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ボランティア 第3話

月2回、家事等の支援のボランティアを行っている。
もう1年になる。
訪問先は70代のお父さんと20代のお兄ちゃんの2人暮らし。奥様はずいぶんと前に他界されているらしい。
お父さんは、色々とご病気をされ
精神的にも不安定。
公的な支援や介護を受け、なんとか年金暮らしというところ。

『こんにちは』
さびついた玄関の戸を開けると、
かび臭い匂いがした。

タバコのヤニやホコリが、
氷柱のようになって絡み付く部屋に
今日も恐る恐る入る。

ここへ来ると何とかしなくては、
無性に何かが掻き立てられる。

お父さんの姿が見えないー

『お願いします』
小さな、しゃがれた声。

体調が悪くて横になっておられたが
暫くすると、フラフラしながら
寝室から出てこられた。
肌がカサついていて、死んだ魚の目になっている。

お父さん大丈夫か?
水分補給はしているのか?
心配になる。


前回、原型をとどめない茶色いトイレをともかくがむしゃらに拭いて
たまご色まで蘇らせた。

そのトイレにブルーレットおくだけを発見。しかも花柄のトイレットペーパーになっているではないか。
トイレ洗浄中の箱もある!
聞けば、お兄ちゃんが買ってきたと言う。
また、ほんの少し
この家の生活が前進したのではないか。
胸が熱くなった。


つづく