三人称の「純粋な、完全な作者視点」をおさえる。(小説の作法)

 まず、この視点については「作者視点」といわれたり「神視点」といわれたりするので、また、ややこしいんです。
 このふたつを同じ意味で使っている人もいるし、分けて使っている人もいるので、意思の疎通がしづらい。

 更に、ホラー小説の「殺された人視点」など、登場人物といえなくもないものが「作者視点」の役割を果たしてることもあります。
 
 とりあえず、この記事では「作者視点」と呼びます。要は、登場人物の視点ではない視点です。基本は作者でしょう。

■純粋な、完全な作者視点とは。

 これは説明するのは簡単。
 登場人物がいて、作者であるあなたは、それを見て実況してると思えばいいです。
 考え方は簡単なんですが、書くのは難しいです。
 なぜなら、大きなルールがひとつ。

 感情が直接的に言えません。断言できません。

1.オレは悲しかった。→ ケンは悲しかった。(オレ視点三人称)
2.オレは悲しかった。→ ケンは悲しんでいるようだった。(作者視点三人称)

 両方とも、一人称を三人称にしているわけですが。この違い、わかりますか。
 1では、オレの感情を断定で語ってます。こんなことができるのは、オレしかいません。
 2では、こうみえます、と推測してます。これが作者の限界です。作者はケンじゃない。「悲しかった。」なんて勝手に書けません。

 友達が喋っているところを実況すると思えばわかりやすいと思います。
 あなたには、友達の感情が、リアルにわかりますか? 心の声が聞こえますか?
 そんなわけないですよね。
 ってことで、純粋なる作者視点においては、地の文で人物の思考を記すことも一切できません。

 例をもうひとつ。(これは引用じゃないです。私が適当に書いた文。)
 
 メロスは走った。こんなところで負けてはならない。メロスは怒りに燃えていた。

 純粋なる作者視点は「メロスは走った。」だけです。

「こんなところで負けてはならない、とメロスは思った。」って書きなおしても、作者視点ではありません。

 だって、思ったことなんて、口に出してくれなきゃわからないでしょう。作者に書ける筈がないんです。「~と思った。」とやったら、もう、それは作者視点じゃなくてメロス視点です。

 この場合、作者視点のままなんとかメロスの気持ちを書こうとすると、
「メロスの表情は××で、彼は、こんなところで負けてはならないという気持ちで走っているように、見えた。」
 とかなんとか。
 かくかくしかじか、こんなふうだから、作者にはこう見えます、って推測するしかないんです。

 次の、怒りに燃えていたかどうかも、メロスに聞いてみないとわかりません。
 登場人物に作者が聞くなんてありえませんので、別の登場人物に聞かせましょう。

 通りすがりの旅人が聞いたところ、メロスは怒りに燃えていると答えた。

 ……うーん。そんな「オレはいま猛烈に感動している」じゃあるまいし、そんなこと答えるなんて変ですねえ。
 せいぜい「メロスは、オレはとても腹が立っているんだ、と答えた。」程度でしょうか。なんか格好悪いなあ、これだと。

 ここも作者の推測を使いましょうか。「メロスは怒りに燃えているようだった。」などです。
 しかし、「ようだった。」っていうのはなんか、弱い。どうにも、文章としては締まらなくなってしまいます。

 このような制約によって、作者視点はなんとも、感情や思考を表しづらく、作者は苦しむことになります。
 読者としても、妙に他人事っぽい感じに読めます。感情はすべて作者の推測なので、本当にこの人物がこういう心情なのか? という疑問もついてしまい、物語に没頭しづらいです。

 っていうわけで、あまり、完全なる作者視点の小説というのはみかけません。
 
 三人称単視点で、作者視点のみで最初から最後まで物語を綴るのは難しいです。
 いや、やればできますけどね。
 だいたい、つまらない、話に入り込めないと言われてしまい、物語としては失敗します。素人が手を出さないほうがいいです。
 完全なる作者視点のみの物語、これを薦める作家さん、編集者さんは、まず、いません。

 となると、三人称をやるなら、1.三人称単視点(登場人物の誰かのオレ視点)か、2.三人称複視点で、ってことになります。

 1は、一人称のとこで語った、オレ視点を名前にしている状態です。ですから詳しくは触れません。興味のある方はそちら(https://note.mu/riasu/n/n6b2828151ecc )をどうぞ。

 2の三人称複視点っていうのがこの前の記事(概論:https://note.mu/riasu/n/n80a8e9dfcca0 )で書いた、カメラ複数台をスイッチで切り替えるって手法です。
 これが、視点のふらつきのもとになります。三人称複視点について、その難しさとは、っていうのを次回の記事で。
(その前に、関係ない話題でひとやすみするかもしれません。)

(1959字:無料 ※空白と改行は除く)

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小説の作法

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