乳ハラスメント(チチハラ)

僕は電車に乗っていた。いつもは通勤時間帯に乗るから満員電車で立ちっぱなしなのだけれど、その日は少し遅い出社だったから人が少なく座ることができた。

こんなにのんびり電車に乗るのは久々だ。天気がいいなとか思う余裕もある。なんて平和だろう。

次に止まったのは少し大きい駅で、たくさん人が乗ってきた。僕の前に立ったのは、これでもかと大きな乳を、これでもかと露出した、若い女だった。

さっきまでまっすぐ前を見ていたのに、目の前にこんなに大きな乳があると、流石に真っ直ぐ乳を見るわけにもいかない。かと言って下を見るのは首が痛くなるし、上を見るのは変だろう。仕方なく斜め左を見ると、ハゲだおじさんが目に入る。なぜ僕は、大きな乳から逃れてハゲたおじさんを見てるのか。

結局寝たふりをすることにした。寝たふりをしたまま、僕は電車に揺られていた(乳だけに)。

僕も男である。”ただの”男である。だからたまには目を覚ましたふりをして、乳を見た。いや、寝たふりをしているのだから、目を覚ましたふりではないのだけれど、常に目を覚ましているのだけれど。そもそも乳が気になって寝たくても寝れない。

そうやって約1時間、僕は乳と共に電車に揺られていた。結局、平和とは程遠い、今までで最も過酷な通勤電車となった。

これは乳ハラスメント(チチハラ)である。

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