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あの日の約束

娘が言うことを聞かず、わがままばかり言うので叱った。
最後に、ちゃんとお父さんの言うことを聞きますと言うので指切りげんまんをしたのだが事態は思いもよらぬ方向へ発展した。

例の節で娘が唄う。

ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーら、はーりせーんぼーん、ゆーびきったー。

ちょっと待たんかい。


千本もの針を一体どうするつもりなのか。
早々に指を切って肝心なところはボカす、なかなか狡猾な手法である。

飲ますのが常套手段として想定されるところだが、4歳児のやることなので針を見せるだけという可能性も大いに考えられる。しかし針千本を見せられるだけというのも結構心理面でダメージがあるのではないかと推察する。

千本もの針を実際に目の前に置かれたとしてもリアクションはとりづらい。
せいぜい、

「さ、刺すねぇ!」


と言えるかどうかだ。
「建もの探訪」の渡辺篤史ですら音を上げるレベルといっても過言ではない。

ここまでくると何で叱ったのかはもうどうでもいい。

時は折しも衆議院が解散し、総選挙が行われ、この国の今後を左右する重大な局面である。しかし、私の目下の関心は解散総選挙でも景気動向でもTPPでもなく、ましてや今夜の夕食のおかずでもない。

娘の針千本問題、この一点である。



あれから10年。
逆に娘から叱られるようになった。

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