小説/Field Flowers フィールドフワラーズ 第1話

また転んだ。
これで3回目の転倒だ。コウエイはマラソンが嫌いだ。
それなのに人一倍負けず嫌いだから、ヘタなフォームでドタドタと慌ただしい走りだ。しかもサイズの合わない靴とブカブカのジャージが邪魔をする。中学生になっても成長が遅いコウエイは、制服を着ていないと小学生に見える。背も他のクラスメイトより頭ひとつくらい低い。
それでもコウエイはいつだって全力疾走だ。

転んでも転んでも誰よりも早く立ち上がる。痛みを感じる暇すら忘れてしまっているようだ。立ち上がる勢いだけは誰よりも速い。
広々とした中学校の校庭は秋のマラソン日和だ。
暑すぎず、寒くもない。心地よい風と、陽射しがあたりを包む。

スミレは教室の窓からコウエイを見ていた。半分開いた窓からは、風が澄んだ空気を教室に運ぶ。
白く柔らかなカーテンが揺れる。
何度も転んでは、また走るコウエイを見てくすりと笑いそうになる。
一生懸命さがかわいいが、滑稽さが勝つ。

「昔から変わらないな、コウくんは。」

子どもの頃一緒に通った小学校の道のり。コウエイはその道のりでもよく転んでいた。
コウエイとスミレは小学生の頃、兄弟のように仲が良かった。
スミレより2つ年下のコウエイは、いつも「スミレちゃん、スミレちゃん」と言いながら、弟のようになついてきた。
本当の弟がいたらこんな感じだろうな、そう思いながら二人は仲良く過ごした。
コウエイが小学生になった頃に、近所に越してきたから低学年の頃からよく遊んだ。
学校への近道や公園への道順を教えてあげたり。駄菓子屋さんで上手にお菓子を買う方法を教えてあげたりもした。

小学校の高学年になった頃には、お菓子の作り方を覚えて、よく一緒に食べた。何をあげても美味しい美味しいと言うから、嬉しくなっていろいろな種類のお菓子の作り方を覚えたものだ。
背が小さくいじめられっ子のコウエイは、ケンカ負けした後いつも泥まみれになっていた。
それでも人一倍負けず嫌いだから、倒されてもすぐに立ち上がって、どんな相手にも立ち向かっていった。

中学生になっても全然変わっていない。

単純で無鉄砲で中身はスカスカの空っぽなのに、誰よりも早くそして強く立ち上がる。私が作ったお菓子を、夢中で頬張るあの頃と何も変わっていない。


つづく

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さくさく小説

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