こうりん (降臨) 18

コマの霊を天に送った翌日の午後、大家さんが部屋に来た。
アマテラスの服を作るのに必要な、アマテラスを採寸するためだ。
部屋に上がってもらって、ドアに鍵をかけてから始めた。
大家さんはアマテラスのワンピースを脱がせると、ショーツ一枚の姿にして、セカンドバッグからメジャーを取り出した。
「教室で使っているメジャーの中で一番長い物を持って来ましたのよ。」
と言って伸ばしたメジャーの目盛りを見ると、5メートルまで測れる物だった。

まず身長、バスト、ウェスト、ヒップを測る。
バストは、立ったままでは測れないので、乳房をテーブルに乗せてから、乳房の膨らみ始めと、乳首の先と、乳房の膨らみの下の周囲を測った。
続いて、乳房の張り出しの周囲を、横方向と縦方向で測る。
これで、アマテラスの乳房の大きさが具体的に実寸で分かった。
数値を見ると、驚愕の数値だった。
乳首と乳首の間、立った状態で肩から乳首までの距離を測る。
首から手首までと、肩幅、背中の長さ、幅を測る。
つまり色んな所を測った。
学校の健康診断の測定を想像していた僕は、面食らった。
バストを測る時は、アマテラスがくすぐったがったので大変だった。
でも、あれだけ乳房や乳首を触られたら仕方ないか。
あと、ショーツだけの姿をスマホで撮影したけど、何度やってもアマテラスは写真に映らなかった。
「あぁ、そうか。神様ですものね。」
と大家さんは一人納得していた。

数日後、約束通り大家さんはアマテラスに服を作ってくれた。
約束では一着だったのが、二着も。
一着目は、キャミソールのワンピースで、胸元にプリーツをあしらったフェミニンな感じの服。
胸元のプリーツがバランスボール大の乳房を綺麗に包み込んでいる。
丈はアマテラスの希望を反映して、膝上の短さになっている。
二着目は、カットソーで、こちらは胸元にギャザーがあしらってある。
これも胸元のギャザーがバランスボール大の乳房を綺麗に包み込んでいる。
チュニック丈なので、そのままではショーツが見えかねないので、ボトムには膝上丈のチュールスカートを重ね穿きする。
凄い大人の雰囲気になる。
二着も、と思ったので大家さんに聞いてみた。
「ありがとうございます。でも、どうして二着なんですか?スカートまでも。」
「いえね、お約束では一着でしたけれど、作り初めると創作意欲が湧いてきまして。滅多にお目にかかれないモデルさんですので。まだ、作りかけのものが二着ありましてよ。それに、教室の生徒さん達にも好評でして、アマテラスさんのデザインコンペをやることになりましたの。」
何やら大層な話になってきた。
当のアマテラスは、興味津々な感じで大家さんの話を聞いている。
「でね、今度一度、教室に来て頂けませんこと?もちろん、このお洋服を着て、生徒さん達に見ていただきたいんですの。お宜しくて?」
宜しくて?も何も、アマテラスが行く気満々なので、次の教室がある今週末にお伺いする事にした。

今日は先日の約束通り、大家さんの所にお伺いする日だ。
にもかかわらず、僕とアマテラスはついさっきまで交わっていた。
そろそろ起きないと、と思っていたら、玄関のチャイムが鳴って大家さんの声がした。
「おはようございます。お迎えに来ました。早かったかしら。まだお休みでいらっしゃいます?」
「はーい、ちょ、ちょっと待って下さい。」
僕とアマテラスは急いで交わりを解いて服を着た。
僕は、ざっと顔だけ洗って身支度を整えた。
アマテラスは、起きた直後でも、化粧をしたように綺麗な顔をしている。
僕はTシャツにジーンズと言う、初めてにお宅に伺うには不相応な格好だった。
アマテラスは、大家さんに言われていた通り、大家さんが作ってくれたキャミソールのワンピースを着せた。
念の為、もう一着も持って行くことにした。

