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Vol.5 OMSB『黒帯』

第5回はSummit所属、Simi lab レペゼンのOMSBの『黒帯』です。(2015年リリース)

2枚目のソロアルバム『Think Good』収録の、ドープなビートと、粘っこく重たいフローが特徴的なこの1曲。そのライミングを解剖していくのも楽しみです。

【Verse1】

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最初の8小節です。

出だしは "oi" ×4です。また、黒帯<kuroobi>とケノービ<kenoobi>では "k" の子音も合わせて来ています。

3~4小節目は、「塵」「日々」を頭韻とし、「山と成りけり」「大和撫子」では、"yamatona"で子音も踏みますが最後は絶妙に踏み外します

こういうところがクセになっちゃう部分です。

踏み外したついでといってはなんですが・・・、といった感じで「でしこ」で次のフローへと移行し、「テクスチャ―」でやや強引に踏みます。

発音をあいまいにして母音で踏んでなくとも、フローと言い方で韻に聴かせるのはOMSBのテクニックかもしれません。これを、今初めて言いますが、「強韻」といいます。

やや強韻気味に「切磋」「稽古」を続けた後、「soul継承」「All day 勝負」「Already know」 "o<u>eio" を踏みます。

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後半8小節です。

最初の2小節は、 "iu" の頭韻です。「止水明鏡」「いつでも」でも踏んでいますね。

次の2小節では、フローが少し変わるので分かりづらいですが、「センテンス」"面前む"けて」「先手打つ」で5文字で踏んでいます。

後半では、「No Rule」「修"行中"「猛獣」また、「闘志」「落"とし"「境地」「狂気」で畳みかけるように踏んでいます。

【Verse2】

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この8小節で注目すべきは、 "o<u>o<u>aa" のライムです。

「世の中」「Joe Montana」「超大技」「情報過多」"獰猛なカ"ス」「凶暴なら」と6小節の間に最低でも6個踏んでいます。

俺のVerse is テトロドトキシンおい見ろよ!コイツはどう足掻いても届く芯

ここのラインはかなり好きです。

テトロドトキシンって何!?っと思ったのですが、いわゆる「フグの毒」らしいですね。

ラップは言葉の勉強になることが多々あります・・・

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ラスト8小節ですが、特に前半の4小節は訳わからんほど踏んでいます

整理するのが少し難しいですが、上図では "aau" "aaui" "aui" の響きとなっている箇所を黄色くしています。

また、 "iau" の響きになっている箇所を四角で囲んでいます。

この部分は、ワードの物騒さとフローのフリーキーさが相まって、怪しいこの曲の中でも、一際不気味な輝きを放っています。

僕の記憶だと、昔、OMSBはTwitterで

ライムは関節だから

というようなことを言っていた気がします。

関節は骨と骨のつなぎ目の事です。つまりライムは言葉と言葉のつなぎ目ということでしょう。

関節が多い方がその部位は柔軟で多彩な動きができるようになります。例えば背骨です。同じように、ライムが多ければ多いほどそのフローは柔軟で多彩な動きができるようになるでしょう。

この4小節はまさに背骨のように多くの"関節"があるため、言葉数が多くとも、フローも"グネングネン”(語彙・・・)となめらかになっている気がします。

そして最後は、

座ってんのは肝だけにしな

というパンチラインは残しつつ、「にしな」「イチバン」そしてやや強韻気味に「Definition now」でも踏み、バースを締めます。

~まとめ~

トラックもワードも間違いなくDOPEな一曲でありますが、そのライムに置いては、ケツで踏んだり、頭で踏んだり、中で踏んだり、連続して踏んだりと、多彩な踏み方をしていました。特にVerse2の9~12小節目はこれでもかとばかりに踏んでいました。

また、発音をあいまいにすることで、完全に母音が一致していなくても韻に聞かせる工夫がされている箇所がありました。

そして、ライム=関節という説明は妙にしっくり来るところがあって、まさにこの曲に関しては、ビートのうねり具合もあってか、どれだけ関節で"グネングネン"できるか(語彙・・・)というところに主眼をおいてライム+フローを作っていったんじゃないか、などと勝手ながら思いました。


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