NFTゲームヒット戦略 - ヒットを一過性で終わらせない長期経済圏設計のコツ【後編】

ゲームアーキテクトの米元です。

今回は、前回の続きの、NFTゲームを一過性ではなく長期的な真のヒットにするための戦略を書いていきたいと思います。

前回の記事はこちら

前回の概要

・当たるかどうかは運要素が強いこと、今はまだゲーム設計も確立されていないので、作り込まずにまずは出すことを行う
・一方で、当たったときに一気に売上が下がるというのが、ソシャゲ時代も、今のNFTゲームでも起こっているので、長期的な経済圏設計は事前にやったほうがいい
長期的に持続する経済圏の設計は下記4ステップを実行する

  1. 定量UXポリシー設計
    全体経済圏の設計指針となる定量的なUXポリシーを設定します。

  2. 段階別UXポリシー設計
    企画段階で提供する、ユーザー体験の方針について設計します。

  3. ロジック設計
    設計したユーザー体験の実現のためのロジックや数式などの設計を行います。

  4. 初期バランス制御
    通常のゲーム開発でも行う初期のバランス設計を行います。


今回は、この4ステップについて解説していきます。


1.定量UXポリシー設計

まず、最初の定量UXポリシー設計についてです。ちなみに、UXというのはユーザー体験を英語にした、User Experienceの略です。

ここでは、全体経済圏の設計指針となる定量的なUXポリシーを設定します。

これはどういうものかというと、例えば、これくらい遊んでくれたユーザーには、これくらいのリソースを配布する、というような、収支バランスのユーザー体験を定量的=数値で具体的に設計する部分になります。

実は、通常のゲーム開発のステップと大きく異なっている点はここになります。

というのも、NFTゲームでは、最初に大枠の経済圏の設計を、定量UXポリシーの設計を通じて行います。

経済圏の大前提になるのですが、通常のF2Pをはじめとした既存のゲーム開発では、最初に企画案を詰めて積み上げていくような形式をとることが多いのですが、この経済圏設計がされていないと、そもそも企画自体の意味がなくなってしまいます。

例えば、あるカードなどを手に入れたときに、それで勝ち続けられてしまうと、特にP2Eモデルだと経済圏が成り立たなくなります。
また、トークンの発行量が多すぎると、運営の収支が厳しくなったりトークンの価値が下がり続けてしまうなど、運営に支障をきたしてしまいます。

なので、最初に全体的な経済圏について、具体的な数値と共に設計を行うことで、先にロジックや仕様の破綻を見つけることができるようになります。

逆にこの定量UXの設計をしないと、各仕様やロジックの整合性が取れないだけでなく、経済圏を破綻させるロジックや仕様、設定値に気付くことが出来ないため、ゲーム自体を台無しにしてしまうリスクが高くなります。

更に、ホワイトペーパーで最初期にトークン発行のポリシーを決める場合も多いですので、そういう事情も含めて、まずはしっかりとこの定量UX設計をすることが重要になります。

そして、もう一点、通常のゲームやF2Pモデルと異なる点があります。

それは、設計のシビアさです。

実は、通常のF2Pゲームとかでも定量UXポリシーは設定するのですが、NFTゲームでは
・かなり長期的なスパンで設計する必要がある
全ユーザー層の労力やコストに対する報酬量を綿密に設計する

ということが必須になります。

特に、P2Eモデルでは、ユーザーにどれくらいトークンをリターンをするかなどの考えが必要で、F2Pと同じような感覚でやってしまうと破綻してしまうのです。今までのF2Pゲームの常識が通用しない一番の理由は、ここの定量UX設計の部分にあります。

とはいえ、ここの重要性に気づいているところはまだ少ないのですが、本気でNFTゲームを当てに行っているところほど、ここの経済圏設計の重要性に気付いて、具体的な対策を打っている傾向が強いです。

なので、本気でNFTゲームに取り組むのであれば、一旦従来の常識を捨てるくらいの覚悟が必要です。

2.段階別UXポリシー設計


次が、段階別UXポリシー設計です。ここでは、ユーザーが段階的にどういう形でゲームを楽しみ、定着してくれるのか、という、ユーザー体験の方針について設計します。

例えば、最初は純粋にゲームでの爽快感を楽しんでもらいつつ、やがて敵に勝てなくなってくるので、レベルアップのために、経験値クエストを実施して強くなっていき、そして次は強い武器を集めて、更にハードモードのクエストでも勝てるようにして…といったような形で、ユーザー体験を段階的にどのように提供して楽しんでいってもらうか、というようなポリシーを決めます。

これが経済圏設計になぜ重要かというと、先程の定量UXポリシー設計のところで、各ユーザーの長期的な収支などの設計を行うので、計算上は収支やバランスは適切になるはずですが、とはいえユーザーとしては、ゲーム内で同じようなことをしていても飽きて離脱してしまいます。

