようにノートパソコンを開いている人も多いらしい。
やはり絶好のデビュースポットだ。
私はそう確信しながら、カフェへ入店した。
運よく壁際の席を確保し、壁に背を向ける形で着席した。
昼食用にバゲットとアイスコーヒーを注文する。
さすがに食べながらは操作しづらい。
お昼を摂りながら、スマホでWi-Fiを確認することにした。

おかしい。

ない。

店のWi-Fiがない。

画面に表示されるのは、個人が発していると思われるもの、隣接するほかの店のものばかり。もちろんすべて鍵はかかっている。
店の入り口にWi-Fi情報が書いてあって、見逃したのかもしれない。
お手拭きを取りに行くふりをして、入り口付近を見渡すが、それらしきものは何もなかった。
がっかりしてお手拭きを握りしめながら着席する。
念のため口コミをもう一度チェックしてみると、実は店にはWi-Fiがないことが分かった。
インターネットつなげないやん!!
心の中で膝をつくも、顔はポーカーフェイス。
ノーパソコン初心者だと悟られてはならない。いかにも、いつもカフェで意識高い感じで文字打ってますっていう印象でいかなければならない。
私の妙な自尊心が表情筋を引き締める。

仕方ない。
ここまで来て、ネットがつながらないからと言ってノートパソコンを開かない理由にはならない。
私はコーヒーを飲みつつ、心を落ち着かせてから、スッとノートパソコンをリュックから取り出した。
薄い。
なんてかっこいいフォルムなんだと口の端が震えるのを我慢し、静かにテーブルに置く。
電源ボタンを押すと、すっと画面が立ち上がった。
立ち上がるのに時間がかからないものを選んでくれたのも夫だ。ありがとう夫。

さて、立ち上げたはいいものの、やはりネットにはつながらない。

以前から書いた文章をnoteに投稿したいと考えていたので、とりあえず文章を打とうと思った。
プログラムからofficeを探し、クリックする。

「インターネットに未接続です」

ん?

もう一度開きなおすも、同じ文章が表示される。


っあー!!これofficeはいってなかったわ!!
しかも何かしらソフトダウンロードとかしようと思ってもネットつながってないわ!!
文章どこで打てばいいの?
何かのファイルの保存画面で、タイトル入力画面で文章打つしかないの?

ポーカーフェイスのまま固まる私。

ピカピカのノートPCが目の前にある。

しかし、ネットにつながらない。
文章をうつツールもない。

デスクトップに保存されているファイルを開けたり閉じたり、プロパティをのぞいてみたりしかできない。

宝の持ち腐れにもほどがあるだろう私。
豚に真珠とはよく言ったものだ。

そこで、ふと思い出した。
確かWindowsには「アクセサリ」という救世主的なプログラムが入っていなかっただろうか。
そしてそこにはいつも、あのプログラムが存在していなかっただろうか。

慌ててアクセサリを探し出し、その奥に発見した。


メモ帳ー!!!!

メモ帳!メモ帳!!!

私は心の中でガッツポーズをきめた。
もう、こんなに文章を打つのにぴったりなものはあるだろうか。
とてもシンプル。
とても使いやすい。

メモ帳を称賛する涙を胸の内で流しながら、今、この文章を書いている。
明日からもっとたくさん、文章を打ちたい。
ノートPCよ、ふがいない主人だが、これからよろしく頼みます。

1歳3歳男の子兄弟の母親です。夫婦共働き。日々思うことや出来事を活字メインでつづります。たまにイラストも載せます。 趣味は音楽、書道、読書、イラストと、広いようで狭い。 よろしくお願いします。