「おまたせしました。」
「すまぬのう、大家殿。」
僕とアマテラスは、とりあえず身支度を整えて部屋を出た。
「いえいえ、私こそ勝手にお迎えに来てしまって。朝からいてもたってもいられなかったんですの。ご迷惑でしたかしら?」
「迷惑だなんて、助かります。僕達は移動手段がバイクだけなので。」
「そうですか、良かったですわ。さぁ、お乗りになって。」
「ありがとうございます。」
僕とアマテラスは、大家さんの軽自動車で大家さんの家に向かった。
大家さんの家には、20分ほどで着いた。

閑静な住宅街で、車3台分の駐車スペースには、1台車が停まっていた。
ふーん、ボルボか。
大家さんはボルボと反対側の端に車を停めた。
駐車場から玄関までは、5分ほど芝生の上を歩いて行く。
取手のレバーを倒してドアを開ける。
「さぁ、どうぞ。」
大家さんに続いて玄関に入ると、畳三畳程の土間には、女物と思われる履物が5足きちんと並べられていた。
「先生がお戻りになられましてよ。」
家の中から声がして、続いて着物姿のぽっちゃり系の女性が出てきた。
「お帰りなさいませ。」
そう言う女性の視線はすでにアマテラスをロックオンしていた。
「佐藤さん、お留守番ご苦労さまでした。もう皆さん来られてらっしゃるんですね。」
「はい、先生が出られてからすぐに来られましたわ。皆さん、私も含めてですけど、今日の日が待ち遠しいかったのですわ。」
「うふっ、こちらが皆さんお待ちかねの方ですわ。」
大家さんは佐藤さんに言ってから僕達に続けた。
「さぁ、お上がりになって。皆さんにご紹介させて下さいな。」
僕とアマテラスはリビングと思われる部屋に案内された。
めちゃくちゃ広い。
芸能界の大御所のご自宅拝見に出ても、違和感の無い部屋だった。
高級そうなソファセット、大きな液晶テレビ、大人8人は掛けられそうなテーブル、床は一面に絨毯が敷かれていた。
掃き出しの広い窓は庭に面していて、その庭は手入れの行き届いた芝生だった。

僕とアマテラスが部屋に入ると、ソファに座っておしゃべりをしていたと思われる女性たちが、おしゃべりを止めていっせいに僕たちを見た。
そして、何度も練習したように声を揃えて言った。
「大きなおっぱい!」
誰もがアマテラスを見た第一印象を投げかけられたアマテラスは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
まぁ、こうして面と向かって言われたのは初めてだもんね。

「さぁ皆さん、お待ちかねのアマテラスさんと、彼氏さんです。」
と大家さん。
「あ、どうも。初めまして。」
「我がアマテラスじゃ。」
「では、教室の皆さんを紹介させて下さいね。」
と大家さんはテーブルを囲むように立った女性を、右回りに紹介してくれた。
「こちらの着物を着られたふくよかな方が佐藤さん。呉服屋さんですのよ。駐車場に停まっていたボルボに乗ってらっしゃるの。」
「佐藤と申します。アマテラスさんのおっぱい、和装ではどう致しましょう。今から楽しみですわ。」
「お隣のスポーティな方が樋口さん。元プロゴルファーですのよ。」
「樋口です。トーナメントに出場していないだけで、レッスンプロをしています。元プロではありませんので。」
「あら、ごめんなさい。そのお隣のチャイナドレスがお似合いの小柄な方が王さん。ご主人のお仕事の関係で遥々中国からいらしてるんですの。」
「王と言います。よろしくお願いするですね。」
「さらにそのお隣の、ドレスの胸元がはち切れそうな方が篠原さん。アイドルの追っかけをしてらっしゃるんです。ご自宅はここから近くて、いつも歩いて来られるんですの。」
「篠原です。聞きしに勝る巨乳いえ魔乳ですね。ファンクラブ会員ナンバー1番でいいですか?」
「最後のスレンダーな方が小芝さん。ドラマを見るのが趣味でいらっしゃるの。」
「小しばです。小しばのしばは、柴田の柴では無く、芝生の芝ですのでお間違え無く。」

