ホテルマーケットの速報分析(2020年11月)

新型コロナウイルス(Covid-19)感染の拡大により、各国政府が海外渡航の禁止や緊急事態を宣言する中で、不動産・REITセクターにおいても特にホテル・商業施設を中心に大きな影響を受けています。

本記事では、RESTARが提供する不動産・地理情報データプラットフォームREMETIS内のJ-REIT各社が開示する月次のホテル運営状況に関する情報を活用して、日本国内におけるホテルマーケットへの定量的な影響の分析を行ってみました。

2020年11月時点のホテルマーケット

日本政府は、2020年5月25日に緊急事態宣言を解除により、入国制限を緩和し、新型コロナウイルス感染の拡大により大きな損失を受けた経済の立て直しに着手しました。さらに、特に国内観光産業の疲弊が著しいことから、2020年7月22日より旅行・飲食・イベント等における需要喚起を目的とした経済政策であるGo Toキャンペーン事業を開始しました。例えば、Go Toトラベルでは、宿泊・交通費の35%を割引還付するだけでなく、さらに宿泊・交通費の15%は宿泊地周辺で利用可能なクーポンとして配布されました。

国内宿泊産業は、緊急事態宣言解除後Go Toキャンペーン事業の下で復調し、2020年11月には日本全国のJ-REITが保有するホテルの稼働率の平均値は、約69%まで回復しています。

画像1

客室1室あたりの売上(Revenue per available room: RevPAR)は、2020年4月に前年同月比でほぼ15%と、ホテル業界における平均的なコスト構造の中で賃料等管理費のみを賄える金額と同水準まで下落しました。しかし、RevPARは2020年11月には前年同月比で61%まで回復し、比較的固定的に発生する人件費や管理費を超える水準となっていますが、全体としては十分な利益を獲得するには至っていないと思われます。

画像2

比較的外国人の訪問者の比率が高くかつ新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかかっていない東京都や大阪府・京都府については、RevPARの水準において回復が遅れてます。一方で、沖縄県のような観光地や、静岡県のような大都市近郊かつ観光資源を抱えるエリアが、Go Toキャンペーン事業の恩恵を相対的に大きく受けていると思われます。

画像3

更に、Go Toトラベル事業の経済効果が、宿泊施設の1日あたりの平均客室単価(Average Daily Rate: ADR)の水準によって異なることも分かります。Go Toトラベル事業による補助は全ての価格帯の宿泊施設を対象としている一方で、2020年11月において比較的ハイエンド(一泊24,000円以上)な宿泊施設のみが前年同月と同水準まで回復しています。しかし、それ以下の宿泊単価の場合はRevPARの回復は非常に限定的であり、Go Toキャンペーン事業の恩恵は比較的ハイエンドなホテルのみが享受していると思われます。

画像4

新型コロナウイルス感染拡大の第3波の状況を鑑みて、日本政府は2回目の緊急事態宣言を2020年1月7日に発令しました。これにより、移動の自粛のみならずGo Toキャンペーン事業も停止され、観光産業にとっては再び2020年4月に近しい市場環境に陥ることとなりました。この状況が続く場合、日本の観光産業、特に大都市圏の比較的安価な宿泊施設にとっては非常に大きな打撃となることが想定されます。

本レポートの詳細は、フルレポートをご参照下さい

関連資料
宿泊旅行統計調査:https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html

本分析は、RESTARが提供する不動産・地理情報データプラットフォームREMETIS内の情報を活用しております。REMETISにご興味ある方は、下記Web Pageからお問い合わせ下さい。
https://www.remetis.jp/