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沖縄の色

沖縄の色と聞かれれば青い空、エメラルドグリーンの海が目に浮かぶと思う。
しかし、もうひとつ色がある。
潮風でやられた看板や薄くなって剥げた壁のペンキ、コンクリート剥き出しの団地。
「沖縄に帰ってきた感じがする。このグレーな街並みを見ると」と嫁は嬉しそうに言う。
沖縄は目の色が薄い年配の人が多い。カラーコンタクトでゾンビのコスプレかな?と思うほど薄い。紫外線が強い影響で黒目の色素が薄くなっているからだ。
潮風と紫外線が街の色を薄くして景色も人もグレーにする沖縄。
嫁はこの沖縄のグレーを気に入っている。

お義母さんが「車出すから、沖縄そば食べに行こうねー」と言って嫁と三人でお昼を食べに行くことに。
車の中で嫁が、うむむと悩んでいて「沖縄そばもいいけど家から徒歩圏内にも何件かそば屋あるし、せっかく車出してくれたから、あれが食べたい」

「ラザニア」

嫁の思い出の味、私にとって特別でなくても嫁にとって特別な料理。
嫁が子供の頃によく連れてもらってた懐かしい味。
当時の親子の食事の情景にお邪魔できるのならと、食欲より見たい欲が強くなったので「アメリカンカジュアルレストランピザハウスJr.」と書かれた
潮風に完全にやられた看板(写真一枚目)のお店へ。

食欲より情景を思い浮かべたい欲が強くなった私が注文したのがこれ。
ヤングセット(目玉焼き乗せフライドチキン、ステーキとフライドポテト、ご飯300g)
もうヤングでもないがネーミングとビジュアルに、無意識に指を指して注文していた。

嫁とお義母さんは声を揃えて言う。

「ガチマヤー(食いしん坊)」

お義母さんはミートソーススパゲティを、嫁はラザニアを注文。
その後、嫁は何かを見つけて「あ、タコス!あとタコス二個」と追加注文。流し目で我々の顔を見るので、蔑んだ細目で声をそろえて言う。

「ガチマヤー…」

アメリカのレトロな雰囲気が良い感じの店内。映画「バックトゥザフューチャー」の過去にタイムスリップしたかのようだが隣のテーブルでは沖縄のおじいとおばあがカルボナーラを食べている。

私は混乱していた。アメリカンカジュアルレストランでミートソーススパゲッティはまだわからんでもない。
カルボナーラ?タコスはメキシコ?えっとラザニアってアメリカだっけ?
まあ私が頼んだヤングセットはボリューム感はアメリカンだしフライドチキンも広東風って書いてあ「広東風!!!」

今この店で目に入る料理の中でアメリカンな物と言えば私が注文した中にあるポテトとステーキだけ…
私は心の中で「私が悪かった、ここでそんなこと気にする方がナンセンスで間違った行為だと…ごめんなさい」と思いながらポテトをフォークでおもいきり刺し添えてあるソースにつけて食べた。
「そうそう、甘くて辛いこのソースじゃないとね、気分はもうすっかり南国の国、タイだねぇってスイートチリソースやんけ!!」

これが嫁お目当てのラザニアでお店に行くまで私はランチにラザニアだけってどうなの?とイメージが湧かなかったがガーリックトーストが付いてて納得したしなんかもうこの店内では何を見てもアメリカンに見えてきていた。

お義母さんが嫁をよく連れてきて食べたラザニアの味と思い出話は
私にとってグレーではなくスパゲティとラザニアにかかったミートソースのような赤い原色の思い出になるだろう。

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