小説/友だちリスト 第1話

多分、私だけが気づいている。隣の席の水沢さんは危うい。なんというか、何かをしている。何か確実に悪いこと。それが何かはわからない。ただ、私だけが気づいている。と思う。

異変には最初から気付いていた。私が今の部署に配属されて、ちょうど半年が経った頃、水沢さんが入社した。水沢さんは2歳年上だが、私は新卒採用で入った会社で6年目になり、水沢さんは中途入社。だから社内の業務に関しては圧倒的に私の方が先輩になり、年齢が近い女性社員は私くらいしかいない。だから自然とお世話する係に私がなった。
私だって忙しいのに、教育担当なんて面倒だな。そんな気持ちは顔には出さないが、出てしまっているかもしれない。気が重いのは理由があった。なぜなら水沢さんは明らかに私とは違うタイプの人間だ。生きてきた世界も全く違ったであろう彼女と仲良くできるのだろうか。歳が近い女性が入ってきたのは、最初は嬉しかった。というのも、うちの会社は業界では中堅のIT系コンサルで、一見華やかに見えるが、実態は大手企業の下請けをマンパワーで推し進めるIT体育会系企業のお手本のような会社だからだ。そのため社員はほとんどが男性社員で、女性社員もいるにはいるが広報などの外向けの華やかな業務くらいしかやっていない。会社中核の実務を行なっているのは、エナジー系飲料片手に残業三昧のITドカタ丸出しの冴えない男か、いい歳して得意先や代理店連中とコンパだなんだと夜遊びに励むチャラい営業マンが中心だからだ。
そんな中に私は半年前、地味な地味な、でも雑用だけは社内一多そうな、マルチプランニングルームという、名前だけでは何をしているのかよくわからない部署に異動になった。元は企画開発室という平凡な名前だったが、今のチーフが来てやたらカタカナを使いたがるためこんな名前になった。とにかくカタカナを使えば仕事をしていると思っているのか、「アジェンダ」がどうとか「プライオリティ」がどうとか耳にする機会が増えて来た。一度、会議中にチーフが「それはアグリー(同意)ですね」と言った時には、思わずコーヒーを吹きそうになったものだ。

泥臭さや汗臭さとIT用語が共存する職場にやっと慣れて来たというのに、水沢さんという謎の異物がまた混入されて、この会社はどんな化学反応を起こそうとしているのか。私の安泰した会社生活はまだまだペンディング(保留)のようである。

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コメント2件

「第一話」と見ると、思わずワクワクしてしまいます!
これからも楽しみにしています!(*^^*)
ありがとうございます😊励みになります❗️
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