[無料] 小説/月灯りとミラーちゃん 第4話

ミラーちゃん人形のブームがいつの間にか終わっていた。
少女たちは中学生になった。桜舞う校舎の下駄箱。張り出されたクラス割りをみて落胆する人、喜ぶ人。それぞれが新生活に想いを馳せている。これからは小学生の頃のような誰もが仲良く過ごす時代は終わったのだろう。なぜなら学期末テストの結果で、単純に能力に順列がつけられるから。競争で勝ち抜けるものこそが価値に変わる。鈍臭いやつは蹴落とされる。いよいよ大人が近づいた気がする。もう手を繋いで仲良くみんな一緒にゴールはできない。この中学生活の先にあるのは、勝者から順に幸せになれる残酷な世界が待っている。
それを憂いているのか、どこか緊張感や張り詰めたような顔をした生徒たちもいる。その中に、少し背が伸びた美咲と藻波もいた。

美咲
おかしい。何かがおかしい。美咲は言葉にできない焦りを抱えていた。どうもこの頃何をやってもうまくいかない。いや微妙な変化かもしれない。基本的には中学といえども小学校の延長だ。まだまだ義務教育特有の甘ったるいぬるま湯のような雰囲気で、クラス全体が小学生のように幼稚な話題で盛り上がる時がある。
だから、他区の小学校から同じ中学になった人たちも、美咲には一目置いている雰囲気がある。制服は着ていても所詮は子どもなのだ。
特に男子なんて、以前に増して色気づいているから余計に美咲を見る目が変わった。だから他区の小学校からからきた男子たちは話しかけてすらこない。なのに、遠くで私を見てはヒソヒソ色めき立っている。そんな雰囲気を感じ取りつつ、なんてことない顔をするのだけは相変わらず得意だ。
けれどやっぱりおかしさは拭えない。この違和感に気づいているのは私しかいないだろう。些細な変化。やはり中学になった分、それぞれの目的が明確になっているのだろう。部活に励む子、勉強に励む子。みんなが少しづつ自分の将来というものを意識し始めている。私だって色々な未来を考えてはいる。けれどどれもピンとこないから、形だけ頑張ってる子の真似をしてしまう時がある。迷いなく目標に向かって打ち込んでいる子を見ると羨ましくもある。私には自分だけの夢とか夢中になれるものがない。何にも本気になれない。
子どもの頃から人目ばかりを気にして、自分をどう演出するかばかり考えてきたから、自分がどうしてもやりたいことが浮かばない。きっとこれからも他人の目を欺いて生きていくのが私の生き方なんだろう。そう思うと、どうしようもなくこの先の人生が長く感じて、ますます気が重くなる。
きっとそんな小さな焦りが、今の違和感につながっているのだろう。いつもみんなの憧れだった私が、今は人に憧れ始めている。そんなことはあってはいけないのに。そんなのは私じゃないのに。絶対に。

つづく

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さくさく小説

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