ALBA Spoon W850
僕は普段腕時計はしておらず、専らスマホで時刻を確認している、
時代の流れ的な感覚もあるし、今更腕時計…と思ったりもする。
しかし腕時計というカテゴリは昔から変わらず需要がある。
ブランドウォッチがステータスになったり、精密機構を見て楽しむ職人的嗜好品があったり、そのものが立派な資産になったり、気軽にファッションの一部としたり、「時刻を身体に携帯する」要素以外にもアイテムとして確固たるポジションにある。あらゆる腕時計が存在する中で、僕が小学生の頃に一目惚れし、未だに最も好きな腕時計がある。
1990年代後半、SEIKOのALBAブランドより発売された「SPOON」。
その名の通り、スプーンのような曲面を前面に押し出した、
今までにないストリート系デザインのデジタル腕時計だった。
（曲面デザインと言えばG-SHOCKのnexax、愛称「ジェイソン」なんかも
ありましたね）
ジェイソン。ここ数年復活し、マルチカラーモデルが出たりしている。
SPOONは当時週刊少年誌の広告などを沢山打っており、CASIOのG-SHOCKかALBAのSPOONか、みたいな現象もあったりした。地元ヨドバシカメラの腕時計コーナーに、ずらりとこれらが並んでいた光景は今でも覚えている。
SPOONシリーズはかなりのバリエーションがあり、
本体カラー違い、筐体材質違い、液晶表示違い、大きさ違い、コラボレーションモデル等本当に多くのモデルが存在した。
コラボモデルはあまりにも多すぎるので紹介できないが、
基本的なシリーズは以下の通り。
オール金属の上位モデル「INGOT」
ステンレス仕様や、本体部分にチタニウムを使ったモデルもあった。
チタニウムモデル。下記「BLOW」のINGOT版になる。
青色偏光ガラス+赤色LEDでサイバーな表示「BLOW」
台形フェイスと円形フェイスの通常モデル
これがもう本当に種類が多かった。
縦型液晶で電話番号などを記憶可能「WEB」
（水曜どうでしょうで若き日の大泉洋氏が
着用してましたね）
どれも個性的。他にもいくつかモデルがあったんだけど、
確定的な資料が乏しいので今回は割愛。
そして、僕が最も好きなモデルがこれだ。
SPOON INGOT W850
W850系はSPOONシリーズの最上位モデル。当時定価は3万円程だった。
他のモデルが一般的なセグメント的表示の液晶なのに対し、このシリーズは全面ドットマトリクス（正確には3列ドットマトリクス）且つUIがフルアニメーション表示。反転表示仕様で、ELを付けると文字が映える。
最大の魅力はこの美しいデザイン。
オールステンレス+曲面+拡大曲面ガラス+レトロ感を感じる造形。
まるでNASAの宇宙服のような、スペイシーで未来的、
それでいて無駄がなく、しかしどことなくレトロな雰囲気も醸すクールさ。
このモデルを見て、昔のデジタル腕時計に詳しい方ならピンとくるモデルがある。
1970年、世界で初めてのデジタル腕時計である、ハミルトン：パルサーP1。もはや説明不要、デジタル腕時計の歴史的マスターピース。余りにも伝説。
まだ腕時計が機械式しか無かった時代に、発光ダイオードを用いて時刻表示をするというのは前例がなく、革新性と未来感のあるコンセプトが大きな
反響を呼んだ（2021年現在、大幅に性能が強化された復刻モデル、ハミルトンPSRが発売されている。それくらい玄人には大人気）
上：パルサー 下：SPOON
そうなんです。ほんのり似てるんです。
上記のハミルトンパルサーの完成され過ぎたデザインは、その後多くの腕時計に影響を与えた。そして消費電流が大きく常時点灯できないLEDに変わり、消費電流が少なく常時点灯が可能な「液晶」が登場すると、LED表示とパルサー的デザインの腕時計は段々と少なくなっていった。
時は流れ、SEIKOがSPOONを出し、最上位機種でW850が登場したのを見た時に、僕の心は持っていかれた。
パルサーの進化系にも見えたこのスタイルが、
完全に性癖にぶっ刺さった。ショーケースの中でギラギラ輝く宇宙服みたいなこれが、手が届かない、最もワクワクする腕時計だったのです。
日本ではSEIKOのALBAブランドから発売されたので「ALBA SPOON」と
記載されているけど、海外ではPULSERブランドから出たので
「PULSER SPOON」と記載されている。故に海外ではPULSER SPOONと呼ばれ、今でも割と高値で取引されていたりします
2021年7月。ふとこのSPOONという時計を思い出し、
メルカリとヤフオクを徹底的に漁った。
状態の良いSPOONは高値になる傾向があり、当時の定価より高くなっている物もあった。しかし大人になった今、価格は問題ではなかった。
BLOWのジャンク品を入手。
本体のみだけど、バッテリー（CR2025）を入れ替えたら復活。
とても20年以上前のスタイルと思えない、ギラついた赤色LEDと青色偏光ガラスのコンビネーション。液晶も全然劣化していない。たまりませんよこれは。
しかし僕が一番欲しかったのは…
