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リレー小説 note 3 「人間ゲーム(仮)」

それでは、3番手、RhythmことKjがお送り致します。
このお話が、皆様にとって楽しい物となります事を願っております。
                        RhythmことKj


note1 「未来ノート」空音さんの作品はこちらです。
note2 「未来ノート」鞍馬亜蓮さんの作品はこちらです。


やんごとなき、昼下がり(日本標準時)の事。
絶対神は、少しずつではあるが、仲間内での
この「遊び」に飽き始めていた。

今までも何度となく、時間が取れる時には
絶対神の元で行われる様になったこの「遊び」。

天界というある種、閉鎖的な社会とはいえ、
この「遊び」が爆発的に流行したのも今は昔。
しかし、すでに一番高い所に到達している為、
更に上を目指す事の無い神々には、
ちょうど良い「遊び」というか「エンターテイメント」なのだが。

天界の地方や、仲間ウチによっての微妙なローカルルールの違い、
更には違う所で、同時に開催された、この「遊び」同士が
干渉してしまう事も多く、地方によっては禁止に至ってしまったり、
人間同士の何千年もの争いを生み出してしまったり。
(実はパレスチナの方で実際にそうなってしまい、
未だに解消されていないのだ)

もちろん、神々によっての派閥もあるが故に、
時たま神々の派閥同士の争いのタネになってしまう事も多かったので、
「遊び」開催後にはバランスを調整する為、様々な神々が、
事後処理に追われる事も多く、近年ではこの絶対神のみが
この「遊び」を唯一、開催出来る事とした。

これから、またこの「遊び」、「人間ゲーム(仮)」が開催される。
絶対神は、すでに会場の準備を整え、参加神達の到着を待っていた。

すでに今回の「ノート」は、様々な人間の目に触れる場所に用意した。
数千の天使達が、既に下界で待機しており「ノート」を手にした人間の
行動を「神-fi」の電波を通じてストリーミング出来る様になっている。

そしてその行動は、冥界の閻魔大王より借り受けた何台もの
「浄玻璃の鏡」によって、参加の神々全てに
インタラクティブに楽しんで頂ける。
今回は全て「亀山ブランド」の物だ、と大王は言っていた。

そして先ほど、バッカスに手配しておいた様々な酒が
配送センターより届いている。
「当日お急ぎ便」にしておいて正解だった。
プライム会員ならば、年会費のみで何度でも「当日お急ぎ便」が使える。
便利な時代になった物だ、と絶対神は微笑む。
うむ、抜かりは無い。


なぜ、私のみがこの「人間ゲーム(仮)」を開催する様になったか?
かつて、私の父、クロノスのみが使用出来た「下界時間のプレビュー」
という能力。
それを私も、このゲームにおいて使用出来るからである。

人間の中には「ノート」を手にしてから、数年、
長い時は数十年も経って、初めてその「意味」を知る時がある。
それをいちいちリアルタイムで楽しんでいては、日々の激務に追われる
参加神々も仕事にならないものだからだ。
そんな時に私がプレビューをする事で、早送りした下界の様子を
すぐに楽しむ事が出来る。

中には最終戦争を翌日に控える神や、姿を変え浮気相手の所に
行かなければならない神もいる。
まあ、後者は主に私ではあるのだがねw

しかし、「ノート」を手にした人間達も、そのほとんどは
つまらない結果に終わる。
そのほとんど、約95%が「金」や「欲」絡みの記述、行動しか望まない。
そしてその場合、必ずと言っていい程、その後、激しく
後悔する様な結果になってしまう。

前回のゲームの際は、最愛の母親の病気で後悔した娘が、
最後には相応の幸せを求めて、それまでの願いを覆し、
「ノート」をリリースした。
ハッピーエンドでリリースしたのがせめてもの救いだが。

「ノート」はリリースした瞬間に消える、それがターンエンドの証だ。
ターンエンド後は、二度とその人間には「ノート」は与えられない
決まりだ。

中には非常に可愛らしく、微笑ましいものもある。
前回の別のターンには「散弾アイス」、い、いや
「三段アイスが食べられる」と「彼氏ができる」だったか。

しかし、その後のあの娘の「願い」は非常に秀逸だった。
デメテルもそんな彼女を随分と褒めちぎっていたしな。
しかし、あのままでは、ターンエンド後のあの娘に
干渉してしまうかも知れん。
早めに釘を刺しておかねばならぬ。


