日大アメフト部 廃部について帰国子女が思うこと

概要

2023年秋、日大アメフト部員による薬物事件(大麻及び覚せい剤の保持)が決定打となり、同部の廃部の方針が決まった。2018年のいわゆる悪質タックル問題に続き、日大アメフト部による刑事事件は、約5年間の間に2度大きく報道された。

なお、悪質タックルの件においては、監督、コーチは証拠不十分として不起訴、タックルを行った選手Aも被害者と示談が成立し、不起訴処分となっている。

不祥事が続いたこともあり、日大アメフト部は廃部の方針となったが、この判断に帰国子女なりの意見を述べようと思う。もはや帰国子女のバックグラウンドは関係ないようにも思うが、皆さんの意見も合わせて頂戴できれば幸いに思う。

個人的な結論

個人的な結論は、「悪しき日本文化である『臭い物に蓋をする』を地で行く、短絡的な逃げ方で情けない大学(委員会)だ。アメフト部員専用の寮は解散、アメフト部は存続。ただ、同じ過ちを繰り返さないようにどうすれば良いか、学生自身で考えて行動する条件付き。」である。

大前提として、事件の被告には、刑事罰が与えられる。その他アメフト部員は、吸引を知らなければ、刑事罰は無い。しかし、薬物の所持を知っていた場合、刑事罰に問われる可能性が有る。今回の事件において、共同生活者の寮生はその事実を全く知らないものとして考えたいが、逮捕者以外の全員が、大麻や薬物の使用の事実を全く知らなかったとは考えにくい。噂程度なら、耳にしていたかもしれない。「知っていたかもしれない」という可能性でしかないが、寮生または部員全員が、薬物使用の報道が寝耳に水という状況は考えにくい。ただ、万が一薬物の存在を知っていたなら刑事罰に問われるはずなので、無罪ということはそういった事実は無かったと信じたい。

ペナルティの要否

さて、先ず、薬物事件の当事者以外が何らかのペナルティを受けるべきか、について考える。

寮に対する措置

今回の事件は大学寮内で発生したこともあり、大学に対し、寮の管理責任は問われても良いと思う。加えて、寮長なるものが存在するならば、たとえ学生だとしても、その寮長にも、相応の管理責任を負わせても良いと思う。(寮長の変更程度が妥当と考える)

次に、同部員または寮生がペナルティを受ける点について、大学の公共性の観点から考えたい。日本大学は私立大学等経常費補助金を受けており、税金が導入されていることから、一定の公共性はあるように思う。アメフト部や寮運営にも、補助金の一部は利用されているであろう。

今回の事件は、寮というある意味閉鎖的な空間での使用だった。寮生が被告と「同居人」とみなされた場合、共同所持にあたる可能性があるのではないだろうか。もし事実を全く知らなければ刑事罰には問われないが、上述の通り、部員全員が知らなったとは考えにくい。薬物所持を知っていようがいまいが、寮生にも共同生活者(同居人)としての「社会的な責任」は多少有するものと考える。

個人的には、寮に少しばかりの公共性がある以上、寮運営に充てられた補助金はカットして然るべきと考える。更に、アメフト部員専用の寮だった場合、その寮は別の部活や同大学生の寮として活用すれば良いであろう。結果的に大学への補助金の額面上はカットされないことになるが、アメフト部員の優位性は無くなるであろう。連帯責任という意味ではなく、同居人としての責任は問うても良いのではないだろうか。

部分的に纏めると、「もし、その寮がアメフト部員専用だった場合は、寮を解体し、別の活用方法を見出せば良い。」である。アメフト部員専用でなかったら、廃部はアメフト部でいいのか、と疑問が残る。いずれにしても、共同生活者である寮生の「社会的な責任」は、退寮で良いのではないだろか。

廃部判断について

次に廃部措置について。

わたしの結論は、「廃部措置は不要」である。不祥事が続いた為、「廃部は仕方ない」「アメフト部員の友達がいるが、かわいそう」と考える日大の学生もいるようだ。「仕方ない」って何だろうか。仮に廃校になっても「仕方ない」で済ませられるのだろうか。連帯責任という不条理を「仕方ない」で終わらしても良いのだろうか。

廃部の判断は、「日大アメフト部員が薬物事件」の解決策ではない。先ず以下の問題認識やその対策が必要であろう。

・薬物使用の理解/教育できなかったこと
・寮内における犯罪行為を防げなかったこと
・部員や生徒が薬物に手を染めた環境
・学生に薬物の入手ルートがあること
・日本に薬物があること

上記は早急に解決ができるものではないが、廃部は事件の対策に当たるとは思えない。部は存続させつつ、むしろ今回の事件を教訓に、薬物禁止の啓もう活動を積極的に行う部になってくれればと思う。他大学や他の部活、後輩に事件を話し伝え、より良い大学、日本にしていけば良いではないか。

以下に、日大教育勲章を掲載する。

本学は、「日本大学教育憲章」を制定し、総合大学として育む人間像として、「日本の特質を理解し伝える力」、「多様な価値を受容し、自己の立場・役割を認識する力」、「社会に貢献する姿勢」の3つの能力・姿勢を「日本大学マインド」として掲げ、「学生と向き合う」を合言葉に教育改革に取り組んでおります。
今後は、更なる競技部のガバナンス強化を含めた改革を推進して、新たな体制のもと、「学生ファースト」の精神に基づき、競技部所属学生がより活躍し、心身ともに豊かな人材へと成長できるよう支援してまいります。

日本大学 日本大学競技部の改革について
https://www.nihon-u.ac.jp/announcement/2018/11/9636/

廃部のどこが「学生ファースト」なのか。
廃部のどこが「心身ともに豊かな人材へと成長できるよう支援」なのか。
アメフト部に「社会に貢献する姿勢」を見せる機会を与えてあげようよ、と思う。

日大が育んでいる「日本の特質を理解し伝える力」は「臭い物に蓋をする」なのでは?と思ってしまう。アメフト部にも多少批判は寄せられるであろう。ただ、その批判をひっくり返すほどの行動をすれば良いのに。

何とも後味の悪い決断だったと、寂しく思う。

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