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強制不妊事件の法的難しさ・国会の役割

旧優生保護法の下で、強制的な不妊手術を受けた被害者さんが今声を上げていらっしゃいます。
今まで声が上がらなかったので、逆に、個人的には「ん?」と思っていた所でした。
実態は杜撰なもので、「多分分裂病(統合失調症)」というような適当な理由で不妊手術を強制的に受けさせたケースもあったようです。
実際は健康体だったのに、ですよ。

被害者弁護団は、旧優生保護法の違憲性を認めた上での謝罪と損害賠償を国へ請求する訴訟を継続するとのこと(ニュースソース・朝日新聞2019.4.11)

そして、その夜、強制不妊の救済法案が衆院通過・全会一致、来週にも成立という嬉しいニュースが飛び込んできました。(共同通信)
強制手術だけでなく、本人が同意したとされるケースも一時金支給対象、手術記録がない場合は審査会の結果をもとに認定。
金額までは書いてなかったのですが、法文の前文に「われわれは、それぞれの立場に置いて、真摯に反省し、心から深くおわびする」と記されたとのこと。それが全会一致で可決されたんだ、ということが、まず被害者の方の心を癒すものであれば、と願ってやみません。


さて、法律というのは、法文の言葉の解釈ひとつひとつなどを、例えば憲法14条で保護されている「平等」とは何か、とか、法文についての受け取り方、考え方を議論し、それによって意見が分かれていたりするわけですが。

端的に、法律的思考で一本筋を通してしまうと今回の事件は以下のようになります。

まず、明治憲法下では一定の人権が認められていたものの政府の方針によってそれはいくらでも制限ができるものでした。
強制的な不妊手術は、個人の意思に反した重大な人権侵害であることは間違いありません
しかし、そのような、形だけ人権を保障しているものの、政府の都合で人権侵害オッケ~というような明治憲法下では、旧優生保護法が「精神障がい者は強制的に不妊手術をさせよ」という法文を作って、実際に実行に移していたとしても、「その時点では」合法・合憲な行為だったことになるのです

この「その時点では」というのが実は法律上とても大切で、例えば後で、「これは犯罪だよ」ということが規定されたとします。
脱法ドラッグとかがそうですね。脱法ドラッグは法的規制が結構遅かったので、法的規制がかかり、法律が「何月何日から施行」とあれば、その日までは脱法ドラッグを買っても使っても、どの法律にもひっかかることがないので違法行為ではありません
しかし、その法律が施行されてから、購入・譲渡・使用すれば違法として逮捕されることになるでしょう
仮に法律が、さかのぼってこの行為は犯罪行為だった、なんてことがOKということになると、それこそまた大きな人権侵害になります。
「え!だってその時は違法じゃないからやったのに!」となる訳ですね。
ある意味国が恣意的に「この人も犯罪者にしてしまえ」とかできちゃう。
だから、法律がさかのぼって適用されることは原則として禁止なのです。

となると、旧優生保護法、名前の通り「優れた人間だけを沢山生かして、そうじゃない人間はどうでもいい」という法律が、明治憲法下であったとしても、憲法上「人権侵害おっけ~」になっているので、合憲、さかのぼって現在の憲法を適用したい気持ちはやまやまですが、原則はさかのぼり禁止ということになります。(遡及処罰の禁止・事後法の禁止)

屁理屈っぽいですかね?(苦笑)
でも原則で言えばそうなります。
要は、法律上は結構難しい問題だったんですよね

ですので、今回国会にて、新たに救済法案が可決成立の見通し、ということはとても有意義なことで、上記の原則通りの法律構成でいけば合憲・合法になってしまう残虐ともいえる人権侵害が、ちゃんと前文にて謝罪の言葉を添えた上で救済しますとなったことは、素晴らしいことだと思います。
新しく法律ができてしまえば、上記の法律構成は過去の遺物になります。
勿論救済と言っても、結局はお金でしか救済できないのですが…
それでも、私は意義あるものと考えます
国会は主権者たる国民に一番近い存在であり、一番世論を反映している国家機関です。本当はこうやって、裁判になる前にちゃんと審議し法案を作って人権侵害を受けた人を救済し・人権を守っていくことが責務です。
今回はちゃんとその機能が果たされた、ということで、本当に嬉しいことです。
そして国会が、法律作りを怠っていたり、人権侵害を放置していたら、「それは違憲・違法だよ」とつっつくのが裁判所の役目。

これ以外にも、まだまだ法律改正や、人権侵害救済の余地がある事例は沢山ありますので、これからも正常に国会が稼働するといいな、と思います。

もし心に響いたならば……投げ銭のひとつやふたつやみっつやよっつ!!よろしくお願い致す!(笑)