山梨に

久しぶりにNに会った。
Nは15日間の東京の仕事が終わって、私は3ヶ月に一回くる締め切りが終わって、お互いの「一段落」が重なるのは一年のうちこの時期だけだ。
もう祝って嬉しい年でもないけど、お互い誕生日が近い時期でもある。

前に会ったのはいつだったか、いつもは「たまたま」じゃないと会うことにはならない。
電話の声を聞いていると、会いたくてたまらなくなるけど、そんなことは絶対言わない。ズルズルと日常のなかにNとの関係が入ってきたら、私はあっという間に崩れてしまう。そうならないように、Nに依存しないように、心地よい関係を続けるには努力しなくてはいけない。

家族がいても、外泊するのはそんなに難しくはない。ここ数年はさらにそうなった。転職した会社はいつもはリモートワーク、繁忙期は遠いオフィスまで出勤しないといけない。泊まることもあるからだ。
夫は何も言わない。より高い給料と待遇を求めて転職したのは、夫には経済的に頼れないからだ。彼もそれをわかっているから、数ヶ月に一度泊まりがあることも、別にいいんじゃない、ごくろうさま、てかんじだろうか。

新宿で待ち合わせといわれて、そんな人目が多いところで大丈夫なのかと思ったら、車で来ると言う。買ったけど乗る機会がないのだとか。
甲州街道のあたりでNの車にのりこみ、そのまま山梨まで走った。

おつかれ。寒いね、山梨まで行きたいんだけどいい?すげーいいとこ教えてもらったんだー。
と、車にのるなりNが言った。あーこの感じ、どのくらい間があいても変わらないこの感じが、私を勘違いさせる。



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