そもそもゲームというものは、楽しさを提供できることが大きな価値であり、ゲーム自体が全体として外部への付加価値を生産しない以上は、ゲームとしての面白さを保つ必要があります。
そのため、この段階的UXポリシーの設計で、長期的に遊んでもらえるよう、段階的にユーザーが楽しい体験をしていけるように設計する必要があります。

逆を言うと、これが出来ないと、結局の所どこかでNFTゲームの運営が行き詰まります。

といっても、実際に最初から大規模なゲームの仕組みを実装をするとなると、工数もかかってしまい、「NFTゲームを当てるためにはとにかくたくさん出す」というポリシーに反してしまうので、ここは実装前の構想や設計で止めておくのがベターです。

また、定量UXポリシーと同様に、事前にホワイトペーパーなどで長期的な改修のロードマップを公表する場合は、機能自体は追加前提でも、最初の段階でこの段階別UXポリシーをしっかり詰めていく必要があります。

3.ロジック設計


ここでは、これまでに設計した、ユーザー体験を実現するためのロジックや数式などの設計を行います。

定量UXポリシーや段階別UXポリシーを作ったとしても、本当にそれを実現できるのかどうかは、このロジック設計にかかっています。そのため、こちらの長期的なロードマップに対応するロジックや数式についてもある程度設計しておく必要があります。

例えば、よくあるブリードの仕様なども、もし制限のロジックがなければ、無限に増殖できてしまうなどの状況を招きかねません。

一方で、リソースバランスのコントロールはシビアなのですが、ブロックチェーンの技術によってリソースコントロールなどのロジックの幅はより拡がったため、ロジックの設計力もNFTゲームの開発力を決める大きな一因となっています。

余談ですが、我々もここが強みの一つではあるのですが、前例がないロジックの設計を行うことも多く、業界的にもこのロジック設計の部分は、日進月歩で日々新しい試みがなされています。

こういう状況なので、前例や事例主義のチームだと、勝てるロジックを実装することは不可能になります。地味なようで重要なことですので、チームとしてこういった前例主義の方針になっていないかは十分に注意を払う必要があります。

とは言え、いきなり未知のロジックを入れてもバランス崩壊するリスクも大きいので、そういったロジックを事前にシミュレーション出来るようにすることが重要になります。

4.初期バランス設計

最後が初期バランス設計となります。

特に現段階のNFTゲームでは、数を出す前提かつ運用で機能を追加する前提ではあるのですが、初期に取り返しのつかないようなバランス設計でミスをしてしまうと、その後の追加でも取り戻せなくなってしまうということが起こってしまいます。ですので、リリース後に機能追加してもバランスが崩れないようにする必要があります。

昔のソシャゲバブルの時も、その後のアプリゲーム全盛期でも、折角立ち上げが好調だったのに、バランス設計が悪くてすぐに売上が急落してしまい、クローズ一直線になってしまったタイトルが山のようにあります。

特に、NFTゲームでは経済圏の設計を主軸にしたバランス設計が非常に重要になるため、ここのバランス設計の失敗は致命的になります。

そのため、定量UXポリシーに沿って全体バランスを加味して、更に初期リリースのタイミングでは、リソースの過剰配布にならないようにうまく制限をかけていく必要があります。

例え、各種機能の詳細な仕様や細かいバランス設計は後回しにするとしても、最初に定量UXポリシーを設定しておかないと、初期リリース時点でなんの機能をリリースするか/制限するかという取捨選択ができないため、後で取り返しのつかない部分はどこなのかが分からなくなってしまいますし、運用開始後のアップデートで機能追加するタイミングでも、同じようにどこが取り返しのつかない部分がわからなくなるので、その時その時は運良くバランス設計が成り立っていても、ずっとバランス崩壊のリスクを抱え続けることになります。

まとめ

ヒットタイトルをまぐれ当たりで終わらせないための長期的な経済圏の設計は下記の4ステップで行います

・最初に全体経済圏の設計指針となる定量UXポリシー設計を行い、いざヒットしたとき長期的に経済圏が崩れて売上が崩壊しないような指針を作る

・ユーザーがゲームを遊んでいく段階別のUXポリシーを設計し、長期的な機能追加の軸がぶれないようにする

・ユーザー体験の実現のためのロジックや数式などの設計を行い、実現不可能なUXになっていないことを担保しておく

・リリース時には機能がすべて実装できていないので、機能改修や追加ができなくなってしまわないよう、初期のバランス設計を行う

おわりに

※ここから先は、ノウハウ的なものはないので読み飛ばしていただいて大丈夫です

今回の記事では、かなり概要の説明をしましたが、通常のF2Pの設計と異なるということ、そして重要な点はお伝えできたかなと思います。

実際にやってみると、いろいろな壁にぶち当たると思いますが、是非こちらの記事を参考にしていただきつつ、まずはこの新しい開発手法に是非トライしてみて下さい!


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プレアナでは、「数値遊びの創造」で新たな価値を創造すべく、ゲームを中心としたエンタメの面白さの数値化に日々取り組んでいます。

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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000101987.html

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(記事見たよ!と言っていただけると非常に嬉しく思います!)

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