MLBの様々な制度 〜FA制度改革の話題を受けて

まぁ例の件で色々ゴタゴタしてますが、ここにきてプロ野球選手会が「人的補償の廃止」を訴えたと話題になっています。
個人的にはこれには反対です。
他にも反対な方々は散見されまして、その中に「代替案なき撤廃は危険である」という趣旨の意見と共に「獲得球団のドラフト指名権の剥奪及び被獲得球団への譲渡」もまた散見されました。
これは実際に、MLBにおいて一部の選手を対象としてFA移籍に対する補償として行われています。
「一部?」
そう、一部。全部ではないんです。
ではどんな選手が対象なのか?をはじめとして、複雑怪奇なMLBの制度の一部について解説しようと思います。

1.年数


NPBでは現在、高卒選手の場合は一軍としての登録(出場選手登録)期間が8年、大卒・社会人の場合は7年経つとFA権を取得することができます。移籍をしない場合でも移籍しても、FA宣言をした選手はその次の所属先でFA権を得るのに4年必要とします。

対してMLBでは、ロースター登録期間が6年を経過すると選手側に移籍の権利が発生します。
一度FA権を取得した選手に対しては再取得の概念はなく、契約が切れた時点でFAという扱いとなります。

NPB、MLB共に留保する権利を球団側が有している期間は、選手側の意思による移籍は基本的に認められません。基本的にはトレードや戦力外通告による移籍のみとなります。

2.FA移籍に伴う補償制度

NPBでは、年俸を基準に「ランク制」が設けられており、移籍する前の時点での年俸金額が
・「在籍球団で上位3位以内の場合」はAランク
・「在籍球団で上位4位〜10位の場合」はBランク
としており、上記に該当する場合は、獲得された球団は補償として人的補償を選択することが出来るようになります。また、基本的に人的補償+金銭で、この金銭は当該選手の年俸によって上下する(年俸の50%、40%)。また、選手が2度目以降のFA遺跡だった場合はこの割合は減っていきます。

人的補償では、獲得球団から28人のプロテクト(人的補償移籍対象外)選手リストが提供され、そのリスト外の支配下選手から選択します。

一方のMLBでは、人的補償や金銭補償はなく、ドラフト指名による補償が適用されます。
これも全移籍に対して適用されるわけではく一部選手のみになりますが、はMLBではランクによる分類は行われていません。
以前はランク制でしたが、撤廃されています。
補償は、移籍元球団が選手に対してQO(Qualifying Offer)を提示し、拒否され、かつ他球団へ移籍した場合に発生します。

このQOとは、いうなれば「引き止め」みたいな制度ですが、「全MLB選手のうち年俸上位125名の年俸の平均」を金額とした「単年契約」となります。これは、球団、選手及びその選手の代理人であっても変更はできません。

また、移籍元チームがQOを出せるのは以下の条件が揃った選手のみ
・過去にQOを提示された経験がない
・当シーズン中に移籍をしていない
・当オフにFAを迎える
この条件を満たす選手が移籍した場合にのみ、移籍元球団は、その移籍元球団の選手年俸総額に応じたドラフト追加指名権が与えられ、移籍先球団もその選手年俸総額に応じたドラフト指名権が剥奪されます。
※その他にもインターナショナルボーナスプールの減額が行われる場合もありますが、詳しくはwikipediaなどを参照してください。

これが補償の差です。
ちなみにMLB側ですが、補償にて剥奪される指名順位のうち、最も厳しいものは「保有する指名権のうち2番めと5番めに高い指名権」です。同じ選手を2人獲得すれば、2位、3
位、7位の指名権を喪失する形です。
また、補償にて得られる指名権の最高は「一巡目指名後の補完指名権」です。

以上がFAにおける制度の差です。
ここからは、MLBにて行われている戦力均衡や飼い殺し防止のための様々な対策について書いていきます。

・マイナーFA
・ルール5ドラフト
・マイナーオプション
・ドラフトの完全ウェーバー制

ですが、その前に何かとややこしいニチベイの違いについて説明します。

ロースター

いわば出場選手登録のことで、26人が枠となります。日本では29人。この選手が実際にメジャーリーグの舞台で試合を行います。これをアクティブロースターともいいます。

日本ではこの他に2軍でプレーしている選手も支配下選手として登録される最大70名が出場選手登録(一軍)と入れ替わって試合に出場できます。
しかしMLBでは、アクティブロースターと交換できる選手の枠が限られており、この枠にいる選手のみが交代の対象となります。これは現在登録されている26名以外に最大16名となります。(別名:40人枠)

この40名枠に新たに選手を登録する場合、現在登録されている選手をDFA(選手を支配下から外す措置)、もしくは60日間の故障者リストに入れる必要があります。
DFAされた選手は他球団が獲得できるようになります。

このアクティブロースターに入ってる期間のみがFAなどの資格計算に使われます。

3.マイナーFA

マイナーリーグであってもその在籍期間が6年に達した時点で、その選手はFA権を得て移籍することが出来るようになります。
マイナーFAで移籍を希望した選手に対してメジャー契約をすることもできます。

4.ルール5ドラフト

シーズン終了時、入団時点で18歳以下の場合4年、19歳以上の場合3年以上経過した選手のうち、40人枠に入っていない選手を他球団のうち40人枠に空きのあるチームが指名し、移籍金(10万ドル)を支払って入団させることが制度です。

ただし、獲得した選手は翌年1年間通してアクティブロースター(26人枠)に登録する必要があります。
飼い殺しを防ぐ制度の代表です。

このドラフトにより自軍の期待の選手(プロスペクト)が他球団から獲得されることを防ぐためには、40人枠にいる選手の入れ替えを行わなければなりません。
結果的にその40人枠から外れた選手は他球団への移籍が可能になり、移籍が活発化するわけです。

5.マイナーオプション

マイナーオプションは、ロースター(40人枠)内での飼い殺しを防ぐルール。
オプションが適用された選手は、そのシーズン中最大5回までマイナーとメジャーを自由に往復できます。一定以上の日数をマイナーで少した選手はオプションが消費される。このオプションは1選手に3年分まで適用可能。

オプションを消費しきった選手をアクティブロースターからマイナーに降格させる際は、DFA公示が必要となり、DFA公示された選手は他球団から獲得が可能となります。

このマイナーオプションの存在により、アクティブロースター外の40人枠に3年以上同一選手を確保しておくことが困難になります。

6.贅沢税

選手年俸総額が一定以上の額に達した場合、決められた割合の税金を納入する制度。
勘違いされがちですが、この税金は選手の福利厚生や年金の財源とされます。他球団に配られることはありません。
強い選手を、多額の年俸でいっぱい抱えると、その年俸に加えてこの税金がかかる、という形になります。

7.収益分配制度

MLB各球団の収益金に一定の税率をかけて課税し、集まった金額を各球団に分配する制度。
2つあり、一つは一定の税率で集められた税金を均等に分配するもの。
もう一つは、収益の高いチームに課税し、収益の低いチームに分配するもの。
戦力均衡を促す制度です。

まとめ

いかがでしたか?
戦力の均衡はプロ野球を白熱させます。シーズン最後まで優勝がわからない年は面白いですよね。
逆に、必ずこのチームが優勝してしまうようなスポーツは人気が出るでしょうか?
プロ野球の今後を考える上で参考になれば幸いです。

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