プリティ・ウーマン

恐らく私は昔からOVER50のレディーと何だか縁があるように思える。


彼女たちは、時に私を助けてくれ、時に私に役立つチャンスをくれる。水分量は少ないはずなのにいつだって私の生活にハリと潤いを与えてくれるのだ。


先日、そうだ、海行こう!
と思い立ち、気まぐれひとり旅をした。
当駅始発に胸を弾ませ、進行方向を確認し、大好きなボックス席窓側に座った。
向かうは茅ヶ崎、出発をワクワク待ちながらサザンを聴いていた。

すると急に横から気配が。

逆側のボックス席に座ってたおばあさんが立ち上がって何か言ってる。


「はいっ!!」と慌ててイヤホンを取ると、


「これがね、こうなっちゃうんですけど」


どうやらスマホを傾けると画面が横向きになっちゃうらしい。


「あ!私もたまにあります!えっと、、そしたらですね、、、、、、良かったら、、ちょっ、と触ってもいいですか?」

言葉だけ聞くと変態みたいな感じでスマホを貸してもらった。

しかし、触っても画面が動かない!

おや?!

すると「長く押さないと反応しないの」
らくらくスマホってそうなの!?

正直、近くに座ってるベストオブメカニック太郎みたいな子に聞きたいけれどスマホに釘付け。。

とりあえず色々触ってみるも、私は最近やっと令和に来たアナログ花子なので、うーむ、うーむと苦戦していた。

そして、ふと気づく。
画面をのぞくおばあさんが視界に入ったり入らなかったり、やけに動いている。

チラりと見ると、おばあさんはいつの間にか出発していた電車の時々の揺れに耐えていた!!

あらららららー!!

「あの、良かったらお座り下さい」

自分の席でもないのに落ち着いた風に見せて斜向かいの席に誘った。


よしっ!
と切り替え、設定をいじろうとしたら、


パホッ!


LINEきちゃった!

「何号車ですか?」


はわわわ!電車の中で待ち合わせだ!!おばあさんには時間がない!私はお金がない!オーバー・ザ・トラボー!なにやってんだトラっ!!

とりあえずお返事を先にとスマホを渡すも、おばあさんは打つのに苦戦。
でも70は軽く超えたおばあさんがスマホで文字を打てるだけすごいなぁ、、と一瞬、他人事のようになっていたら、おばあさんキョロキョロ、、

ハッ!!
「1号車です!!」

おいなにやってんだトラっ!!そんなんじゃゆうすけとひろしに焼肉腹いっぱい食わせられないぞっ!
ふんどしを締め直し、財前さんから目を離さずにいると、どうやら「号車」ではなく「両目」でいこうとしている!

オッケー!見てるよ!

「両はこれです!」

「あ!目ここです!」

順調!

「あら?めって「目」でいいんでしたっけ」


え!

そう言われると確かなものなどこの世には、、しかし次の駅に着いたら人が、、

「合ってます!!」

スマホを触り合い、時間がないおばあさんとお金がない私、そんな2人の初めての共同作業。

いけっ!送信っ!

良かった!

しかし喜ぶのはまだ早い!またまたアナログ女の出番だ。
いそげーーーーーーー!


そして、、、ついに見つけた!
やった!!

「えっとですね、これです!これをオンにすると、こうなっちゃいますね、、そしてこれをオフにすると、、横になりません!なので、ここを開いてこれがオフになっていれば、大丈夫です!これ押すとまた、こうなっちゃいます!」


、、、やですねぇ~!!
安心したからって当たり前のことしか言ってないのにやたら口数が多くなっちゃって!


おばあさんは安心して席に戻られた。


私はいつもより背筋をシャンとした。
そして、すぐにイヤホンをすると遮断したみたいになりそうだなと思い、しばらく顔も身体もフリーズさせた。

そしてゆっくりゆっくり、ほんのすこーーしだけ左に顔を向け、早乙女太一に負けず劣らずの流し目でこちらを向いてないのを確認し、そろりそろりとイヤホンを片方ずつ付けた。
そして「両目」が「目」で合ってるかを調べ、
ホッ、安堵。


それから10分、15分くらいだろうか、お友達がいらした。



そしてしばらくして、私の降りる駅が次になった。

私はなんとなくイヤホンを取った。

こういう方は大抵おりる時に再度お礼を言って下さるのだ。

言って欲しいは全然ないけれど、イヤホンでそれを聞き逃したらそのありがとうは貰い手のないままどこへやら。。
もう会う事は恐らくないけれど、一緒に過ごせた時間は私にとってはこうしていい思い出になる。

でも難しいのが、あまりしっかり見ちゃうとお礼を言わなきゃみたいになっちゃうから、会釈してるようにもとれる角度に身体をすこーし傾けて早乙女スタイルで視界には入るように、どんな形でも対応できたらと。


うわぁ、、

くさくさ!!