「この方々が教室の生徒さんです。」
と大家さん。
「教室と申しましても、皆んなで和気あいあい、楽しくやってますのよ。」
と佐藤さん。
「そう、みんなそれぞれ得意分野があって、お互いに教え合いながらやってます。ちなみに私はスポーツ系が得意ですね。自分で着るウェアからフィットネス用までね。」
と樋口さん。
「得意と言えば王さんのチャイナドレス。今日もお召でいらっしゃいますけど、素敵でしょう?」
と大家さん。
「これですか?今日ははんぱつして、もっと短いを着てくるつもりでしたが、やめました。」
と王さん。
「王さん、はんぱつではなくてふんぱつ、奮発ですわ。」
と佐藤さん。
「あと、短いは着れません。そういう場合は、短い物を、と言うんです。」
と樋口さん。
「おお、そうでしたか。それは失礼仕りました。」
「王さん、たまに難しい言葉を使いますね。あなたの日本語はどうなっているんでしょう?」
と篠原さん。
「さて、皆さん、始めてもよろしくて?」
大家さんの言葉に心配になった僕は聞いた。
「始めるって何を始めるんですか?」
「何って、アマテラスさんの採寸ですわ。」
「採寸って前に測ったんじゃ・・・。」
「いえね、皆さんから、先生だけずるーい、って言われてしまいまして。でしたら、今度お呼びした時に皆さんで測りましょう、と言うことになったんですわ。」
「アマテラス、いい?」
アマテラスは展開についていけないのか、ポカンとした表情で頷いた。
「さぁ、皆さん、始めますわよ。アマテラスさん、服を脱いで下さいな。」
アマテラスは大家さんが作ってくれたキャミソールワンピースを脱いで、ショーツだけになった。
前に僕の部屋で大家さんがやったのと同じ事を、5人が順番に一通り行った。
測る人が5倍だから、単純計算で5倍時間がかかるだけのはずが、それ以上掛かった。
理由は、アマテラスの乳房を測る時に、みんなが念入りに測ったからだった。
ここにくる直前まで交わっていたから、アマテラスの乳房は破裂しそうなほどパンパンに張り詰めている。
乳房をテーブルに載せる時に弾んだり、持っても揺らしても揉んでも、綺麗な球形のままなのが、不思議なのか、楽しいのか分からないけど。

およそ2時間ほどかけて、ようやくアマテラスの採寸が終わった。
アマテラスは5人から乳房を触られ続けて、ぼーっとしていた。
「測れば測るほど、おっぱいの凄さを実感しますわね。」
と佐藤さん。
「持ち上げても全然形が崩れないなんて凄すぎるよね。」
と樋口さん。
「テーブルに載せました時、ボールみたいに弾みました。」
と王さん。
「だけど、全然っ重く無いの。ありえなーい!」
と篠原さん。
「特殊メイクでもこんなおっぱいは作れないわ。先生、キャミワンピの胸元、どうやって形を合わせたんですか?」
と小芝さん。
「うふっ、それはね。」
大家さんは一旦部屋から出ると、大きな物を転がして戻ってきた。
「これ、ですの。」
それは、アマテラスの乳房と同じ大きさの、まさしくバランスボールだった。
「これを2個、使いましたのよ。」
大家さんは、もう一つバランスボールを転がしてくると、アマテラスの横に並べて置いた。
アマテラスの乳房が四つ、またはバランスボールが四つ並んだ。
「おっぱい部分をバランスボールで、体をトルソーで、とハイブリッドで型を採りましたのよ。」
「うーん、考えましたわね。さすが私たちの先生ですわ。」
「せんせ、頭いいです。これなら何個でも買えるです。」
「これさえあれば、仮縫いのたびにアマテラスさんに御足労願う事もありませんわね。」
「ところで、アマテラスさんって呼びにくくない?ちょっと思いついたんだけど、アマちゃんで良くない?」
この小芝さんの提案で、アマテラスのニックネームは、アマちゃんに決まった。
あまちゃんってどこかで聞いたような・・・?
じぇじぇ?

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