20150114 数の子をまぶして柚子を

彼女がパン焼き器で餅をこしらえてくれたので小豆を炊いて汁粉をこしらえ、ついでに以前から食べてみたいと考えていた「(餅に)数の子をまぶして柚子を絞ったの」を作ってみる。

これは坂田靖子先生の作品「村野」に出てくる。
日露戦争中、金沢の第四高等学校の生徒たちが友人の家に集まって新年を祝う情景のスケッチだ。
ドラマチックなことは起きないが、なんとも言えない読後感が後を引く。
そう思うのはわたしだけではなく、そうそうたるマンガ読みも結構この短編に触れていて、坂田作品のアンソロジーには何度も収録されている。
良い酒は水に似る、という俚諺を思い出させる佳作。
(作中で食いしん坊の女中さんが厨房で餅を食べるときに上記のアレンジをねだる。ストーリーとは一切の関わりはないが、実に旨そうだ。)

坂田先生を知ったのは高校2年の時だが、この作品を最初に読んだのは大学の頃だったと思う。
以来、作ってみようかなと何度かは思いはしたものの、一人暮らしの男(結婚していたこともあるような気がする)というものはそもそも数の子などとは無縁な存在だ。
だから長年の憧れで、謎の料理(料理と呼べるものでもないが)になっていた。

たまたま今年は搗きたての餅があり、たまたま数の子もあった。
たまたま柚子も売っていた。
だから試してみた。
餅にからんだ数の子の粒に柚子の果汁が飛ぶと、白く濁る。
予想通りの味で、予想以上に旨い。
切り昆布を加えてみるとか、少し洗練させアレンジすればちょっとした料理屋でコースの中で出してもおかしくない一品になるだろう。
こういうものがさらっとマンガに出てくるあたり、坂田先生が育った古都金沢の食文化の厚みを感じさせる。

積年の願いをとりあえずひとつ果たしてみた。

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