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野良ネコに家を…2:第12話 プランター

⑫プランター

トラは朝、ドアを開けると速攻で侵入するようになった。もちろんウリも。
仕方ない、じゃここで食べていいよ。降参降参。まんまと土間を縄張りにされてしまった。
しかしこれは、トラを病院へ連れて行く布石としては好都合だった。

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夕方も、ドアを開けるとトラやウリがそろりと入ってくる。
そこで上がり框に古いバスタオルを敷いて、猫と遊ぶようになった。ただしそれより奥や他の部屋には入られないよう気を付ける。
うちは玄関のすぐ近くに階段があるので、2階への侵攻には最大限の警戒が必要だ。
そしてミケの事件を教訓に、玄関ドアは必ず少し開けたままにしておいた。

秋になり、夏場ぼうぼうに生えていた隣家の雑草がすべて枯れて、ふかふかのベッドになった。隣家はあまり人の出入りがないので、二匹はよくそこで寝ているらしかった。

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朝夕、ベランダに出て洗濯物を干したり取り入れたりするたび、トラが枯草ベッドからにゃあにゃあと呼ぶ。私が下を覗き込まないと姿は見えないはずなのに。私の匂いがするのか?
トラちゃーん、そんなところから話しかけないでー。うちの猫だと思われちゃうでしょー!
とささやきながら、トラを、ウリを、飼いたいという気持ちは確実に高まってきていた。

ある昼下がり、3階の窓から裏通りの方を見ると、最近建った家の玄関先にウリがひとりで座っているのが見えた。
おや、もしかしてあの家もウリにご飯をやっているのかな?
まあ野良ネコはご飯をくれる家を3軒くらい確保しているというし…。

昔の話だが、田舎の祖父母の家でも野良ネコを何匹か飼っていた。猫たちは窓や勝手口から自由に出たり入ったり。そして隣りの家でもご飯をもらっていて、そこでは違う名前で呼ばれていた。
そんなことを思い出しながら、私は裏通りに佇むウリを見ていた。
へえ、あんなところまで縄張りなのか…。

肌寒くなってきたある日、仕事から帰るといつものように玄関先にウリとトラがいた。しかし次の瞬間、私は思わず吹き出した。
目に飛び込んできたのは、空のプランターにちょこんと収まっているトラだった。

トラちゃん!なんて猫らしい!めちゃんこかわいい♡
猫は箱が好きだというが、野良ネコがこんな風に容れものに入っているのを初めて見た。しかも茶色いプランターだから保護色。
写真を撮りたかったが、私の姿を見ると飛び出して駆け寄ってきてしまった。(なので後日、2階の窓からこっそり撮った。)

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トラがよくプランターに入るようになり、ふと思った。
もしや…もっと大きい箱があればウリも入るのでは?
ふふふ、ちょっと試したくなってしまったではないか!
そこで玄関ドアの脇にミカン箱サイズの段ボールを置いてみた。

さあ、どうなるかな。

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