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今日のホン『傲慢と善良』

アエラドットに載っていたこの鳥飼茜さんの書評に惹かれて読む。

さすが鳥飼先生、書評の粋を超え、ひとつの短編を読んでいるようだ。
そのなかでもこの一節、

誰かこの鬱屈から外に連れ出してくれ。
そういう運命だと、誰か私に決めてくれ。それなら、全てを捨ててそこに賭けられるのに。

シクシクと、胸が締め付けられる、身に覚えがありまくるからだ。
アラサーを過ぎた女性ならだれしもが経験したことのあるであろう、名もつけ難き、この他力本願的やけっぱち感情。

しかし、いざ他力に頼ってGOしようとすると迷いやひずみが生じるのが、これ人の性である。特に、相手と向き合わず、女が男に呪いのごとき願いをかけてしまうとき。(耳が痛い。)

主人公の真実は、30歳を前に現代社会の世知辛さに気づき、翻弄されながら、それとの向き合い方をつかんでゆく。読みながらイライラした序盤の“善良”すぎた真実の性格、うちに秘めた“傲慢”さが表出すればしたで、架(もう一人の主人公で真実の婚約者)の女友達のように「あんた、うまくやったね」と、意地悪にツッコみたくなる。
じゃあ、私はどうなのか、と問うてみる。真実の言動が、わかりすぎるくらいわかるのだ、言いたいことを言えない、大事なことを相手に確認できない、多少大げさにでもことを運ばないと、真剣に考えてもらえないからという言い訳、一種の同族嫌悪というのか。きっと私だけではないはず。遠慮するくせに、性根がかまってちゃんなのだ。
嗚呼、読んでいてつらかった、ただ結末には救われた。

私も前を向いていこうっと。



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