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ライディングフォームとバイクの進化の関係

《トップ画像はHonda公式サイトより RC181》

バイクのメカニズムは半世紀以上の時間をかけて、目覚ましい進化を遂げてきた。もちろんそれに伴ってライディングフォームも変化する。

今回はフォームに大きな影響を及ぼす《タンク長》と《スイングアーム》について。

下の3台のレーシングマシンの写真をよく見比べてみて欲しい。

1960年代
1980年代
2020年代

まずガソリンタンクから見ていこう。

1960年代のレーシングマシンは、タンクが低くて前後に長かった。
これが時代を追うごとに、どんどん高く短くなっていく。

これはエンジンの前後長を詰めた結果、上下方向に伸びてしまったからである。

なぜエンジンの前後長を詰めたかったかと言うと、ホイールベースは変えずにスイングアームの長さを確保したかったからだ。

ホイールベースとは、フロントタイヤの中心軸とリアタイヤの中心軸の間の距離のことで、ホイールベースが長いと直進安定性は増すがその分コーナリングの軽快性が損なわれ、短ければ逆に直進安定性は落ちるが軽快性が増す。

スイングアームとは、リアタイヤを支持する横向きのアームのことで、短いとアンチスクワット効果が下がってしまう恐れがあるので、大きな荷重がかかるレーシングマシンでは特にスイングアームを長くするための努力が積み重ねられてきた。

ちなみにアンチスクワット効果について少し説明すると、バイクが加速状態にある時はドライブチェーンの上側が引っ張られるためバイクのリアサイドを押し上げようとする力が働くが、その効果を“沈み込まない=アンチスクワット”と呼んでいる。

バイクのフレーム(エンジンを抱き抱えるように支えている骨組み)とスイングアームの結合部である“スイングアーム・ピボット”がリアタイヤの中心軸より低くなってしまった場合、チェーンの引っ張る力が今度はリアサスペンションを縮める方向に働いてしまうことになる。それを防いで出来るだけアンチスクワット効果を高くするために、スイングアーム長は少しでも長く取っておきたい。

しかしスイングアームをただ単に長くしようとすると、ホイールベースが長くなってしまい軽快性が落ちる。
エンジンを前方にやる事が出来ればスイングアームを伸ばせるが、フロントタイヤと干渉してしまうためそれにも限界がある。
従ってマシンの開発者は必死で知恵を絞りエンジンの前後長を詰めることに腐心してきたのである。

先ほどの写真のスイングアーム・ピボットの位置に、赤いラインを入れたのでもう一度見比べてみていただきたい。

ピボット位置の前進具合の凄まじさが伝わるだろう。そしてそのピボット位置とリアタイヤの距離にも注目してほしい。

2024年現在、最新バイクのジオメトリーはモトクロス専用競技車輌のそれと酷似している。

モトクロスのコーナリング時の着座位置はタンクの上に乗るほど前方寄りだったが、現代のMotoGPの世界もそれに近いのではないだろうか。

昔はこんなに後ろに座っていたのに。

これだけバイクが進化しているのに、ライディングフォームやテクニックに関しては、30年以上前からあまり大きな進歩がないように感じる。

バイクが変わっているのに乗り方が同じというのはおかしい、と思っているのは筆者だけなのだろうか。

《写真はHONDA公式サイト、Bike Bros、DIDチェーン、auto sportsの各サイトよりお借りしました》

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