「強欲」な願いを「ノート」にして来た者の中でも、
確かアメリカ人だった思うのだが、年中同じタートルネックに、
デニムの眼鏡の支配狂の男。
あの男も忘れられんな。

まあ、最終的には「金」も絡んだは絡んだのだが。

「林檎は窓を支配する様になる」
正直、あの時点では「窓」からは全く「林檎」は見えなかった。

あの時は音楽の神でもあるヘルメスのアイディアを
鍛冶の神、ヘパイストスにサポートさせて「音楽プレイヤー」の
新商品を開発させてやり、それが売れてから、
ダメ押しに「携帯電話」を作らせたんだったな。
良く言えば伝令だが、ほぼパシリと言う扱いのヘルメスにしては
「携帯」というアイディアが良かったと思う。

今では携帯電話と言えば「林檎」の物か「人造人間」の物しか
見なくなった。
多分、あの「人造人間」の方は、味を占めたヘパイストスが、
他の人間に作らせた物だろうがな。

しかし、あの男はその後すぐに。
願いは叶った、がしかし、心残りな事が増えただけの
様な気がするのだがな。
旧約聖書の巨人の名を冠した企業との、争い事という心残りが。


前回までのゲームの記憶に心を奪われていた絶対神は、
すでに到着していたゲストの気配で我に返る。

「すまなかった、戦争と死を司る北の主神よ。
あなたがここに到着した事に気が付かず、失礼した」
出迎えを忘れた絶対神が、深々と頭を足れる。

「構わぬよ、絶対神よ。
「ラグナノク」が近い故、この様な姿で申し訳ない、
槍はこちらに立てかけておいても構わないだろうか?」
片目を閉じたままの、槍を持った老人の姿をした神は、
武器を持ち込んだ非礼を詫び、絶対神と向き合う。

その向こうでは8本の足を持つ、がっしりとした体格の軍馬が、
長旅の疲れなども見せず、その場に控えていた。

「槍は持ち歩いておっても構わぬよ、ただし、決して投げぬ様に」
「おぬしがその槍を投げたら、この場の全ての者の首を
すかさずにはねてしまう事だろうて」
冗談にしてはあまりにも物騒な話ではある。

彼の為にも、絶対神は配慮を欠かさない。
今回、彼が見るモニター(「浄玻璃の鏡」)には、
きちんとルーン文字による字幕が出る様に調整しているのだ。

「左様、我々神々には「ノート」の力は作用しない故、
もしそうなったとしても、取り返しはつかぬだろうて」
不気味に笑う北欧の主神、オーディン。
仮に「ノート」が神々にも使用可能なら、
まずは「フェンリル」をなんとかしたい所だw

オーディンが自前のタブレット(ルーン文字の為、ブランドは分からず)で、
Wikiサーフィンを始めた矢先、次の神が到着する。

何度もオファーをした甲斐があった。
絶対神が何度となく、このゲームに招いていた神が、
初めてこの場に現れたのだ。
しかも、女性神、である。

彼女は太陽神でありながら、実に性格が暗く、
何かあればすぐに閉じこもってしまう。
天界でも、彼女の地方の者ならばさておき、他の地方の者の前には
まず姿を現す事はない程、彼女の来訪は特別な物だった。

しかし、彼女がここに来たには訳があった。
かつて、彼女が今までで一番、強靭に引きこもった事があったのだが、
その時は、彼女の仲間達が、固く締められたドアの前で宴会を催し、
その楽しそうな雰囲気に釣られた彼女は、思わず外へ
出て来た事があったそうだ。

そう、彼女は「楽しそうな事」が非常に好きな性格なのだ。
そこに絶対神の勝算があった。
かつては天界を席巻する勢いで爆発的に流行した
「人間ゲーム(仮)」である。
彼女自身、その噂を耳にした事も何度もあったろう。

正直な話、彼女の地方でも、ローカルな
「人間ゲーム(仮)」は何度も催されていた。
しかし、大体、最後には、結果の気に入らない彼女の乱暴な弟が、
皮を剥いだ馬を投げ込むなどの常軌を逸した暴挙に出てしまい、
彼女が自室に引きこもってしまうキッカケとなってしまうのである。

