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電球と流星

その電球は、お店の奥にありました。

いつも、天井からぶら下がって、傘のような帽子をかむり、お店の古いガラクタたちを、優しく照らしていましたが、ここ最近は歳もとり、あまり元気がありません。

なにしろ、流行に敏感なこの世界では、電球よりも、蛍光灯やLEDが持てはやされておりまして、彼はもはや、世界の隅に追いやられた、絶滅危惧種なのでした。

だけど、お店のおじさんは、そんな彼が大好きで、仲のいい相棒のように、いつも近くにいたのです。

以前から、とても無口で、照れ屋さんの電球でしたが、彼がいるお陰で、おじさんは、どれだけ助かったことでしょう。

もちろん、お店のガラクタたちや、お店に来るお客さんにとっても、彼の存在は、なくてはならない存在でした。

だけど、この世はいつも無常なもので、そんな彼も、歳にはやっぱり勝てません。

今夜も彼は、お店の奥で、最後の力をふり絞り、周囲を照らしていましたが…

一瞬ピカッと、流星のような光を放つと、そのまま彼は、遠い世界へ旅立ちました。

真っ暗になったお店の奥で、おじさんは、涙をこぼして、静かにむせび泣きました。


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