めんどくさーーーっ!!

私ってやつはほんとにすんごくめんどくさい!
いいよそんな細かいの、そこまで誰も見てないわ!うぬぼれんな!
自分でもね、わかってるんだけどね、もうクセなのかなベッタリ染みついちゃって。
染みで言うと、昔ピンクの電話のみやちゃんがよっちゃんにツッコミで「この染みったれ」って言ったことがあったのを思い出しました。


そんな感じでめんどくさい私は、準備万端で減速と共にもぞもぞ動き出すけれど、まだ向こうは見ないでおく。

ゴトン、、、ゴ、トン、、、ゴ、、、、トン


時は来た、それだけだ。
ゆけ、早乙女。


ハッ!
やはり見つめてらっしゃった!!

「本当にありがとうございました。さっきね電話直してもらって」


お友達ではなく恐らく娘さんだった模様。娘さんにもお礼を言われ
「とんでもないです!良かったです、はい、えへへ」
時代劇の下っぱみたいな感じでペコペコへっぴり腰で降りていった。


ださーーーーーーっ!
最後ださ!!


いつも次こそは
「いえ、とんでもありません、では!」
スッ

っていう理想イメージを浮かべるけれど出来ない。
お礼を言われるとわかっていても、どうしても嬉しいのと照れくさいがいっぱいになってあわあわしてしまう。

言葉尻がバシッと決まった事は、いまだかつてないし、やまだかつてない。くにちゃーーん!ドッジボールじゃない方ーーー!


でもこれって私が助けてるように見えるけれど実は私得かもしれない。このおかげで、我は無力なり!とならずに済むし、このホワホワな全身をかけめぐる何かは他では味わえないのだ。

もう1人だけ直近のおばあさん。
病院から帰る時にエレベーターに乗ろうとしたら、私よりはるかに背中の丸まったおばあさんがいらっしゃった。

先に入って開ボタンを押してるとおばあさんが入ってすぐに

「ありがとうございます。優しくしてもらって、ねぇ」

「いえ!私こそありがとうございます!」

そう、そもそもおばあさんが▽ボタンを押しててくれたから私は先に中に入って開ボタンを押したので私こそありがとうございますなのだ。

「少しでも優しくされるとね、すぐ嬉しくなっちゃうのよねぇ」

「わかります私もです!」

「だってぇ、嬉しいわよねぇ」

「はい!」

「小さいことでも喜んじゃうの」

「あ!私もすぐ喜んじゃいます!」

「でも友達にはね、そんな小さいことで喜んじゃって!って言われるの」

「いやいや!小さなことで喜べるの素敵です!!」

「そうよねぇ」

「そうですよっ!」

「感激屋だねぇなんて言われちゃうんだからやーよねぇ」

感激屋ってなんだ

そういう言葉あるの?そもそも、絶妙なトーンだから感激屋がおばあさんにとっていい事かいやな事か読めない。。

でも何か言葉を!

とっさに、
「そしたら私も感激屋だから一緒ですね!」



すると、
「・・・・・」

急に!?

私やった?誤答?リサ!?トッポ出の新人。。
やってしまった。。


5階から1階までのデートは2階あたりで少しビター味になってしまった。でもあんなに短い時間なのにホワホワの全身のかけめぐりはすごかった。

最後は
「ありがとうございます」と丁寧におじぎをし、ゆっくりゆっくり可愛く歩いていった。

その背中を見ながら調べるは「感激屋」
本当にあった!
エレベーターでこんな楽しかったの初めて。
ありがとう感激屋さん。


こんな感じでOVER50のレディーたちが声をかけてくれるのは嬉しいので、読んでくれたレディーが居たらいつでも声かけて下さい。

その時はnote見たよって言ってくれたら2人あやとりしましょう。


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