「こ、こちらがゲーム会場でしょうか?」
やはり、彼女だ。
人慣れ、いや、神慣れしていないらしく、気弱な声が
更に「らしさ」を感じさせてくれる。

「ようこそお越し下さった、太陽女神よ!
こちらより失礼するが、私がこのゲームを主催する絶対神でありますぞ」
感動のあまり、仰々しい口調になってしまう絶対神。
実は、この絶対神は美しい女性には目が無いのだ。
数々の伝説を残してしまい、恐妻家の印象が強い神であるのは、
天界でも有名である。

「よかった、ほとんど高天原を出た事が無かったので」
安堵の微笑みを浮かべる彼女、だがその後、不安な表情に戻ってしまう。

「いかがなされた?」
絶対神が聞くと、彼女は沈みきった顔で、こう返した。
「まさか、スサノオは、来てはいませんよね?」
「弟が居ては、皆様にどんな乱暴狼藉を働くか、
気が気ではございませぬ故・・・」
彼女、天照大神はそう言うと、キョロキョロと辺りをうかがっている。

「ご安心を、天照殿、弟君はこの場にはおりませぬ」
あわよくば、の考えを持つ絶対神には抜かりは無い。
弟と同行させてしまっては、口説ける物も口説けまい。

安心しきれていない天照を舐め回す様に、絶対神は
一時の野望の炎を燃やす。
「神「ノート」があればな」、絶対神は苦笑を噛み殺すのに必死だった。


天界では、神の力は他の神には通じない様になっている。
しかし、その神格に大きな開きがあれば、話は別だ。
末端の神は、主神には叶わないのである。

強大な力を持つが故に、見栄や意地を張る必要がなく、
神としての器の広さ故に、神同士での争い事も起きる事はない。
(宗派による争いは人間のみが行う物だ)

中には人間出身の神も居る為、その様な成り上がりの神が
時たまに天界に問題をもたらす事があるが、知を司る神が多い事もあり、
大抵は平和的に解決するのだ。

会場には様々な神が続々と到着している。
配送の仕事を早々に切り上げた酒の神が、神Tubeでの動画を楽しむ。
競う事を好まない神の為、競う事に明け暮れる、人間の動画が、
特にスポーツの試合などの動画が好まれている様だ。

数年前までは格闘の神様の子供を名乗る
人間の格闘技選手の試合を楽しむ神が多く居たが、
近年では、海を渡った日本人の野球選手の登板する動画が好まれている。

やはり、神様も「神の子」と名乗る選手を好むものなのだよ。
マー君www


用意された鏡(モニター)が全て、それぞれの神に行き渡った頃、
絶対神が今回のゲームの開会を宣言する。

「諸君!今宵も様々な仲間が、この場に集まり、
ゲームの開幕を今か今かと待ちわびている!」
「私が今回を主催させて頂いた、絶対神ゼウスである!
どうかお見知り置き頂きたい」
神々からの歓声が上がる、すでにだいぶ
「出来上がっている」神も多く見受けられるが。

そして絶対神ゼウスは、今回の「人間ゲーム(仮)」の禁則事項を告げる。
その唯一の禁則事項は「他の人間の死をもって「ノート」の願いを
叶えない」という事だ。

その様な願いを書き込んだ瞬間「ノート」は瞬時に無効化され、
その「ノート」に出会った全ての記憶を消去し、
何も無かった事にするのである。

この事項により「デスノート」との差別化を図っている。
同じ神の手による「ノート」とはいえども、
こちらは「神」であり、あちらは「死神」による物だ。

そしてこの事項はこのゲームにおける、唯一の禁則事項なのだ。
このゲームを最初に開催した際、最初に「ノート」を使用した男により、
絶対神ゼウスの能力を使用しても、消せない人間への歴史的損失が
発生してしまった為である。

この禁則事項は、その男の名を取って「アドルフ」と呼ばれている。


参加神々による「アドルフ」の唱和の後、着席した神々の緊張が高まる。
静かに口を開く、絶対神ゼウス。
「では、栄えある最初の「ターン」を始めよう!」
「最初の方、はりきってどうぞ〜!」www

                                <了>


あとがき
この物語の行く末が、非常に楽しみになっています!
僕も一読者として、そして一作者として、この物語を楽しむ事とします!



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