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避難所運営はだれが責任をもつべきか~小林政務官との対談①

 総務省の小林史明政務官と、災害復旧対応について対談しました。その内容について紹介と解説をしたいと思います。

藤沢 まず問題なのは「支援者」と「被災者」が時間的に重なってしまうこと。災害時に被災者を支援する主体は「被災地の自治体」となっているが、自治体の職員も被災しているわけだから「被災者が被災者を支える」という厳しい構図になってしまう。
 先々週、宇和島市長にお会いしたら「被災してから、まだ1日も休んでいない」と言っていた。西日本豪雨からすでに3ヶ月近くになる。被災地支援のプロである自衛隊の人たちは現場でローテーションを組み、きちんと休む。一方、支援のプロではない自治体の職員には休むノウハウがなく、極限状態で働き続けている。
『災害復旧を拒むバカの壁――なぜシステムの標準化は進まないのか』(文春オンライン, 10月2日)
http://bunshun.jp/articles/-/9142

 この夏は、大阪北部地震から始まり、西日本豪雨、台風21号、そして北海道地震と規模の大きな災害が重なりました。その中で、一つ問題提起が進んだのは避難所運営のあり方についてでした。

「人道的な避難所設営と運営を」(視点・論点)(NHK, 6月25日)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/299804.html

 こちらにもあるように、日本国内の避難所運営は昔とさほど変わりませんが、災害関連死が相次ぐなど、快適とはいえない状況があります。
 原因は、被災自治体と住民に避難所運営が"任されすぎている"点があります。小規模な災害なら対応できますが、東日本大震災や熊本地震クラスになれば、地域で100単位の避難所の運営が求められます。数千人の小さな町村でも域内の広範囲が被災した大槌町(岩手)、女川町(宮城)、益城町(熊本)のような例もあります。そうした場合に被災自治体や避難者が、適切に避難所を運営することは困難です。
 物資についても、原則として被災自治体からの要請に基づいて送られますが、なれていない避難所運営者は何が必要かも必ずしもわかっていません。熊本地震以降、「プッシュ支援」という枠組みを日本政府は進めていますが、ラストワンマイルの避難者に届けるまでは自治体側の役割になっていて、届ききっていない現実もあります。

「イタリアの避難所に被災後真っ先に届く3つのものとは」(ダイヤモンド・オンライン, 6月6日)
https://diamond.jp/articles/-/171495

 例えばイタリアでは、被害規模によって避難所運営の責任が県や政府に変わります。必要な設備・物資は外部から責任をもって届きます。避難所では不衛生(誤嚥性肺炎の原因となります)、ストレス(心筋梗塞の原因となります)をへらすことが大事ですから、清潔なトイレと、温かい食事、快適なベッドの3つがまず届きます。

 今後、首都直下地震や南海トラフ地震も高い確率で発生することが予測されています。自治体任せの災害対応をこえて、どこから中央政府が責任をもつか線引を決めるタイミングがきつつあります。(続く)

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