[無料] 小説/月灯りとミラーちゃん 第3話

美月
移動教室の渡り廊下。美月は次の授業に向けて急ぎ足で歩いていた。反対側から人が来た。藻波だ。いつも私のことをどこか冷めた目で見る子。いやあの子の場合、誰にでも同じ目をしている。生気がなく伏し目がち。服も誰よりも地味。私とは真逆のタイプ。すれ違ったけれどやっぱい目も合わせない。私のことさえ知らないかもしれない。1組の女子はほとんどの子が私に話しかけてくるというのに。なんだか気に入らない。けど別にどうだっていい。私もあの子には興味がないから。廊下を渡り終えた頃には、藻波とすれ違ったことなんて忘れていた。
もう次の授業の若い男の先生のことを考えていた。最近赴任したばかりで、若くてかっこいいから、女子の人気が高い。あの先生も私を見るときは、生徒を見るような感じではない。私にはそれがわかる。だからそんな時にだけ、からかうようないたずらな笑みを見せてあげる。
男というのはきっと何歳になっても、あんな感じなんだろう。見た目は変わっていっても根は少年なんだろう。かわいい子には弱い。私にはそれがわかる。
美月は、男の弱さにつけこんで惑わす妖艶さを、小学生のうちに本能で身につけていた。

藻波 
移動教室の渡り廊下。反対側から美月がやってくる。誰からも好かれ、男子なんて話すだけで浮足立っている。くっだらない。最近恋愛ドラマに憧れて、男子に付き合い出す子たちも増えてきた。美月に告白している男子も何人か見たことがある。美月の何が良いのか全然わからない。確かに顔は可愛いけれど、あの子はいつも嘘の笑顔をしている。いつもニコニコしていて笑顔だからあれは絶対嘘の笑顔だ。ずっと笑っていられるわけがない。狙わないとあんな風に振る舞えない。だからあの子の嘘が私には通じない。だから美月がミラーちゃん人形に似ているとは思わない。いや、似ているとしたら作り物っぽいあの笑顔だけだ。どちらも偽物の笑顔。
だからすれ違うときも、あの子はいつものニコニコ顔だったけれど、私は目も合わせなかった。私の世界に彼女は不要だから。女子にも男子にも、人気の若い先生にも絶対に私の心は覗かせない。私の世界は、私だけのものだから。

つづく


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さくさく小説

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